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novel
diamante/ザンスク(第三者視点)
※こちらは「ボスとスクはイタリアーノなんだから女性一般にはナチュラルに優しいんじゃなかろうか」という妄想を大雑把に具現化したものです。直接の台詞会話等はありませんが、第三者の女性視点ですので、閲覧の際はご注意下さい。



 見事に外れた天気予報を恨みながら星空を覆い隠した曇天を見上げる。いっそ雪になってしまえばいいのにと思うほど凛冽な冬の雨は厳しい。時間を潰せそうな店はとうに閉まっていて、石畳に張り出したこの軒下だけが唯一の避難所だ。
 ふと道の向こうから黒い傘が並んで歩いてくるのが見えた。どうやら男性の二人組らしい。街灯も少ない裏路地でそうと気付けたのは、男の一人が驚く程大きな声で怒鳴っていたからだ。「お前が文句ばっか言いやがるから」とか「後始末するこっちの身にもなれぇ」とか途切れ途切れに文句を喚き散らす声が聞こえてくる。
 近付いてきた二つの傘が目の前を通り過ぎざま、不意に片方の傘が大きく揺れた。「い゛っでぇ!」と濁った凄まじい悲鳴が聞こえ、びくっと思わずこちらが竦み上がってしまう。だが揺れた傘の下から現れたのは、暗い夜道でもはっきりと分かるような、長く美しい銀髪だった。
 自分の置かれた状況も忘れつい見惚れていると、視線に気付いたのか銀髪の男が「あ゛?」とこちらを振り向いた。その視線の鋭さについ一歩後ずさってしまうと、店のシャッターが背中に当たってがしゃんと派手な音を立てる。酷く気まずい思いを味わっていると、そんな反応には慣れっこなのか、男は大して気にした風でもなく傍らのもう一人に何か声を掛けた。「ちょっと待ってろぉ」とか、そんな言葉だろうか。
 すると何を思ったか、まだ雨も止んでいないというのに銀髪の男が突然自分の傘を閉じ、雨露を払うように大きく腕を振り始めた。男の美しい銀髪が見る見るうちに雨に濡れてしまう。さらさらと手触りの良さそうだったそれが、ぽたぽたと早くも雫を垂らし始めたのを少し残念に思っていると、男がこちらに向けてぐいっと腕を伸ばしてきた。
「んなとこにいたら風邪ひくぜぇ」
 え、と思って見ると、差し出されているのはついさっきまで男が差していた傘だ。困惑して視線を彷徨わせていると、銀髪の男が突然「あ!」と大きな声を上げた。
「あんのクソボス、待ってろって言っただろうがぁ!」
 つられて見ると、もう一人の男は連れを置き去りにしてさっさと先へ行ってしまっていた。チッと音高く舌打ちすると、銀髪の男はそのクソボスとやらの背中を睨みつけたまま店の脇に傘を立てかけ、雨の中へ駆け出して行った。
 去り際にあの美しい銀髪からダイヤモンドみたいな雫が飛び散って、この光景はきっと一生忘れられないだろうと思った。


Fine.


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あきゅろす。
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