long部屋
I find a difference6:松小
「なっ!?お前っっ」
今・・・今、確かに“右目”と呼んだ。それは、前世での二つ名。
何故その名を知っている?
・・・答えなど一つしかない。
「なにをそんなに驚いた顔をするのかね?」
面白そうに口元を上げる姿は、昔とそっくりで。
「私が今まで“前世の記憶はない”と言ったことがあったかな?」
「何で・・・だまっていやがった」
「そうでもしなければ、卿は私に近づきもしなかっただろうと思ってね」
「全部、仕組んだのだ。初めから最後まで・・・な」
電車の中で偶然見つけた。
眠っていたようだから書類を奪って、会社名を調べた。まさか交番に来るとは思っていなかったが。
そして、あの大企業の秘書だと知る。今でも独眼竜に仕えているのだと。
警察にちょっと細工して、住所を調べた。
隣の部屋がちょうど開いてるのを知り、引っ越した。
「すべては卿を自分のものにするため」
小十郎は唖然としていた。
ソファに押し倒された体が震えたのを感じる。
きっと・・・もう笑顔を向けてはくれない。楽しそうにしゃべることはできないな・・・
いろんな表情を見た。前世では見たこともないような表情を。
このまま、一緒に過ごしていれば、もしかしたら・・・
ふと、そんな考えが浮かんだが、フッと微笑する。
自分のものに出来るのなら、そんなもの
「馬鹿じゃねぇの」
失望に、怒りに変わると思っていた瞳は凛として自分を見つめている。
驚いて、思わず押し付けていた手を緩めてしまう。
小十郎はそのまま呆れたように言葉を連ねた。
「不器用で、自分勝手で、哀れな奴・・・そんな・・・そんなお前を好きになってた・・・いや、好きだった」
なぁ、お前は単に欲しいだけなんだろ?
でも不器用だから奪うことしか知らないから・・・
前世で俺にちょっかいかけてきたのも、お前の不器用な甘え方だったんだろ?
・・・なんて全部俺の想像だ。
あぁ、知らないよ、お前の事はなんにも知らない。
でも、
「手を放しても大丈夫さ、俺は逃げやしない」
俺が欲しいのなら
「私は卿を自分のものにできたのかね?」
「あぁ」
俺の全部をお前にやるよ。
驚いた顔は新鮮だ。
堕ちてしまったんだからしょうがない。
下へと落ちていた手を松永の背中に回す。
すると、さきほどよりも目を見開き驚いた。
それが面白くてクスクスと笑えば、ムッ、と顔をしかめる。
「しかもお前まさかこの日に・・・」
「今日が何だ?」
「覚えてねぇのかよ、今日は・・ お前の命日だろ? 」
「そんなもの一々覚えるのも億劫だ」
「まぁ、確かに自分の命日って言われてもピンとはこねぇけどな」
「それは今日いつもより早く帰ってきたことと、あまりにも似合わないものを買ってきたことと関係あるのかね?」
「あまりにも似合わないは余計だ」
キスをするんではないかと思うほど顔が近い。
お互いに、このなんとも言えない雰囲気に不思議さと暖かさを感じていた。
「違うんだ・・・」
「何がだ」
「あの時とは・・・もう・・・」
爆発の炎が空を真っ赤に染める。
いつも高見の見物ばかりしていたコイツが自分の手の中で弱っていくのはまるで現実ではないような気がして・・・
『一度でも・・・卿の笑顔が見たかった、かな』
笑い飛ばしてやればいいのに、
自分でとどめを刺さなければいけない立場なのに、
俺は涙を流すことしかできなかった。
__________
「毎年来ているのかね?」
「あぁ」
小十郎の答えに松永は目を細めるだけだった。
「まぁ、今年で最後だけどな」
「当たり前だ、というより今年も行こうとしていたのが不思議だが」
「断れなかったんだよ」
今は荒れ地になっているそこはかつて二人が現世と浮世に別れた場所。
「今更謝りなんてしねぇぞ、ってか、お前が謝れストーカー」
「何故かね、私は自分のしたいことをしたまでだが」
全く悪びれる様子のない松永に小十郎はため息をつく。
「はぁ、お前のそれは一生治りそうもねぇな」
「治す気もないがな」
そう言い、そのまま手を小十郎の腰にまわし口づける。
「んぅ・・・、はっ」
長い口づけの後、、そのまま耳元で囁いた。
「愛してる」
カッと真っ赤になる小十郎。
それを見て松永は満足そうに笑った。
幸せそうな二人を見ているのは
淡く綺麗な花束だけ
かつて結ばれる事は許されなかった
二人の現世の結末に
祝福するようにふわりと揺れた
end
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終わった!!
よし、1月中に完成できて良かったぁ(ホッ
最終的に幸せな二人がかけて良かったです^^
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