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もしもシリーズ

!とっても注意!

この先、これから「連載」で起こるネタバレを含んでいます。
それを吹っ飛ばし、さらには時軸も無視した内容になってます。
矛盾を許せる方、ネタバレ平気な方のみお読み下さい。

先に連載のほう進めよ。って感じですが、まだそれまでに書きたい短編とかあるので…。
好き勝手にしてすみません。とりあえず何も考えずお読み頂けると嬉しいです。










「いやー…絶好の天気だな!」


家出をしてから色々なことがあって、グランドラインを逆走している俺はたくさんの人で賑わう島へと到着した。
相棒のウイングロードから下りて背筋を伸ばし、固まった筋肉をゆっくり解していく。
と同時に、腹の虫も騒ぎだした。腹減ったな…。
船は盗られないので(俺にしか動かせないため)、その場に置いて街へ歩き出す。
どこかの飯屋に入ろうとしたが、お金がないことに気づき足を止める。


「さて、どうするか…」


島に着いたらまず観光。これは俺が勝手に決めたルール。
だから初日に騒ぎを起こしたくない。なので海賊を捕まえるのはなしだ。
じゃあどうしてお金を稼ごうか。

道の真ん中で考えていたら、いつの間にか人混みに流され、とある集団が目に入った。
今まで見たことのないような恰好で、ボールの上に乗って小さな玉を何個も投げていたり、貼り付けにされた美女に向かって本物のナイフを投げたり…。
最初は驚いて口をだらしなく開けていたが、いつの間にか魅入っていた。


「なァおっさん。こいつら何してんだ?」
「雑技団だよ。知らないのかい?」
「雑技団?」
「簡単に言えば普通の人間には難しいことをやったりする集団さ」
「へー…」


すげェな。俺にはあんな真似できねェ。しかも子供までいるじゃねェか。


「そうだ!」


俺ってマジで天才かもしれない!
賑わうそこから離れ、人通りの多い道へと戻った。
道の脇、家の壁の前で自分の荷物を漁り、寒い時に着るちょっと汚いマントを広げて、その場に立つ。
よし、準備は万端!


「俺もああやって金稼ごう!」


ちょっとずるいが、風人間なんて言わず、マジックショーを開けばいいんだ!
そうと決まればさっそくネタ仕込み。とは言っても簡単な話。

まず適当に目についた人に声をかけ、立ち止まったら右手を見せて「本物だよね?」と確認させる。
不思議がってる人に考える時間をあまり与えず、右手だけ風になって消すと、目を見開いて驚いた。
その調子で偽マジックをしていると、あっという間に人が集まって、お金もたっぷり頂いた!
風人間になってほんとよかった。使い方間違ってるけど、本当によかった!
これでもう食うに困ることはない!そしてトランクスも買い放題だぜキャッホーイ!


「……なァ麦わらの少年」
「お前すげェな!どうなってんだ!?」
「別に金払えとは言わねェ。だが、マジックは終わったんだ。さっさと帰れ」


お金も十分もらったし、飯でも食いに行こうとお開きにしたのだが、麦わらを被った少年がその場から離れない。
キラキラとした目で俺を見つめ、「すげェすげェ」の連発。
嬉しいんだけど、お兄さんちょっとだけ良心が痛んじゃう。


「えー、もっと見てェ」
「飯食いに行くからやだよ」
「飯食いに行くのか!?俺も行く!」
「…自分の飯代あるか?」
「しっし、ねェ」
「たかる気満々か!初対面なのに恐ろしい奴だなお前!」


最近のガキってこんなんなの!?
面倒くせェもんに捕まったな。さて、どうしよう。
姿を消してそのまま逃げてもいいが、飯屋には行きたいしなー…。飯屋で姿現わすと絶対騒がれるし。


「なァお前!俺の仲間にならねェか!?」
「すっごい唐突。お前自由人だな」
「じゆーじん?なんだそれ、うまいのか?」
「自分の肉食ってみろ」
「食ったぞ」
「食うなよ!え、お前バカなの?それとも天然なの?どっちにしろ面倒なので俺の目の前から姿を消して下さい」
「やだ」
「わァ、いい返事」


どうしよう、この子。凄く面倒臭い。


「あー…。お前一人か?」
「いや、ゾロとサンジとナミとウソップとチョッパーとロビンがいる」
「そっか。じゃあさっさとそいつらのとこへ「ゾロってばまた迷子になってよ。ナミとチョッパーが探しに行ってんだけど、見つかんねェんだ、バカだよな!俺とウソップとサンジとロビンは先に飯食いに行こうとしたんだけど、人多いだろ?そしたらいつの間にかここに来たんだ!だから仲間になれ!」
「別に仲間のことなんて聞いてねェよ。とか、お前も迷子になってんじゃねェかバーカ。とか、脈絡がなさすぎる!とか、そんなん全部ひっくるめて、お前バカか」
「あっひゃっひゃ!お前ェ面白ェな!」
「お前ほどじゃないよ!?いいから仲間のとこ帰れって」
「ダメだ。お前が欲しい」


今までガキみたいなオーラを放っていたのに、その台詞のときだけ真面目な顔へと変わった。
俺は男だが、なんだかすっげェ魅かれてしまった。
なんつーかな、天性のカリスマを持ってるっつーか…。まァいいや。

これ以上話しても無駄なので、話を無視して荷物を背負う。
麦わらは逃がすまいと着流しの裾を引っ張るもんだから、トランクスがばっちり見える。今日はおススメのトランクスだから構わねェ。


「なー、どこ行くんだよ」
「お前がいないとこ」
「俺ら仲間だろ?」
「なったつもりねェよ!」


ダメだ。キリがねェ。面倒くせェが姿消すか。


「おい、お前名前は?」
「何だ、仲間になるのか?」
「いいから名前」
「俺はモンキー・D・ルフィ!お前は?」
「(D?エースと同じだ…)俺は名前」
「そうか、これから宜しくな!」
「いや、これでお別れだ」


そう言って笑うと、ポカンとした顔が俺を見上げていて、思わず吹き出しそうになった。
さーて、どうやって逃げようか。


「ルフィ!やっと見つけた!」
「おお、ナミ。どうした?」


と思ったが、止めた。
目の前に素敵な女性がいて、逃げるなんて格好悪い!
オレンジ色の髪の女性と、鹿みたいなトナカイみたいなよく解んねェ動物がルフィに近づいて、そして鉄拳を一発食らわした。
お見事!心の中で拍手しつつ、やっと離してくれた裾を整える。


「アンタまで迷子になってどうすんのよ!おかげで二度手間よ!」
「まぁまぁナミ。ルフィも見つかったんだし、いいじゃ「よくないわよ!」


鹿って喋るんだな…。知らないことばっかでお兄さんビックリ。
そしてこの子胸でかすぎだろ…。やっべ、凝視しそう…。


「ところでこの人は?」
「初めまして、オレンジ髪の素敵なレディ。俺の名前は名前。しがない旅人さ」
「今日から俺の仲間だ!」
「「は?」」
「仲間になるなんて一言も言ってねェだろ。妄想も大概にしろよ」
「ダメだ。俺が仲間だって言ったら仲間だ!」


なんなんだろう、この子…。世界の中心は自分だと思ってるのかな…。


「ともかく急いで逃げる準備して!」
「逃げる?」
「海軍に見つかったのよ!」
「えー!?俺まだ飯食ってねェぞ!?」
「食糧の調達はサンジ君がすませてるわ。あとの皆も船に逃げてる。あとは私とチョッパーとあんただけ!」
「よし、じゃあ逃げるか!」
「いやいや、俺関係ねェし離せよ!」
「だって逃げるだろ?」
「当たり前だろ!?海軍にバレたく…じゃなくて、お前の仲間だと思われたらどうすんだよ!」
「仲間になりゃあいいだろ」
「お前マジで切り刻むぞ!?」
「ともかく逃げるぞーっ!」


また裾を掴んで、海へと走り出す麦わら…。
後ろに女の子がいるから逃げるなんてできない。
そうこう悩んでいるうちに、銃や剣を持った海軍が俺達を見つけ、追っかけてくる。
やっべェ…。顔隠しとかないと…。……いや、俺そんなに有名じゃねェし大丈夫、か?


「…おい、あいつ。もしかして“風来坊”じゃないか?」
「やばっ…!」


追いかけながら騒ぎだす海軍に、背中に冷や汗が流れた。
どうする。やるか?いや、ダメだ。まだ危ない…。
でもバレるのは時間の問題。……やるしかねェだろ。どうか、勘違いされませんよーに!


「麦わら!」
「んあ?どうした?」
「船の場所は?」
「あっちだ」
「違うわよ!あっちよ!」
「了解。じゃあちょっと大人しくしてろよ」


風を起こして地面から離れる。
ルフィは楽しそうに笑っていたけど、女の子と鹿は悲鳴をあげている。
もうちょっとだけ我慢しててな。と声をかけ、女の子が指さしたほうへと空を駆ける。
勿論海軍からの追手は簡単に振り切り、特に問題を起こすことなく、コイツらの船に到着することができた。
あ、俺の船も近くにある。…お前ら海賊なんだから堂々と港に泊めるなよ。


「すっげェ!なんだよ今の!面白ェ!」
「あー、はいはい。そのキラキラ光る目はいいから船に乗れって…」
「今の…」
「あ、大丈夫?気持ち悪くない?」
「え、ええ…。大丈夫…」
「楽しかったなチョッパー!」
「怖かったッ…!」
「ともかく俺はもう行く。じゃあね素敵なレディ!もしまた会ったら一晩「おい待てよ名前!お前もこの船に乗るんだ!」


またこのパターンか…。くっそォ…。


「だから何度も言わす「ゴタゴタ言ってないで乗って!また来たわ!」


しつこい麦わらにさすがの俺もイライラしてきた。
だから胸倉を掴んで声を荒らげるも、女の子に背中を押され、そのままこいつらの船へと連れて行かれる。
女の子に乱暴なんてできるわけがなく、大人しく甲板に立つのはいいが、これってヤバくないか?
なんだか島から離れて行っているので、とりあえずウイングロードを風で取り寄せる。
今さっきまでいた港からは海軍が銃を発砲しつつ、軍艦を持ってきて砲弾まで放ってきやがった。
バタバタと慌てる海賊達。俺はそいつらを見てるだけで、何もしない。だって無理やり連れ込まれたんだしな。
それに、そんなことしなくてもこいつらは自分達でなんとかしていた。
すっげェ蹴りを持ったスーツの男に、三刀流の腹巻、絶対外さない狙撃手…。
鹿が大男に変身したときはさすがにビビった。世界って広い。


「ところでテメェ誰だ?」


海軍からあっという間に逃げ切り、落ちついた甲板。
殺気を放ちながら聞いてきたのは腹巻の男。すっげェ、野獣みたい。てか怖いから!
その後ろにいたスーツの男も俺を睨んでる。立ってる位置は女性二人をすぐに守れる位置だった。
狙撃手と鹿は離れたところで怯えていたけど、ルフィが一歩前に出るとホッとした表情へと変わって、また俺を見る。


「コイツ、俺の仲間だ」
『はァ?』
「ちげェよ。こいつに連れて来られたんだ」


簡単に事情を説明すると、全員が溜息を吐いて、何人かが「またか」と言った顔をした。
こういうことはよくあることみたいで、船長の悪い癖らしい。


「って、麦わら。お前船長だったのか」
「おう!」
「人は見かけによらねェな」
「ともかくよ、迷惑かけたし茶ぐらい出すぜ」
「サンジ、俺飯!」
「はいはい…」


スーツの男に中へ案内され、椅子に腰かける。
隣に麦わらが座って、目の前に女性二人が座って目の保養になった。
狙撃手と鹿は未だ離れたまま。腹巻の男も警戒を一切怠らない。
なんつーか…、不思議な海賊団だな。ちょっと俺ら(白ひげ)に近い感じするけど。


「名前、紹介するな!飯作ってるのがサンジで、ナミとロビン。あそこにいるのがチョッパーとウソップ。んで、ゾロ」
「ああ、そうかい。聞いてねェことをわざわざありがとよ」
「どういたしまして」
「嫌味に気づけよ」


腹巻、ゾロの突っ込みに歯を出して笑うルフィ。
俺も適当に自分のことを話すと、簡単だけどいい匂いを漂わす豪華な飯がテーブルに並んだ。
腹減ってたから助かった…!


「食っていいのか?」
「おう。残すんじゃねェぞ?」


そりゃあもう今まで食ったことねェってほど美味かった!サッチに並ぶ料理人だな、こいつ。
手を合わせて頭を下げると、「よせよ」と少しだけ照れる。こういう可愛げのある男は好きだ。(恋愛とかじゃなく)


「ところで名前、何で空飛べたんだ?」
「聞くな」
「俺達仲間だろ?」
「仲間になってねェよ」
「風人間だからよ」
『風人間?』


黒髪美人、ロビンさんの言葉に、全員が声を揃えて俺を見た。
どうやらこのロビンさんは俺のことを知ってるようで…。
席を立ち、姿を消したかと思ったらすぐに戻ってきて、新聞をテーブルに広げる。
その新聞は、シャボンディ諸島の事件が書かれている記事で、それと一緒に手配書も広げた。


「“風来坊”の名前ね。またの名を“ルーキー殺し”」
「あちゃー…」
「いち、じゅう、ひゃく……。四億九千万ベリー!?」
「お前ェすげェんだな!」
「ひいいい!そんなすげェ奴がなんでこの船に…!」


さらに警戒するゾロとサンジに、俺は苦笑いを浮かべる。
別にケンカするつもりねェし…。つーか殺気は止めて。怖いんだよお前ら!


「あのな、俺は別にお前らの首を狙ってきたわけじゃなく、ちょっと訳あって家出してんだ」
「……だからって何でわざわざ逆走してんだ」
「強くなるため。まァそこらへんはお前らに関係ないしいいだろ?それより飯も食ったし帰っていいか?」
「ダメだ!」
「もー…なんとかしてくれよ。お前らの船長だろ?」
『無理』
「声揃えて言うなよ…。すっげェ切ないじゃん…」
「でもよォルフィ。こんな得体の知れない奴、仲間にできるわけねェだろ…?」
「そうよ船長さん。この人白ひげ海賊団の一員よ」
「そこまで知ってんの?」
「だって書いてあるもの」
「ありゃ」
「白ひげって言えば…あの…」
「そう言うこと。だから無理だ、諦めろ」
「むー…。じゃあそっち止めて、俺の船に乗れ」
「どこまで自分勝手なの!?」


俺がツッコミを入れるとルフィはまた歯を出して笑い、ロビンさん以外の全員が溜息を吐いたのだった。

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あきゅろす。
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