※3年後捏造 立ち尽くす彼の背中を俺は黙って見つめていた。 ざっと見て、五十。見渡す限りの死体、死体、死体。辺り一面血の臭いが充満していた。 その死体の山の真ん中で立ち尽くす次屋先輩の背中はあの頃と比べてずいぶん大きくなった。元々長身だったその背丈もぐんと伸び、今では学園内の誰よりも高い。三年の月日は人を変えるものだと俺はぼんやり思った。 ぽつん、何かが頬に当たる。空を見上げればどんよりとした灰色の雲から雨粒が降ってきた。ぽつぽつとそれは次第に強くなる。これは嵐になるなと俺は手にしていた刀を鞘に仕舞って、次屋先輩の名を呼ぶ。 「先輩、そろそろ戻りますよ」 ぴくりと動いた肩を合図に次屋先輩は久方ぶりに俺を見た。 「ああ」 いつものようにへらりと笑った次屋先輩の振り向いたその身体にはべったりと血が付いていた。 変わったのは身長だけではない。三年の月日は次屋先輩を人殺しにした。 「行くぞ、皆本」 俺の肩に置かれた血に濡れた手を見て俺は無性に泣きそうになった。 この人に付いた血を流し落としてくれればいいと、強くなる雨に願う。 俺の、彼の、全ての世界は変わってしまったのだ。 20100715 |