novel
露草色の灯を消せ
とある事件の首謀者がとある要人の息子だと判明したから秘密裏に消して欲しい、確かそんな話だったように思う。
こんな下らない任務でかっさばく奴の正体なんて知る必要はない。相手が腕のたつ剣士でもなければ顔さえろくに見もしなかった。
つい数分前まで人間だった肉塊の前に座り込み、スクアーロは傍らに立つ男を見上げた。
「なぁボスさんよぉ、こいつなんて名前だぁ?」
指差しているのは眼前にある死体ではない。その向こうで2枚の青色の花弁を揺らしている小さな花だ。
「んなことオレが知るか」
つまらなそうに吐き捨てられて、スクアーロはぶっと吹き出した。
「ははっ!だよなぁ!オレもしらねぇぜ!」
立ち上がりざま剣を横薙ぎにすると、小さな花弁がひらりと風におどって地面に落ちた。
「行こうぜぇ、ボス」
それを見届けることさえなく、スクアーロがザンザスに片手を上げる。オレに指図すんじゃねぇと返す声が聞こえて、また少し笑った。
命は儚いなんて、一体誰が決めた。
今この刹那に呼吸をしているなら、また次の刹那に心音が鳴ればいい。
夜が明けてまた別の花が咲く朝に、ただ一人立っている影がおまえであれば、それでいい。
Fine.
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