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名を馳せる

「そう言えばマルコって鳥人間、不死鳥なんだよな?」
「そうだよい。そう言う名前は馬鹿なんだよな?」
「ストレートは止めないさい、ストレートは」


結構グサッときたよ。俺の硝子のハートにグサッときたよ。


「夜中気をつけろよ。お前の少ない髪の毛根こそ、ぎゃん!」
「鳥目だって心配してくれんのかい?そりゃあ嬉しいねい」
「や、止めろ!髪の毛引っ張んな!この若さでハゲたくねェ!」


なんなのコイツ!仲間になってからってさらに遠慮なくなったぞ!?
っていうかまだ背中が痛ェんだから大声を出さすな!


「関係ねェよい」
「鬼畜だなこのクソ鳥!」
「ほォ…まだ言うか」
「痛い痛い!」
「気持ちいいの間違いだろい?」
「マゾじゃねェし!」
「何じゃれてんだ?」


タイミングよくエースがやって来てくれた。
首を捻るエースに助けを求めると、マルコが手を離す。
俺の頭大丈夫かな…。ハゲてねェかな…。


「おい名前、トランクス見せんな」
「見せてねェし見せる気もねェよ!」


暴れたせいで乱れた着流しから、トランクスがチラリズム。
マルコが胸糞悪そうな顔してたから急いで隠し、離れる。
もう俺ほんっとマルコ嫌い。つーか苦手。


「つーかその服着るの止めろい。色んなとこから見たくねェもんが見える」
「そういう服なんだよ…!楽だしスカスカして涼しいし気に入ってるし、何よりお前に注意されたからやなこった!」
「服もお前の頭もスカスカって意味かい?同族意識ってやつか。微笑ましいこったい」
「エースウウウ!鳥が俺を虐める!」
「ハハッ、お前ら仲いいよな!」
「どこ見て言ってんの!?」


俺確実に虐められてんじゃん!


「あ、そうだ。面白いもん見せてやるよ」
「それなら間に合ってるよい」
「俺の顔を見るな、俺の顔を!」


そろそろ本気で泣いていい?イジメ、ダメ、ゼッタイ!


「名前の首に懸賞金かかったんだぜ!」
「この間のあれでかい?」
「そうそう。ほら、その手配書」


まるで自分のことかのように、嬉しそうに手配書を見せてくるエース。
覚悟してたけど、やっぱこうなったか…。
……つーかこの写真…。


「普段のアホ面とは到底似付かねェ顔してるな」
「マルコさん、ほんと勘弁して下さい。俺のライフが赤く点滅してるっす」
「あのときに撮られたんだろうな」


きっとアイツだ。唯一殺さなかったあの男。
手配書には血で顔も汚し、刀を担いでいる俺が写っていた。
瞳孔も開き、血を浴びているってのに若干笑ってやがる。
俺…こんなひでェ顔してたんだ。こんなの普段の俺じゃねェよ。
まさに悪魔。あんなに人殺したのに最低だな。


「新聞にも載ってたんだぜ!」


白ひげ海賊団に新人参入!
風人間となる“ピュウピュウの実”の能力者である新人は、海上に一陣の風を巻き起こした。
刀を使い、ワノ国の者に似た風貌の男は、血で自身を汚しながらも暴れ続け、軍艦を二十隻も崩壊し、乗っていた海兵を皆殺したという。
生まれも育ちも謎が多いその男は――――


「“風来坊の名前”か。まんまだな」
「変な通り名をつけられるよりマシだが嬉しくはねェな。つーかコイツら仕事はやすぎ」
「で、懸賞金は六千万かい」
「あんだけ暴れたのに低くないか?」
「いやいや、俺まだ強くねェし十分だろ。高い懸賞金かけられて狙われてもイヤだしこれでいいや」
「もっと上がるよう交渉してきてやろうかい?」
「止めろパイナップル!」
「よし、いってくらァ」
「止めて下さいマルコさん!」


俺は別に名をあげたいわけじゃない。
それに名をあげるとしたら、オヤジの名をあげてやりたい。


「じゃあ死なないように強くなんなきゃな!それに、名があがるとオヤジも喜ぶぞ!」
「んー…いや、うん…、そうじゃなくてさ…うーん…」
「ともかく今日もやるぞ。そろそろ太刀筋いれてくれよい、風来坊の名前さん」
「上等だ!今日こそそのパイナップルか人間かわかんねェ首ぶっ飛ばしてやる!」


その十分後には甲板に死んだように寝転ぶ俺だった。

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