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笑うかのこ様〜恋だの愛だの
君からログイン願います(椿→→←かのこ)

基本的に苗床かのこという奴は、こちらから話しかけない限りほとんど自分からアクションを起こさない。

かつて傍観者であることに異様に固執していた彼女は、高校生になって以前よりも格段にコミュニケーション能力が向上した。しかしそれでも長年培ってきた基本スタンスを崩すことはない。
相変わらず中学時代から付き合いのある自分に対してですら、未だに相談の一つも自らは持ちかけて来ないのだ。

「やっぱ馬鹿だろ」

そう言って冷やかな視線で見降ろすと、苗床はばつの悪そうな顔をしてそっぽを向いた。

「……誰も助けて欲しいなんて言ってない」

ぽつりと洩れた言葉は憎たらしいものだったが、小さく震える肩を見たら、もはや怒る気にもなれない。
大体、女一人でかつあげ犯を追いかけるってどうなんだ?
それで、相手を追い詰めて、どうにかできる気だったのだろうか?

体当たりの態勢をとった犯人にあと一歩追いつけなかったら、苗床は間違いなく怪我をしていた。
後先考える奴じゃないと分かっていても、こういう事態には流石に肝が冷える。

「……っとに、わかってんのか?怪我じゃ済まないことだってあるんだぞ」
「そんくらい分かってるよ。……ありがとう。それにしても、毎度のことながらほんといいタイミングで来てくれるよね、椿君は」

いつもの切り返しを軽い口調で返してニシシと笑うかのこに思わずがっくり項垂れてしまう。
意固地で負けず嫌いで、挙句の果てには天邪鬼。
頭の回転は速いくせに、「いいタイミング」の意味には気づけない鈍感女。
いつもぎりぎりの所でやっと間に合わせてるってことを、少しも分かってない。
それでいて次から次へと問題を抱えてくれば、いい加減腹も立つ。
そんなことを思っているくせに、それでも離れる気にはなれないのだ。

「まぁ、今回は私が軽率すぎたよ。次は気をつけるからさ」

先ほどまで震えていたのが嘘のように勝気に笑う苗床に、苛立ちが募る。
全っ然分かってねーじゃねぇか!!
背を向けて歩き出した苗床の腕を掴み、強引に引き寄せると、小さな身体はすっぽりと腕の中に収まる。
突然の行動に固まっていた苗床は、状況を認識するや否や腕の中で暴れ始めたが、それを制するように更にきつく抱きしめた。
だから無防備だってんだよ。

「ちょっ、な、な、何っ!?何して」
「苗床」
「へぁっ?」
「何度でも言うけどさ、お前はもっと人に頼れ。……お前が思ってる以上にお前の周りにいる奴はお前のことが好きなんだよ。人の心配はするくせに心配されたくないとか、ふざけんな」

何度言っても、コイツは変わらないかもしれない。
それでも、もし自分が知らない所で彼女が傷つくことを思えば、言わずにはいられなかった。

「たまには先に、お前の口から聞きたいんだよ」

耳元で囁くように言ってやると、小さな肩はピクリと震えた。
コイツ、耳弱いのか?

「ッッ〜〜だから何をっ!!」

離せと喚いて再び暴れだした苗床を、今度はあっさりと開放してしてやる。
これ以上あの体勢でいるのは正直自分がヤバイからだ。
まぁ、これだけのことをすれば今日言われたことは記憶に残るだろう。

「椿君っ?だから分かんないってば!」

真っ赤になって耳を抑える苗床に笑いながら、答えは言わずにゆっくりと歩き出した。

「……好きだから、迷惑かけたくないって思うんじゃんか」

呆然と立ち尽くすかのこの呟きは夕方の風にさらわれて、その背に届くことはなかった。


―君からログイン願います―


END


あとがき
文才ないにゃあー。
いっつも終りが崩れ落ちてゆくよー。
椿はセクハラしすぎだよー。
思春期万歳!!



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あきゅろす。
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