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死を視つめる娘
サルビア
シスルが学校に復帰して早1ヶ月が経った。

結局、シリウス・ブラックにちゃんとした礼を言えていない。

原因は勇気を出せない私が悪いのだけれども、自分の囲いが増えたことだ、
お父様の部下の子が私を混血さえも近寄らないようにしている。

グリフィンドールとの合同授業となると凄い、私を文字通り囲い、
グリフィンドール生と組むことを避けさせている。

初老の占い学の先生は目を丸くしている、半ば呆れているのだろう。

(そんなことしなくても私は...)

グリフィンドール生は和気藹々と占いをしている中、1人ポツンとしている子が。

占い学の先生がそれを見かねたのか、先生自身がそのグリフィンドール生とペアになった。

授業が終わり、近くに居た1人のスリザリン生のカロー兄妹の妹のほうに聞いた。

『アレクト、今日の占い学の授業で1人で居た生徒の名前は知っている?』

「ああ...クラウチ"ジュニア"ですよ!」

バーテミウス・クラウチ、"シニア"のほうはよく知っている。

魔法法執行部の部長で、闇祓いに許されざる呪文の使用許可をつい最近許可したという人物で、
お父様の御意志と反する人たちは強く支持しているとかいう。

その息子、グリフィンドール生だったのか。

(正直思うとスリザリン寄り、よね。)

ジュニアは占い学の際酷く暗く、消えそうなか細い声だった。
スリザリンかレイブンクローに居そうな雰囲気そのものだ。

組み分け帽子は狂ってないはず、ただ花は咲いてはいないだけ。
それとも、親にグリフィンドールに入れと強いられ必死に頼み込んだのか...?


『アレクト、私そのクラウチジュニアとお話がしたいの。いいわね?』

「!!シスル様!グリフィンドールの奴など!」

『クラウチ家は純血よ。』

「あいつの親は!!」

必死の顔で止めるアレクトは声でしか止められない、
"体に触れること"はシスルの父ヴォルデモートから父親から禁じられている。

『カエルの子はカエルなのか確かめに行くだけよ、ごめんなさいね。』

通った声で上品な声色でそう言われ、アレクトは口を閉じた。


バーテミウス・クラウチは非常に暗い性格だ、
顔は美しいのだがいつも俯いている為台無しだ。

魔法学は全般優秀、褒めてくれるものはいない。

"流石父親が"

からで始まる褒め言葉、しかも自分という名前がない。

父と同じ名前、それが彼の重い鎖の1つ。

プレッシャーで声さえも出にくくなり、
幸いにも呪文のような短い言葉は上手く発することは出来るのだが、
日常生活での続く会話は出来ない。

同じグリフィンドール生と、ハッフルパフ生は自分を気遣ってなのか彼を避け。
レイブンクロー生は成績優秀な彼を妬み。
スリザリン生は親と自分を同一視し、彼を罵倒する。

──真正面に誰かがいる。
避けきれずに"一瞬の痛み"が起こった。

「ご...めん...なさい」

『いえ、いいの。突然現れた私が悪いの。

クラウチさんね。』

柔らかな表情をした、シスル・ゴーント。

父が"闇の帝王"の娘である彼女の入学を強く反対し、
結果ダンブルドアは彼女の入学を許可した。


闇の帝王の娘だから、横暴で残虐だろうと思っていたのだが、とても落ち着いた人だ。


「そ、...そ...うですけど...。」

『筆談の方がいいかしら?』

シスルは「時間が経てば自動的に文字が消える羊皮紙」と羽ペンを差し出した。

クラウチはコクコクと頷き、柱の平らなところで書くことにした。

『直球に聞くわね、あなたは自分のお父様のことは好き?』

「...」"好き"

クラウチは勝手に書いていた、この質問は母にもされた。
父を愛す母の悲しむ顔が見たくなくて重圧をかける父を好きだということにした。

『そう...。
じゃあどうして、そんな顔で書いたの?』

クラウチの目から涙が溢れていた、悲しいときの辛いときの涙だ。
シスルは魔法ではなくハンカチで、涙を拭う。

母にでさえ涙を拭われたことすらなかった、拭いてきなさいと言われるか魔法で拭われた。

『はい。無理をしているのね。』

シスルはハンカチをクラウチの手に握らせて、ニッコリ微笑む。

『申し遅れたわ、私はシスル・ゴーント。』

優しさと親のような愛を求めた、
バーテミウス・クラウチは、あっという間に心を解かされていった、

ああ──...。
父親が警戒していた通りの方だ。


シスルの紫の眼は爛々と輝く。

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