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他愛もない会話1

「食った食った!」
「お前容赦ねェな…」
「奢るって言ったのはお前だろ」


文句あんのか?って目で睨んでくるから、涙目で睨み返してやる。
余裕もって残しておいた金なのに…。トランクス買えるかな。
少しの間沈黙が続き、シュライヤは「プッ」と吹き出し、盛大に笑いだす。
あ、コイツ笑うんだ。ピリピリした空気をずっと纏っていたから、笑うことなんてないと思っていた。


「金がなくなったぐらいで泣くなよ」
「それお前が言うか?」
「ああ、そうだな。わりィわりィ。久しぶりに腹いっぱい食わしてもらって感謝してる」
「ま、いいけどよ」


店を出て、適当に見つけたベンチに腰を降ろした俺とシュライヤ。
それをきっかけに色んなことを話した。
だけど俺は海賊だってことは絶対に喋らなかった。
シュライヤは賞金稼ぎ。だったら俺を狙ってくる可能性もある。
せっかくこんなに仲良くなれたんだ。できるなら戦いたくない。


「シュライヤは何しにこの島へ?旅してんだろ?」
「よく解ったな」
「なんとなくだけど」
「ある海賊を追っている」
「ある海賊?」


また最初のピリピリした空気に変わる。
いや、それ以上に重たい…。憎悪という憎悪がイヤほど伝わってくる。
理由は教えてくれなかったが、ガスパーデって男を探しているらしい。
ここへはその情報を掴みにきたらしい。
言いたくない過去みたいだし、俺はそれ以上聞かず、「そうか」とだけ答えた。


「……名前は何しにこの島へ?」
「え、俺に興味あるの?やっべ、嬉しい」
「…気持ちわりィ」
「冷めた目でみないで!冗談だろ!」
「お前の冗談は重たいな」
「だから冷めた目で見るなって!」
「で?」
「一言ッ…!俺は……船を作ってもらってる途中なんだ」
「旅でもしてんのか?」
「まァな!んで、俺にしか扱うことができねェ格好いい船で海を駆けるのさ!」


しかも水陸両用だぜ!?
と興奮気味に言うと、苦笑しながらも話に付き合ってくれる。やっぱコイツいい奴だ。
んー、シュライヤが白ひげに来てくれると俺も楽しいのにな。
しかもエースと似ている。顔が、とかじゃなく、雰囲気が。あ、でも髪型も似てっかも。

ってダメだ。シュライヤは賞金稼ぎだった。絶対に入るわけねェよな…。
でもちょっと前の俺もそんなこと考えていた。……誘うだけ誘ってみるか。


「なあシュライヤ。お前海賊って嫌い?」
「じゃなきゃあ賞金稼ぎなんてしてねェだろ。変な質問するな」
「だよなー…」


どうやら海賊が大嫌いらしい。
そうは言っていないが、雰囲気から察することができる。


「俺、結構シュライヤのこと好きだぞ」
「そりゃあ嬉しいな」
「嬉しそうな顔しろよ」
「ああ、すまん。正直なもんで」


また笑って、帽子が飛ばないよう抑えながら立ち上がる。
俺もつられて立ち上がると、ニィ!と笑った。


「食ったら眠くなった。じゃあな名前。奢ってくれてありがとうよ」
「ああ、帰るのか」
「当分の間ここに滞在するつもりだ。お前もまだいるんだろ?また会ったら飯奢れよな」
「勘弁してくれ」


軽い足取りで人混みの中へと消えていったシュライヤ。
俺が言うのもなんだけど、風みたいな奴だな。一人で旅してるからそういう風になっちまうのか?
さて、俺も帰るか。


「っとその前にトランクスっと」


面白い柄のトランクスを探しに、俺も人混みの中へと紛れて行った。





「お前さ、これ以上増やしてどうする気だよ…」
「ついつい…」


船に帰ると真っ先にエースに突っ込まれた。
俺の手には大量のトランクス。と、新しい着流し。
だって大きい街だけあって色んな柄のトランクスがあったんだもん!
って言うと、「馬鹿か」と呆れられた。いーじゃん、別に。


「ところでエースはどこ行ってたんだ?」
「俺ァ船番してたんだよ。グッスリ寝てやったぜ」
「いいなー、俺も惰眠を貪りたい。できればパイナップルがいないときに」
「マルコがいたらいっつも殴られるからな」
「アイツ容赦ねェよな。いつかツルっぱげにしてやるぜい!」
「その前にお前の頭をハゲにしてやるよい」
「ギャアアア!」


何でお前の話したらいっつも出てくるわけ!?


「痛いって!ほら、毛根も悲鳴あげてるから!」
「なんて?」
「「鳥に頭つつかれてる!助けて!」って!」
「つついたら何も入ってない頭が簡単に割れちまうからやらねェよい」
「軽いって言いたいのかこの野郎!」


もはやマルコとの口喧嘩はお約束となっている。
エースはそれを楽しそうに笑って見ているが、俺はいい迷惑だ。止めろ。構うな。どんだけ俺のことが好きだ。
と言ってやると、髪の毛を掴む力を弱めてくれた。
急いでエースの後ろに隠れ、睨みつけてやると黙って見てくる。お、やんのか?


「喧嘩なら買ってやるぞ!」
「俺が名前のことを好きじゃなく、名前が俺のこと好きなんだろい?」
「ハァ!?気持ちわりィこと言ってんじゃねェよ!見ろ!鳥肌立っちまったじゃねェか!」
「それと同じ気持ちを俺は今さっき味わった」
「チクショー!」
「お前らほんと仲いいよな!」


一人笑うエースに、「どこ見てんの!?」とまたお約束の突っ込みをした。


「ところで、お前噴水のとこで喧嘩してたろい」
「え、ストーカー?」
「今すぐ撤回しなければ、お前のお気に入りのトランクスを海へ捨てる」
「すみませんマルコさん!」
「あー、俺も暴れたかった!やっぱ船番はダメだな…腹も減るし」
「お前は何しても減るだろ。だって海賊がカタギの人を傷つけたんだぜ?しかも目の前で。見捨てるほど落ちぶれちゃいねェよ」
「一緒にいた黄色い服の男。あいつ賞金稼ぎだって知ってたかい?」
「ああ、聞いた」
「名前、殺されたのか?」
「エース、じゃあお前の目の前にいる俺はなんだ」
「だよな!わりィ」
「でも俺が海賊だって言ってねェ。向こうも気づいてないみたいだし…」
「海賊処刑人で有名な奴だよい。あんま関わんな」
「海賊処刑人…。格好いい異名だ「やっぱお前は馬鹿だな」
「俺聞いたことねェや。そいつ強いのか?」
「ああ、異名に負けを取らねェほど強いよい」
「すばしっこかったぞ」
「名前よりか?」
「生身だったら負けてるかもな」
「へェ」


そこでその話は終わり、あとは適当にくだらない話をしていた。
明日は俺とサッチが船番。
それからそろそろどこの隊に入るか決めとけってマルコに言われたので、ちょっと真面目に考える。
でも、海賊って縛られたうえ、隊に縛られるのはさすがにもうイヤだ。
だからオヤジに「隊には入りたくない。だけどちゃんと働く」って頼みこむと、「自由にしろ」とお許しを頂けた。
よっしゃ!じゃあ明日は船番しつつ、惰眠を貪り、溜まったトランクスでも洗うか!

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あきゅろす。
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