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02.

side A



その日は強い雨の日だった。
仕事の報告を終え帰宅している途中、あの坊やから連絡が入っていることに気が付き、人気のないところで車を止める。
外に出て、自分の懐から煙草を一本取り出し、一服したところで再度坊やに電話をかけ直した。
江戸川コナン、もとい高校生探偵工藤新一。
彼の頭脳と行動力には自分も何度も助けられている。
こうやって姿を隠して奴等、黒の組織を追う事ができるのも、彼と彼の家族の協力あってのことだ。
こうやってお互い情報交換をすることもある。




"赤井さん、仕事中だった?"
「ああ。すまないな、電話に気付くことができなかった」
"いや。そうだと思ってたし、急を要することでもなかったから。ただ一応入った情報を伝えとこうと思って"



そのまま坊やの会話に耳を傾けている時、ふと誰かの視線を感じ、視線を移した。
すると、そこにはこの雨の中傘もさすことなく、身体中傷だらけになって俺の方を見ている女の姿があった。
見たところ20代前半くらいの年齢だろうか。見覚えのない顔だが、俺と視線があった途端、顔を真っ青にして震えるように逃げていく。



まるで敵に追われている身のようだ。




「……まさか、」




何かが頭の中でひっかかる。この真夜中雨の中、一人で傷を負うあの女の姿。俺の姿を見て震えあがる姿。もし、彼女が黒の組織の関係者であったのなら……。
すぐさま俺は車の中へ入り、エンジンをかける。その音に電話越しの坊やも気付いたようだ。




"赤井さん?何かあったのか?"
「少し、気になることがな」
"組織の奴等?"
「いや、そうと決まってはいないが……。なんとなく、だ」
"もしかしたら、……"
「、どうした」
"いや……。また分かったら教えて。少し気になることがあるんだ"
「ああ」




それだけ言って俺は坊やとの電話を切った。車を動かし、すぐさま彼女の走り去っていった方向へ移動する。
この雨の中だ。人の姿は少ない。それらしき影を見つけたらすぐにみつけられるだろう。
そう思って走らせて10分程度した頃、道端で倒れこむ彼女の姿を発見した。
俺はすぐさま車から降り、彼女のそばへ駆け寄る。




「っ、おい!!しっかりしろ!!」
「っ、」




全身がひんやりとしている。長い時間雨にうたれていたのだろう。それに、傷の跡からして、何度も拳銃に撃たれて掠ったような形跡もある。
やはり、彼女は何者かに狙われている。
そう確信した時、彼女のポケットから何かが落ちたのを確認し、俺はその小さな箱のようなものを手にとった。
その中を見てみると、見覚えのあるあのカプセルと、そして俺のよく知る人物の字に似た短い手紙が入っていた。
思わず目を見開く。




「……彼女は一体、」




今も眠り続ける彼女をそっと抱え、車の中に乗せる。
そのまま自宅へと車を走らせた。
先ほどまで連絡していたあの坊やへと連絡しながら。




彼女の存在が、何かを掴むきっかけになる。そう確信して。




(苦い香りがした、)

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あきゅろす。
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