long部屋
I find a difference:松小
・現パロです
その日、小十郎は焦っていた。
(クソッ、あれは大事な資料だってのに!!)
大手企業で秘書をやっている小十郎。外見はパッと見、一般人ではないのかと思わせる傷があるが、立派な一般人だ。
(あの駅までは持っていたのに・・・バスに置き忘れたか?)
明日は大事な会議だというのに、企画書をなくしてしまい、今、血眼になって探しているのだ。
(・・・しょうがねぇよなぁ)
目の前にあるのは、交番。落し物は、たいていここに届けられるはずだ。
だが、小十郎は警察官が苦手だった。
自分の風貌で、そっちの人かとよく怪しまれるからだ。
だが、そんな私情をはさんでいる暇はない。
「すいません、茶色い封筒が届けられていませんか?落したんですけど・・・」
なるべく早く出ようと、誰もいない室内に向かって要件をさっさと言う。
「あぁ、これの事かね?」
奥の扉から人が出てきた。
その手の封筒には間違いなく自社の名前が載っている。
「それです!!!」
安堵が全身を包み、ホッと息をつく。
封筒を受け取り、礼を言おうと顔を上げ・・・
そのまま固まった。
「ま・・・つ、なが」
小十郎には前世の記憶がある。今まで前の時代に出会った奴を現世で見ることもあったが、同じように記憶があった。
松永とは殺しあった仲だ。というより、俺はコイツが一番嫌いだった。でも・・・
「どこかで会ったかね?何故名前を?」
どうやら松永に記憶はないらしく、不思議そうに聞いてくる。
「い、いや・・・名札、が」
「あぁ」
苦しいいいわけだったが、なんとかごまかす。
「良かったな、見つかって」
「本当にな、ありがとう」
なんとも不思議だった。
あの松永が警察官というのも不思議だが、ふわりと笑いかけてくるのだ。
思わぬギャップにドキンと胸が跳ねる。
「お、俺をあっちの人だと疑わないのか?」
思わず質問してしまった。
前世の記憶があるなら分かるが、ほぼ100パーセントと言っていいくらいに間違われるのだ。今のコイツが俺を疑わないのが不思議だった。
「こんな可愛いらしいヤクザがいるのかね?」
やっぱり頭は変わってないらしい。
俺を可愛いなどと言ってくる奴は、前世でもコイツくらいだった。
「さて、他に何か用でも?」
「い、いや、すまねぇな」
もう、会うこともないだろう。
そう思いながら交番を出る。
カラスが小さく鳴いた。
(貴殿が気に入ったよ)
(なんとも嬉しくない報告だな)
(無くなるまで愛でたいものだ)
(気色悪いことぬかすな)
少しだけ懐かしく思った自分がいた。
_____________________
はい、始めてしまいました。現パロです。
長編は本当に頭使うから苦手なんですが、どうしても長編になりそうな予感がします。
せめて中編くらいで終わってくれればありがたい。
[次へ#]
無料HPエムペ!