終幕(くくタカ)



※死ネタ
※タカ丸不在



まぶたが重い。視界はぼやけて、まつげがゆっくりと上下するのが目に見えた。その重力にあらがうように必死にまぶたを持ち上げる。見えたのは美しい青空だった。高くて広い空。水のように澄んでいて、ずっと昔に見た海よりも大きく広がっている。

俺は十分生きた。悲しい時代に生まれたけれど、その時代を精一杯駆け抜けてきた。悔いはない。やり残したこともない。生にしがみつく必要はもうないのだ。ああ、そうだ。ひとつ言わせてもらえば、最後にお前の顔くらいは見たかった。お前が俺の名前を呼ぶ声が聞きたかった。平凡な俺の名前でもお前が呼ぶと何故だか特別な気がしたんだ。でもまあ、お前はきっと泣くだろうから、これでいい。いつの日か、俺を想ってひとつぶの涙を流してくれればいい。それだけでいいんだ。

美しい青空の端っこで、眩しいくらいの金色が見えた気がした。

俺はゆっくりとまぶたをおろした。







20110105
新年一発目すいません


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