「どういうつもりですか」 胡座をかいた上ですっぽりと腕の中に収まる三之助は、苦虫を潰したかのように眉間にシワを寄せた。 「いやな、今日は滝夜叉丸が不在だからお前が迷子になっても探しに行く奴がいないんだよ」 「それで?」 「こうしていれば安心だろう?」 名案だと思ったのだが、どうやら三之助は不服のようだ。眉間のシワは更に深くなる。 「俺は迷子になんてなりません」 ふてくされたようにそっぽを向く三之助の身体は、折れてしまうのではないかと思うくらい細かった。三年の中では一番身長も高く、どこか大人びているその性格で普段はよくわからなかったが、こうしてみるとやはりまだ幼さが残るものだなあと思った。 「ちょっと聞いてますか?」 そろそろ不機嫌になってきた三之助を尻目に私はギュウと強い力でその細い身体を抱き締めた。 「ちょ、苦しいっす!」 そしてスッと身体を離せば、三之助はげほげほと咳き込んだ。相当苦しかったのか、肩が少し上下している。今度は、その薄い肩を両手で優しく抱き寄せた。 「よし、寝るか!」 「はあ?」 「これだったら三之助は何処にも行かないし、寝る子は育つと言うしな!」 「委員会はどうするんすか」 「今日はなし!特にやることもないから」 そうカラカラと笑って言えば、三之助はあからさまに溜め息を吐く。しかし次には呆れたように笑って私の肩に頭を預けた。大して重さを感じないその軽い頭に手を置いて、私もそっと瞼を閉じた。 腕から伝わる体温に、私はまた小さく笑った。 (子供体温だなあ) 20100709 |