[携帯モード] [URL送信]

novel
誰も知らない2



唇があと僅かで触れる距離まで来ても

政宗の左目は佐助を鋭く射抜いていた






「こういう時は目を瞑るでしょ、普通。」





「瞑った瞬間に殺されるのは御免だ」








―あんたは俺があんたを殺す機会を伺ってるとでも?






「心外だね」







そう言って離れようとした時



不意に腕を引かれて
逆に押し倒される形になった




「忍失格だな」





自分の上で唇を歪ませて笑う政宗に腹が立つ






「うるさいよ」






胸倉を掴んで無理矢理唇を寄せる





「あんたも隙だらけだ。」







佐助も唇を歪ませて笑い

すぐさま政宗の下をすり抜けた








「今回は引き分けって事で」







そのまま佐助はまた夜の闇へと走り去った





また佐助が来る前の静かな夜に戻る






残された政宗は
苛立つ様子もなく



再び縁側で酒を口に含んだ





―今日は良い月夜だ―





先程の一時を思い返し


政宗は笑った












(月夜の逢瀬は

甘いものじゃない




もっと

あっさりしていて

けどドロドロしていて




ゾクゾクする一時)







END



[*前へ][次へ#]
[戻る]


あきゅろす。
無料HPエムペ!