[携帯モード] [URL送信]
00.



"ごめんね、理名。
私がここにくるのは、今日が最後かもしれないの"



ある日、突然暗い表情でそう口を開く彼女。
いつものように私に会いに来てくれたと嬉しかったはずなのに、その言葉がとても悲しくて、思わず開いた口を閉じることができなかった。




"私ね。今から大きなことをしに行くの。それは、私にとって大切なことなの"
"……お仕事?"
"ええ"



彼女のその表情で、私はなんとなく悟った。
本当にもう彼女に会えないのだと。
小さく俯く私に、彼女は優しく微笑み、私の手を両手で包み込むように掴んだ。




"理名、絶対に生きることをやめないで"
"……生きること?"
"私、貴方に生きていてほしい。どんな形でもいい。貴方はすごく優しい子なんだから。いつか外の世界で楽しいことや幸せなことを知って思いっきり笑ってほしいの"



すっと離された私の手。その中には何かが入っているのであろう小さな箱が渡されていた。私はそれをじっと見つめて、また彼女を見上げる。
彼女はもう既に立ち上がり、その場を去ろうとしていた。




"私の言葉、忘れないで"
"……まって"




その先の言葉を待たずに、彼女はゆっくりと部屋の扉を開き、そのまま去っていく。
重く閉められた扉の先を見つめる私。




あの時に感じた寂しさを、今でも忘れることはできない。








私と、彼女が最後にあった日だった。





(白く染まる、)


[次へ#]

あきゅろす。
無料HPエムペ!