※現パロ ガチャリ、玄関のドアを開けると生温い空気が肌を撫でた。薄暗い室内。カーテンの隙間から射し込む光だけを頼りに私は足を進めた。学生の一人暮らしにしては広い2LDKの部屋。リビングに辿り着くと、ソファの前にうずくまる黒い物体が微かに身動いだのが確認できた。その黒い物体に私は声を掛ける。 「ただいま、次屋」 シャッとカーテンを開ければ、次屋は眩しそうに目を細めた。 「…おかえり」 「カーテンくらい開けたらどうだ」 派手な金髪の前髪から覗く瞳が私を捕らえる。次屋は少し伸びたその前髪を邪魔そうに手で払った。 「面倒くさい」 そう言う次屋のやけに白い肌を見て私は眉を寄せる。 「陽に当たらないからそんなに白いんだよ。身体に悪いぞ」 そうかなあと気だるげに返事をして次屋は自分の腕を見た。身長はあるけれどひょろりと細身のその身体は、私の服を着ているせいか更に細く見える。 「たまには外に出ろ」 「いいよ、別に」 見上げられる瞳。長い睫毛に縁取られたその瞳は真っ直ぐに私を見る。 「アンタがいればそれでいい」 少しの沈黙の後、私はゆっくりとカーテンを閉めた。再び訪れる暗闇に次屋の声だけが響く。 「なにも要らない」 「アンタ以外は要らないんだ」 私は口元を歪ませ、そっと微笑んだ。 20110124 |