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とある賞金稼ぎ

!映画・デットエンドを見てないと少し解りません!





俺が海賊になって、何ヵ月かが過ぎた。
海での生活もすっかり慣れ、人を殺すことにも慣れてしまった。
お金が欲しいのと、強くなるためにとで日々海賊や海軍と戦い続けたおかげだ。
時々嫌な気分にはなるが、最初ほどじゃない。慣れが一番怖いな。

あと隊長たちに鍛えてもらっているおかげで、能力は勿論、刀や素手のみで戦ってもそれなりに強くなった。
それでも隊長たちには全然勝てない!
いつかパイナップルマルコを殴るのを目標にしている。

とにかく戦いに明け暮れている毎日はあっという間に過ぎ、俺の懸賞金もそれに合わせてどんどんあがっていった。
最初は六千万、次が八千五百万、九千四百万、一億二百万……。今では俺一つの首が一億九千万もする。
ちょっとづつ有名にもなり、時々狙われることはあるが、それは他の隊員たちと一緒で、オヤジや隊長に比べたらまだまだ。
俺は別に名をあげたいわけじゃないから懸賞金には興味ない。興味ないが、


「まだ一億かよい」


パイナップルに鼻で笑われた日はさすがにキレた。あいつは人を怒らす天才だな!


「ここでいいのか?」


今日は久しぶりに島に到着した。
俺はどこの隊にも属していないから船番も買い出しもなし!
というか、今日はあるものを買いに来た。
そう…このために俺は今まで頑張ってきたんだ…!


「すみません、俺専用の小型ボート作って下さい!」


何もない限り少しの間この島にいると言うので、貯まった金を持ってある店へとやってきた。
そこは古びた造船屋で、オッサンと息子らしき男の二人しかいない。
元気よく入るも、オッサンは「ああ」としか答えてくれない。
職人の男は無口と昔から聞くが、まさにこのオッサンはその通り。


「いらっしゃい。船の注文は受けるけど、俺専用って?」


無口なオッサンの代わりに息子が俺の相手をしてくれた。

俺はピュウピュウの実の能力者で、風を扱うことができる。
それを原力とした小型のボートを作ってほしい。できれば水陸両用でお願いします。
と言うと、息子は目をキラキラさせ、オッサンも興味深そうに近づいてきた。


「オメェ…能力者だったのか」
「おうよ。最近食ったばっかなんだけどな!」
「水陸両用かァ…。面白そうな注文だな親父」
「……解った。俺に任せろ」
「おお!頼もしいな!金ならいくらでも出すからさ!格好いいのお願いします!」


必要な分だけのお金を避け、残りは全部渡した。
「こんなにいらないよ」と息子は断るが、俺もこんなにいらない。
飯は船に帰れば食えるし、服も着流ししか着たくない。刀だって変える気ない。
とにかく船が欲しい。海賊なら自分の船が欲しいと思うだろ?しかもこれから作ってもらうのは俺オリジナルの、俺だけにしか使えないすっげェ船だ。
その船にだったらいくら出してもいい。だから絶対壊れねェ船を作ってほしい。大事にするからお願いします。


「受け取っとけ」
「親父…」
「頼みます!」
「また一週間後に来い。それまでにオメェ専用の船を作っておいてやる」
「ありがとうございます!」


顔を向けることなく、すでに作業に取り掛かるオッサンに頭を下げ、店を出た。
きっと俺がいると邪魔だ。だからさっさと出て行く。
さて、一週間か…。特にやることもないし、船に戻って久しぶりにゆっくり昼寝でもするか。


「その前に新しい着流しと下駄でも買っとくか。あ、あとトランクスも買おう」


少し特殊な服だ。この街にあるか不安だが、探してみることにした。
街も大きいし、きっとどっかにあるだろう。
トランクスはそこらへんに売ってるし最後だな。どんな柄買おうか…。


「ん?んだありゃあ…」


賑わう大通りを生身で歩いていると色々と面倒だったから、姿を消して歩いていた。
少し進むと街の中心っぽい場所に辿りつき、シンボルの噴水が空へと水を放つ。
今日は夏のように暑いので、噴水の下は子供たちが水遊びしているだろう。
しかし今は誰もおらず、子供たちの代わりに一人の男と複数の男が睨み合っていた。

一人の男は薄いピンク色のウェーブかかった髪の毛に、黒い帽子、黄色い服。
複数の男はいかにも海賊!って奴らだった。

街の人達もコイツらの漂わぬ雰囲気に、誰一人近づこうとしない。ま、当たり前だよな。
っていうかさ、街中で暴れんなよ…。
あーやだやだ。だから男って嫌い。海賊って嫌い。


「あ、俺も海賊だった」


時々忘れちまうよなー。
特に興味もないし、姿を消してまた人混みの中へ消える。


「ギャッ!」
「お、おいオッサン!」


消えるはずだったのに、どっちかが投げてきたナイフが俺の前にいた一般人に当たって、倒れた。
は?何してんのコイツら。海賊がカタギの人たちに迷惑かけんなっつーの!
幸いなことに、オッサンに当たったナイフは急所を外していたが、出血は酷い。
周囲は混乱に陥り、当の本人達は勝手に暴れまくっている。


「やろォ…。あ、おいそこの人!ちょっとこの人頼む!」
「あ、あァ…」


一週間ここに滞在するわけだし、できれば目立ちたくない。
別に正義の味方を気取るつもりはないが、こういうことする奴ら大嫌い!


「おいゴラァ!」
「っと…。おい、そこ邪魔だ」
「黙れ天パ!テメェら何カタギの人に迷惑かけてんだよ!つーか暴れんな切り刻むぞ!」
「何言ってやがる!若造が偉そうに出てくるんじゃねェよ!おいテメェら、コイツも殺せ!」
「おおおお!」


何コイツら。馬鹿か。馬鹿なのか。よーし、俺が性根を叩き直してやる!
とりあえず天パはあとにしとこう。お前はあとで一時間の説教コースだ!


「着流し野郎、邪魔すんな」
「街中で暴れんじゃねェよ。ダサすぎる」
「コイツらが俺の飯時を邪魔したんだ。許さねェよ」
「心狭いなお前!」
「あとマナーが悪い」
「そっちが先だろ!まァいい、お前まともだし手ェ貸してやる」
「いや、結構」


そう言って天パは噴水の台に足を駆け、飛び上がる。おお、すっげェジャンプ力。
降り立つ場所は海賊の元。
落ちる重力を利用し、男二人の頭を掴んで地面に叩きつける。あれは痛いぞ。
手から落ちた海賊の武器を取り、襲いかかってきた海賊に応戦する。慣れた手つきだ。


「テメェも一緒に死ね!」
「あ」


天パの技に見惚れていたら、胴体を真っ二つにされた。
だけど意味はない。しかし油断してた。俺もまだまだだな…。


「え…な、何で…。今……」
「ああ、俺風人間だから。わりィな」


驚く海賊の顔に一発拳を食らわせ、ふらついたところに蹴りも食らわす。
やっば、今日のトランクス柄ダッセェ!
すぐに服装を整え、刀を取り出す。だけど抜刀はしない。危ないもんな。


「お前らなんかこれで十分だっつーの」
「舐めてんのか!」
「舐めてません。いいからさっさと終わらせるぞ!」
「ダッセェトランクス穿きやがって…」
「それ関係ないだろ!止めろよ、俺だって恥ずかしいんだぞ!」


どうせならキテ○ちゃんとか可愛いトランクス穿いてくればよかった!
イライラを力に、刀で男を殴ってやると見事ヒット。
これぐらい避けろよ…。と内心ガックリする俺。だって弱すぎだもん。もっとこう熱い戦いがしたかった!


「こっちも終わったか」
「おお天パ。そっちも終わった?」
「天パじゃねェ!」
「あ、俺風人間だから殴っても意味ねェぞ」
「はァ!?」


天パの拳は空を切り、バランスを失う。
だけど倒れることなく、すぐに振りかえって鋭い目で睨んでくる。
すっげェ殺気…。何をそんなピリピリしてんだ?


「まァ落ちつけよ。そうだ、トランクス見るか?」
「見るか!」
「あ、ダメだ。今日の柄はダッセェ」
「見るなんて言ってねェだろうが!」
「ところでお前名前は?あの身のこなし、タダ者じゃねェだろ。海賊?」
「……しがない賞金稼ぎさ。じゃあな」
「え、それだけ?名前は?」
「ついてくんな」


地面に転がる海賊を放置し、背中を向ける天パを急いで追いかける。
隣を歩き、話かけてみるけど、全くもってスルー。こうなったら意地でも名前聞いてやる!


「なァ!名前ぐらい教えろよ!一緒に戦った仲だろ?」
「テメェが勝手に混ざっただけだろ」
「お前らがあんなとこで喧嘩するからだろ?場所選べよ。で、名前は?」
「しつけェな…。シュライヤだ」
「おお!かっけェ名前だな!俺は名前!」
「聞いてねェよ」
「まァまァ!よし、ちょっと飯食おうぜ!俺が奢ってやるよ!」


その言葉に、天パ…シュライヤは足を止め、俺の顔をようやく見た。
目を若干開き、口元に笑みを浮かべる。あ、コイツ奢りって言葉に弱ェんだな。


「後悔すんなよ」
「お、おお?」


近くにあった飯屋へ入り、席につくなり、


「この店の全メニュー持ってきてくれ」


こいつ…、俺を破産させるつもりだ!

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