「ふわああ…」 次の島まで。の条件で、白ひげ海賊団の船で何日か羽を休めていた。 新人ともあって、色んな奴が馴れ馴れしく話しかけてくるが、正直そういったのも面倒。てか仲間になったつもりねェのにな。 適当に返事して、適当に会話して、人がいないとこで大好きな昼寝をする。 海賊ってのも結構暇なんだな…。 敵船がこなければ戦うことはなく。 嵐が来なければ慌てることなく。 ただその日をのんびり過ごしている。 まァ…こういった生活は嫌いじゃない。 だからと言ってアイツの息子になろうなんて思いはしないが。 「おーい、名前ー」 「うるせェのが来た…」 特にしつこく話かけてくんのが半裸の男、エース。 こいつに構うと本当に面倒なので、姿を消す。さ、寝よ寝よ。 「ぐえっ」 「あ、なんか踏んだ」 こいつ…ほんとは見えてんじゃねェの? 腹を踏まれ、能力が解ける。ブーツ履いてるせいもあってかなり痛い。 痛みを堪えながらエースを見上げると、笑いながら謝っていた。 「お前さ…。これで踏むの何回目…?」 「いちいち数えてんのか?すっげェな名前は!」 「数え切れないぐらい踏むんじゃねェって言いたいんだよ!」 何このアホな子!それでよく隊長が務めまりますね! 嫌味を言っても通じないアホに付き合ってる暇などない。俺は寝る! 「マルコが探してたぞ。お前持ち場にすら行かねェだろ」 「俺は仲間じゃねェからな。じゃーな」 「おいコラ!マルコにまた殴られっぞ!」 「パイナップルに言っとけ。名前は風になりました、ってな」 じゃ。と格好よくウインクを決めてまた姿を消す。 さて、昼寝昼寝〜。 「風になる前に仕事しろい」 「ギャッ!」 姿を消したはずなのに、何故かパイナップル…マルコにはバレる。 そして殴られる!俺風人間なのに何でだよ! エースは解る。あのとき無意識だったし、生身だった。 まだ悪魔の実を食って間もないせいか、意識していないと風人間になれない。 噂で聞くには、悪魔の実ともっと同化すると、無意識でも風人間になれるらしい。 エースはまさにそうで、寝ているときに殴っても殴れない。(逆に自分の手が焼かれる) 同化するにはどうしたらいいか…。エースに聞いてみても意味のわかんねェ答えしか返ってこないし…。 仕方ない。ここにいる間ちょっと修行してみっか。 って、今はそんなことよりこいつだ。俺の天敵…! 「だから何回も言わせんなよパイナップル!俺は仲間になった覚えがねェ!故に仕事する意味がない!」 「じゃあお前飯食うな」 「うっ…」 「働かざるもの食うべからず。今のお前に言ってやるよい」 「やっろォ…!何すればいいんだよ!パイナップル狩りなら喜んでやるぞ!」 「飯調達してこい」 「最後は無視ですか、そうですか」 てか何を言ってんだコイツ。海しかねェのにどっから調達すんだよ。 「あ、俺海王類の肉結構好きだぞ。大物頼んだ!」 「は?え、ちょっと待って…。何、お前ら海王類食べんの?」 「食糧が尽きかけてんだ。釣ってこい」 「また命令か!お前どんだけ俺様なの!?」 「頼んだよい」 「また無視か!パイナップルさん、せめて無視だけは止めて下さい!」 「よーし、暇だし俺もやるか」 結局、エースに釣り竿を貸してもらい、何人かの海賊と一緒に糸を垂らす。 海王類釣るのに普通の糸で大丈夫なのか? 「ふわああ…」 また欠伸。 こんな糸で釣れるわけねェって…。 隣に座るエースもすでに寝ていて、他の海賊達はくっちゃべってる。 「もしかして釣れるまでずっとこの状態?」 いやいや、ケツいてェし。 だからってここで寝たら海に落ちて、死亡。 それだけは免(まぬが)れたい。 あー…早く食いつけよ。じゃないとパイナップルさんがうっせェんだよ。 「………つーか、海王類の分際で俺の手を煩(わずら)わせんな!」 次第にイライラしてきた俺は釣り竿を投げ捨て、立ち上がる。 海賊達は驚いて俺を見上げ、声をかけてくるが無視。 未だ器用に眠るエースを叩き起こし、船から飛び上がる。 「とにかく捕ればいいんだろ!?」 「ん?おー、肉ならなんでもいいぞ」 「ちょっと待ってろ!」 船から離れ、適当なところで止まって海面を見つめる。 手を空に掲げ、指先に集中。頭の中で槍のイメージを固める。 「どれでもいいから当たれ!」 作りあげた風の槍を海へ勢いよく投げつける。 風圧で一瞬海に穴があいたが、すぐに戻った。 大型の海王類ならきっと当たってる。浮かんでこい! 「よっしゃ、ビンゴ!」 赤い液体がジワジワと海面を汚し、そして大きな生物が浮かんできた。 見た目はうまそうじゃないが、いいだろう。 風の力で海から持ち上げ、船へと帰る。 すると海賊達は「すっげェなお前!」と言って、背中をバシバシ叩いてきやがった! 痛いが褒められて悪い気はしないので我慢してやる。俺は心が広いと思う。 「どうだエース、俺の勇姿は」 「悪い、トランクスしか見えなかった」 「どこ見てんだよ!」 「つーか遠すぎて何してんのか解んねェし。何してたんだ?」 「何って…。風の槍をこう…むにゃむにゃ〜と作って、指に力入れて投げただけだ」 「おお、すっげェな!」 「だろ?もっと褒めてもいいんだぜ?」 「さすが悪魔の実食っただけあるな!もしかしたら即戦力になれんじゃね?」 「……おいエース。それ以上喋るな。俺の勘が危険だと泣き叫んでる」 こう…背筋が震えるこの感じ。 とりあえず姿消しとくか。 「おー、やるじゃねェか」 「ゴフッ…!」 やっぱり来たかパイナップル! 何で姿見えねェのに、エルボー食らわすことできんだよ! 「名前、今さっきの技もすごかったな」 「……実は釣り竿投げただけです」 「ほォ…」 「名前ー、釣り竿ならここにあるぞ」 「エース君、空気読んで!ひたすら読んで!」 「いや、俺風人間じゃねェし空気と会話できねェわ」 「俺もできねェよ!」 ああああああ!終わった!これでさらに逃げれなくなった! だってパイナップルさんむっちゃ楽しそうに笑ってんだもん!極悪顔だよこの人! 「言っておくが俺は戦わねェぞ。それに俺は元々一般市民で、戦いのセンスなんてねェから!」 「じゃあ俺が鍛えてやる!」 「うおーい、エースくーん!頼むから君は黙っていてくれ!」 「名前」 「……マルコさん、頼みますから楽しそうな顔で見ないで下さい。アンタの笑顔は心臓にわりィや」 「刀の手入れしといたよい。なかなかの名刀だそうだ」 「あ、ああ…。どっかの海賊から奪った奴で、結構気に入ってんだ…。あの、でも俺使い方知らねェから…」 「ハルタに聞くといいぜ!あいつ飛びながら斬って「エースウウウウ!」 「名前」 「二回目ですね、何ですかマルコさん…」 「やれ」 何を!?と聞く前に、強制的に捕まえられ、どこかへ拉致られる。 エースが楽しそうについて来てるのを見て、俺は涙が止まらなかった。 いい顔して笑ってんな、エース…。 「今日からみっちり鍛えてやるから覚悟しとけよい」 さらに極悪に笑うパイナップルの後ろには、同じく楽しそうに笑っている隊長全員が立っていました。 死亡フラグじゃねェかこの野郎! [*前へ][次へ#] |