!注意! ギャグありません。 戦闘メインなのでそういう描写(軽いグロ)があります。 血とかそういうのが苦手な方は読まないよう気をつけて下さい。 ギラギラと野生動物のように輝く野郎どもの目。 舌舐めずりをしながら、自分達が得意とする武器を手に取り、今か今かと手が震えていた。 「はー…白ひげ海賊団にケンカ売るバカっているんだな」 「それはテメェもだろい」 「あれは間違えただけだ」 「ああ、バカだもんな」 「うるせェよハゲ。いいから後ろすっこんでろい」 「名前」 「何だよい」 「首落としてこい」 「落としてたまるか」 戦闘準備をする仲間達を見て俺も抜刀し、皆より少し後ろでスタンバイしていた。 するといつもように嫌味を言ってくるパイナップルが隣に立つ。 一番隊長様はオヤジを守るため、今回は出撃しないらしい。面倒なことは若いもんに任せるんだって。 年だもんな!ってバカにしたら鼻で笑われた。あいつは人を怒らせる天才だな。いや、マジで。 「名前ッ」 「おう、どうしたエース」 「特攻決めるぞ!」 パイナップルと入れ替わりでエースがウキウキした様子で俺に話しかけてきた。 お前も暴れるの好きねェ…。俺はちょっと面倒だわ。 「でもよ、俺らが特攻かましたら敵船全部潰れるぞ?」 「大丈夫だろ、五十隻もあんだし」 「ううん…?その根拠はどっからきた?」 「しししっ」 「おい、笑って誤魔化すな」 「いいから行くぞ!」 「どわっ!」 後先考えないエースに腕を掴まれ、海へと飛び出す。 俺の意見も気持ちも無視かよ! しかしこのままだと海に落ちて二人揃って溺れてしまうので、風を起こして敵船へと飛ぶ。 後ろでは仲間達が「ずりィ!」とかなんとか吠えてる。どんだけ暴れたいんだテメェら…。 敵船はモビー・ディックからまだ遠くにいたが、俺達に気づいた一隻の船が砲弾を放(はな)ってきた。 まあ砲弾なんて簡単に避けれるから、軌道を変えようとしたが、エースが火銃で砲弾を撃ち落とした。 ……いや、砲弾なんだから撃ち落とすことはできず、空中で、しかも俺達の近くで爆発! 「テメェはバカか!空飛んでる間は大人しくしてろって言ってんだろ!?」 「今のは俺じゃなくてあいつらのせいだろ!」 「そうじゃなくて、もっと考えて行動しろって言ってんの!」 「うるせェトランクス野郎!」 なにこいつ!ちょっとは反省しろよそばかす野郎! エースと口ケンカしながら一番手前にいた船の船首に降り立つ。 「二人ともロギアだからよかったものの…。いや、ロギアじゃなくても今のは痛かった!」 「もうちょっと鍛えろよ!鍛えてねェ名前が悪い!」 「ハァ!?昼寝ばっかしてるエースに言われたくねェし!」 「俺はちゃんとしてる。筋肉だってお前に比べたらモリモリだ!」 「テメェは今禁句を言った。それだけは言っちゃいけねェ、いけねェよ…。覚悟しろ!」 「それはこっちの台詞だ!マルコみたいに手加減できねェからな!」 「上等だ。ブッ倒してやる!」 「テメェら何しに来やがった!」 敵に突っ込まれ、俺とエースはその男を見る。で、また顔を見合す。 そうそう、遊びに来てたんだ。五十隻もあるから少しは潰しとかねェとな。 刀を握りしめ、群がっていた野郎どもを見下すと、そりゃあもうむさ苦しい奴らが俺らを睨んでいた。 「名前、お前左からな」 「うるせェ。俺に命令すんな」 「隊長の言うことぐらい聞けよ」 「は?どこに隊長がいんだよ。ああ、いたな筋肉バカ隊長」 「これが終わったら覚えてろ」 額に青筋を浮かべながら右手から炎が巻きあがった。 細い炎の柱に、敵は怯んだ様子を見せる。 その瞬間、風の力を借りて俺はその場から姿を消す。 姿は消していないが、すばやく動く俺を誰も捕えることができない。 刀で敵の足元を斬り、バランスを崩した敵はいとも簡単に甲板に伏せていった。 地に足をつけてないと何もできない。人間って呆気ないもんな。 あらかた片づけてエースはどうしてるのかと船を見渡すも、いない。 「どこ行きやがったあのバカ…」 メラメラの実を食ったからなのか、はたまたそういう性格なのか、エースは一度燃える(興奮する)と落ちつくまで時間がかかる。 オヤジ曰く、「まだ青臭ェガキだ」らしい。 そりゃあ平均年齢が高い白ひげ海賊団の中じゃ若いわな。って言ったら「テメェもだよい」ってパイナップルに言われた。 あ、思い出しただけでイラッとした。あとから殴ってやる! 「あ、あんにゃろ、もう次の船に行きやがった!」 戦っている間に回りにいた船がこの船に集まってきた。 ある程度までの距離ならエースも飛べる。 隣の船は既に炎に焼かれ、深い海へと沈んでいき、その隣の船ではまた炎の柱が巻きあがっていた。 「派手だなァ…」 頭をかきながら呑気にエースを見ていると、モビー・ディックもようやく到着して、仲間達が雄たけびをあげていた。 「俺も行―――」 この船は片付いた。 エースを筆頭に敵船は沈没し、仲間達もやってきた。 この戦いももう終わるだろう。 このまま傍観しててもいいんだけど、パイナップルに文句言われそうだし頑張るか。 刀を収めてその場から飛び立とうとすると、グラリと視界が揺らいで片膝を甲板につく。 グルグル回る視界。頭を抑えて静まるのを待つが、静まることはなく、気分まで悪くなってきた。 「な、何だ…これ…」 視界の端で何かが動いた。 乱れた息でそっちを見ると、一人の男が笑いながらガラスの瓶の蓋を開けていた。 気分が悪いのはきっとあの瓶のせいだ。 何で気分が悪いかとか、このせいで俺がどうなるかなどは解らないが、それだけは解って立ち上がろうとするも、足に全く力が入らない。 「ひ、…一人でも多く…!」 「テメェ…!」 「そして絶望しろ…ッ」 その男に向かって指をさし、左から右へと動かす。 男の首は胴体から離れ、ボールのように転がって、俺の視界から消えた。 「くそっ…。気持ち悪ィ…!」 あの瓶には何が入ってた?俺どうなんだ?このまま死ぬのか? それならそれでいい。だけどあの男が言った台詞が気になる…。 不器用に呼吸をしながら目を瞑って考える。 遠くではサッチやエースの理性を失くした声が聞こえ、敵か味方か解らない悲鳴も届く。船の、木の燃える匂いもする…。 一人でも多く…。これは俺を殺したいといったあいつの思い? 絶望しろ…。これが意味解んねェ。俺一人死んだって…。悲しむかもしれねェが、絶望は―――。 「……エー、ス…?」 今さっきまで気分は悪く、胃もむかむかして吐き出しそうだったのに、それがスッ…と消えた。 それどころか足に力も戻り、すぐに立ち上がることができた。 何だったんだ…。一瞬だけその場に立ちつくしていたが、俺の足元に真っ赤に染まったエースがいて、また全身から力が抜ける気がした。 「おいエース!おまっ…、なんでここに…!?」 だってエースは他の船で敵を倒してたんだぞ!?なのに何でまたこの船に!? いや、それより何でお前が血ィ流して死んでんだよ!ふざけんな!死ぬなよ! 「…ッ!」 エースを抱き上げ、激しく揺さぶっても奴が起きることはなかった。 俺の手はエースが流した血で汚れ、酷い死臭で吐きそうになったが、エースの隣で死んでいた男、サッチも見て目を見開いて思考が止まった。 「お、おい…。冗談はよせよ…。お前ら白ひげ海賊団だろ?こんなとこで…。何でッ…!」 何で死んだ。誰に殺された。冗談はよせ。 そんな言葉ばかり脳内を駆け廻った。 まさかと思って周囲に目を向けると、甲板に横たわっているのはどれも見慣れた仲間ばかり…。 血を流し、中にはもう人間だとは判断できねェほどぐちゃぐちゃになった奴もいた。 だからこんなに酷い死臭がするのか。 胃からこみあげる嘔吐感。全てを吐きだし、呼吸を整えようとするも、ハルタの死体を見てまた吐き出してしまった。 「何だよこれ!誰がやりやがった!俺の大切な仲間を殺したのは誰だ!」 ぶっ殺してやる…!こいつらにやったように、俺もテメェを殺してやるから出てこい! 声が割れるほど何度も叫ぶのに、誰も出てこない。 周囲にあったたくさんの船もいなくなっており、空は暗い。 ここは異世界か何かか?いや、そんなことどうでもいい!とにかく殺してやるッ…。絶対に…! 『――』 静かだったその場に響く、一つの声。 すぐに振り返って殺気を飛ばしてやる。 冷たくなった仲間を踏みしめ、俺に近づいてくる男は見たことない人間だった。 「テメェが…殺したのか…?」 『――――――?』 男は何か解らない言葉を喋っていた。 俺が何を質問しても、意味の解らない行動、言葉で何かを伝えながら、仲間をまた踏んだ。 「踏むんじゃねェ!」 吠えながら風の刃を男に放った。 男はやっぱり意味のわからない言葉を喋りながら俺から離れて行く。 逃がすもんか…。テメェが仲間を殺した犯人なら、俺が仇を討たねェと…。 立ち上がって追いかけるたび、血の水たまりを踏む。 柔らかい感触にまた顔を歪めるが、今はあいつを殺さねェと…! それにしても視界が悪い。焦げ臭い匂いもする…。 男は船から飛び降り、海へと消えた。……何がどうなってやがる。消えるなんてありえねェだろ。 不思議に思って海を覗きこんでも暗くてよく見えねェ…。 『―――!―――――――?』 「ああ?!」 『――――――――――――。――――!」 「テメェらも…。あいつの仲間か?俺の仲間を殺したのはテメェらか…?」 『―?――――?』 「うるせェ!死ねッ!」 ごちゃごちゃと意味わかんねェこと喋りやがって…! 腕を空へかざし、勢いよく振り落とす。 風の刃が男達に向かうが、男達はそれを交わして何か叫んでいた。 今さら泣き言かよ…。俺の仲間を殺したくせに…! 怒りで足元から風が勝手に巻きあがり、俺を中心に小さな竜巻が起こった。 ああ、これをあいつらにぶつけてやりたい…。でも仲間達まで微塵になっちまう…。 その一瞬の迷いのせいで男達を再び逃がしてしまった。 もちろんすぐに追いかけようとしたが、大きな影が俺を照らす。 振り返ると船首に大きな鳥、いや化け物鳥が降り立っていた。 その鋭い爪で仲間達を殺したのか?その汚れた嘴で仲間の死肉を食らったのか? 再び巻きあがる風。 『――――――――。――――――――――――――――?』 「化け物のくせに喋るんだな…。まあ意味は解んねェけどな」 『―――――』 「俺の大事な仲間…、家族をよくも殺したな!」 腕を化け物鳥に向け、風で槍を作る。 「殺してやる、ブッコロス…!」 解んねェけど血が熱く騒ぐ。 何でこんなに憎いか解らない。だけど何かが「殺せ」と俺に命令してくる。 いや、家族を殺されたんだ。だからあいつを殺す。殺すんだ。 槍を放ち、すぐに自分も駆け出す。 槍は化け物の心臓に突き刺さったが、やっぱり化け物。血を流すこともなく、倒れることもしない。 刀を抜き、鞘を強く握って化け物に斬りかかる。 化け物は空へ飛んで攻撃を回避したが、逃がすわけねェよなァ! 刀の切っ先を化け物に向け、風が刀にぐるぐると蛇のように巻きつき、そのまま化け物へと向かって行った。 化け物の翼に当たって、バランスを崩した化け物が海へと落ちるが、ギリギリのところで踏み留まってまた空を駆ける。 俺も空を飛んで化け物を追いかける。 『―――――――――――――――?』 「何言ってんのか解んねェんだよ!」 『―――――――』 ぐるりと船の上を旋回し、何を思ったか船へと静かに降り立った。 俺も続いて降りようとしたが、烈火の勢いで化け物に横腹を蹴られて吹っ飛ばされた。 風人間なのに何で俺の身体を触れた?何で痛い? 粉々になった木片を払いながら刀を探す。ついでにとらえた視界には死んだエース…。 『―――――――――?』 「グッ…!」 エースの死体に目を奪われていた一瞬をつかれ、化け物に捕らわれてしまった…! もちろん抵抗したが、ビクともしない。 鋭い嘴が何か言っている。ああ、俺を殺すのか?仲間のように。 ハッ!誰がテメェなんかに殺されてたまるかよ! 「殺してやるっ…!家族を殺したテメェなんか俺の手で殺してやる!」 『――――――――――――――――――』 「死ねッ!」 『―――――――――――!』 風の力でこいつを吹っ飛ばそうとしたが、その前に顔を殴られた。 耳の奥がキーンと痛むが、痛みより憎しみのほうが強い。 睨みつけて斬り殺してやろうとしたが、鳩尾を殴られて甲板に倒れてしまった。 『―――――かい?」 「っぐ…ああ…?」 一瞬止まった呼吸。さすがに鳩尾は苦しかった。 「―――めた――て―――ん――』 「……こ、の声…?」 『――――は知って――、ここま―――――は―らなかったよい」 徐々に視界がクリアになっていく。 暗かった世界に太陽の光が照らし、匂いも薄れていった。代わりに焦げた匂いが鼻を強く刺激する。 よくよく見ると船は血で汚れておらず、甲板に横たわっていたのは知らない男達。 ゆっくり…、顔をあげると見慣れたパイナップルがあった。 「……何、してんだお前」 「それはこっちの台詞だい」 そう言って頭を思いっきり殴られた! 「何しやがる!」 「だから、それはこっちの台詞だって言ってんだろい」 「………あれ?俺何してた?」 「ハァ…」 あんなに憎悪に満ちていたのに、今は全然。 頭はマルコに殴られて痛いが、心はすっきり! 俺は夢でも見てたのか?にしても鮮明だったな…。 「幻覚だろい」 「幻覚?」 「それとも本物のバカか?」 「ちげェよ!」 呆れるパイナップルにムカついて殴りかかるが、簡単に交わされてしまい、勢いよく前に倒れてしまった。 倒れた目の前には一つの瓶。ああ、見たことあるな、この瓶。 確か男がこれの蓋開けて…それから………。 「これのせいか!」 よく解んねェけど、きっとこれのせいだ! この瓶にはなんか薬とか入ってて、それを嗅いだ俺はあんな幻覚見たんだ。ああ、絶対そうだ! 「くっそー…巧妙な罠だぜ…」 「どの口が言いやがる」 「うるせェ!こんなもんに騙されて恥ずかしいんだよ!もっと慰めろよ!」 瓶を甲板に叩きつけて割る。 ああもう恥ずかしい!単純なのは認めるが、こんなもんに踊らされていたと思うと泣きたくなる! 「名前」 「何だよ!慰めてくれんのか、パイナップルのくせに!」 「俺は不死鳥だい」 「ああ!?なんだよ、自慢かよ。ええ、羨ましいですとも!」 「名前、俺は不死鳥だ」 「だから…!―――マルコ…?」 珍しく真面目な顔で俺の顔をジッと見るマルコ。 へいへい、どうしたパイナップル。真面目な顔なんて気持ち悪いぞ?それと、あんま目をみんな。吐き気が…。 とは言える空気じゃなく、ただ黙って俺もマルコを見ていた。 「絶対に死ぬことはねェよい」 「……あ、ああ…」 「また暴走しても俺は死なねェから止めてやる。だから安心しろい」 「……」 「単純バカだからな、テメェは」 「…バカは余計だっつーの!」 「ああ、そうだな。じゃあ家族が大好きな坊やって言ったほうがいいかい?」 「っ!て、テメェエエエエ!」 「おい名前、顔が赤いぞ?もしかして図星かい?」 「うるせェ!今から殺してやるからジッとしろ!」 「お前にやられるほど弱かねェよい。ほら、さっさと帰るよい」 初めてみたマルコの優しい笑顔。…くそ、気持ち悪ィ…。 青い鳥に変身してモビー・ディックへ帰っていくマルコを見送り、血で汚れた自分の手を見る。 「……いつの間にか大切なもんになってたな…」 オヤジもエースもサッチも…。………もちろん憎いパイナップルも。 白ひげ海賊団は俺の中で特別なものへとなっていた。実感した…。 「くそっ…。俺らくしねェ…!」 熱くなった顔を当分の間冷やしてたが、俺を置いて出発しだすモビー・ディックを見て急いで追いかけた。 「俺を置いて行くなよ!」 そう叫ぶと、パイナップルがニヤニヤと楽しそうな顔で俺を見ていた。 やっぱあいつなんか大嫌いだ! 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