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笑うかのこ様〜恋だの愛だの
お前のためじゃない

「……椿君、別にそこまでしてくれなくてもいいよ?」

苗床の身長じゃどう考えてもそこに辿りつくのも厳しいようなプランを聞いて代わりを申し出ると、苗床は不思議そうな顔できょとんと見上げてくる。

「何言ってんだ。あそこに行くにはこの木を登るしか方法ねーじゃん。どう考えてもお前には無理だろうが」
「や、頑張ればどうにかなるって―」
「ばっかじゃねーの?そんなんで大怪我して、実家に連れ戻されたらどうすんだよ」
「う゛……それは、でも、そしたら椿君だってそうじゃん!!椿君が怪我したらどうすんの?私のために危ないことしないで!とかいかにもなセリフも飛び出すっての!」

ああ言えばこう言う。
こんな時くらい素直に人に頼ればいいのに、未だに苗床は本当にギリギリまで人に頼ることをしない。
苗床が俺の心配をするのと同じように、俺だって苗床が心配なのだということをこれっぽっちも考えていない。
これ以上自分に構うなオーラを全身に漂わせながらフーッと猫のように威嚇する苗床の額にかなり強めのデコピンをかましてやった。

「いっったぁーーー!!」
「お前のためにやるんじゃねーよバーカ。自分のためだ。黙ってそこで見とけ」

大げさに額を手でこする苗床の手からボイスレコーダーをぶんどって「あっ」と声を上げる苗床を無視して手ごろな枝にひょいと手をかけた。

今頃は「生徒会の会議を盗聴して椿君が得することってなんだろう?」なんて見当違いのことを考えているだろう苗床の、不安と心配と疑念の入り混じった微妙な表情を見降ろして、俺は小さくため息をついてカチリとレコーダーのスイッチをスライドさせるのであった。

お前を助けるのは、別にお前のためなんかじゃない。
好きな女に危ないことさせて喜ぶ男なんていねーだろ?
それに、苗床はここで生活するための制限がたくさんある。
今更離れるなんて俺には無理だから。
だから、これは俺の我儘なんだ。苗床と一緒にいるための。

まぁ、お前は相変わらず何も分かってねーみてぇだけどな……。


END

あとがき
苗床&椿の生徒会室盗聴大作戦。
11/04




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あきゅろす。
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