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小遣い稼ぎ

「うおおおお…!エース、これ何だよ…」
「ストライカーってんだ。格好いいだろ?」
「格好よすぎだろそれ!」


目の前には小型の船。
一人しか乗れないほど小さい船だったが、俺はその船に見惚れていた。
なんだよ…小舟のくせに格好よすぎだろ!


「どうやって乗んだ?」
「名前、乗る気か?」
「乗らしてくんねェの?」
「止めとけ止めとけ。そいつァエースにしか乗れねェんだよ」


海面近くに降りて、その船を見ていた。
エースはストライカーに乗り、ニシシと笑っていて、それがまたよく似合う。やっべェ格好いいぜ!今のエースになら抱かれてもいい!
俺も乗りたくてエースに聞いてみたが、上からサッチがごちゃごちゃうるさいこと言ってきた。
何でエースにしか乗れねェんだよ。なんか特殊なのか?


「ストライカーはメラメラの実の能力を原力とすんだ。だから名前には無理だ。わりィな」
「マジでか!」
「でもお前空飛べんだしいいだろ?」
「海賊なんだから船のほうがいいだろ!」
「俺はお前が解らない」


ああああ…格好いいな、無茶苦茶格好いいな…。俺も欲しい…。
恨めしいそうな目で見ていると、エースはニヤリと笑ってストライカーで海を走り始めた。
ちょ、すげェ!あんな風に走んのかよ!つーかどうなってんだ!?
わざと見せびらかすように走るエースの元まで飛び、「なあなあ」と話しかける。


「これどこで手に入れたんだ?」
「作ってもらったんだよ」
「作ってもらえんのか!?」
「金はかかるけどな」
「俺も欲しい!ちょっと買ってくる!」
「……金あんのか?」


あ…。


「つーわけで、金くれ」
「アホンダラが。何寝ぼけたこと言ってやがる!」
「いでェ!」


船に戻り、オヤジに直談判してみた。結果は勿論玉砕。しかも拳骨付き。

今の俺は文無し。食うに困ることもないし。
お金がないときにオヤジの仲間になったから忘れていたな…。
オヤジに頼んでもダメならどうする?前みたいに海賊捕まえていいのか?いやいや、連れてったら俺まで捕まんじゃね?


「オヤジ、敵船だよい」
「名前、一人で行ってこい。潰したら金はくれてやる」
「オヤジィ!でも一人は厳しいッス!」
「馬鹿野郎。お前ェはまだ戦闘慣れしちゃいねェだろうが」


戦って戦って、戦いまくれ。そして身体に“戦い”を覚えさせろ。
この船にいるってだけで首を狙われる。
懸賞金をかけられたってことは、色んな奴に狙われる。
自分を守るために戦え。そして仲間を守れるでっけェ男になれ。


「オヤジ…!よっしゃ、俺に任せろ!」
「……単純だよい」
「グララララ!単純な奴ほど扱いやすい奴ァいねェな」
「おい名前。俺も手伝うぜ!」
「いやいやエース君。ここは俺に任せなさいって」


エースの誘いを断り、まだ遠くにいた敵船へと飛ぶ。
大砲が飛んできたが、船に当たらないように風を刀に乗せ、斬る。
綺麗にした刀は少し嬉しそうに見える。ごめんな、すぐに綺麗にしてやれねェで。俺まだ弱ェけどよ、お前と一緒に頑張るから。だから今回も力貸してくれ。


「よっと」


騒がしい甲板に降り立ち、相棒を担いで周囲を見渡す。
あー…こんなことするのも久しぶりだな。…いや、そうでもないか。


「野郎のトランクスなんか見たァねェぞ!」
「こいつ白ひげの船から来たよな?単身で乗りこむくるたァ舐めた真似するじゃねェか!」
「ちょ、どうでもいいからトランクス隠せよ!」
「男のくせにハート柄のトランクス穿いてんじゃねェ!」
「男なら…せめてその恰好なら褌(ふんどし)にしやがれ!中途半端野郎が!」
「お前らトランクスへの突っ込みしかできねェのかよ!」


唯一まともな突っ込みした奴、あとで褒めてやるからな!


「えっと、ここの船長誰?」
「生意気な…。この船が「あー、やっぱいいや。俺海賊の名前とか覚えられねェから」
「テメェ!」
「とにかくさ、潰れてくれる?あと、強い奴がいたらどんどん攻撃してきて下さい。俺もっと強くなりたいんで」
「舐めやがって!野郎ども、いくぞォ!」


襲いかかってくるむさ苦しい男ども。
その場を飛び上がり、回転しながら船主へと降り立つとまた、「お前どんだけトランクス見せたいんだよ!」と突っ込まれる。
露出狂なのは認めるが、そこに目がいくお前らも好きねェ。
と笑ってやると、さらに頭に血が昇る海賊ども。

銃弾はなるべく、指先から作った小さな鎌鼬で斬る。
剣で襲ってくる奴は刀で応戦する。能力に頼らず、刀のレベルをあげること。
そして場の状況をよく観察し、それを利用する!
船主は背中を気にしなくていい。しかも狭いから大勢に襲われる心配もない。
一人一人、確実に殺していく。大丈夫、落ち着け。負けるな。


「だらァ!」


風を起こし、敵を投げ飛ばせば、何人かが海へと落ちていく。
そろそろ本気出す!
またあの時に見たいに竜巻を起こしてみた。だけど小さいやつ。それでも威力は馬鹿にできねェ。


「舞い散りな」


小さな竜巻をたくさん作り、敵に向ければ見事に空へと舞っていく。
空に出れば人は無力だ。
ただ落ちてくるだけの奴らを一人一人確実に殺していった。
……やっぱ気持ちわりィや。
見たくないから背中を向け、船から飛び立つ。思ったよりすぐ終わったな。


「今回は早かったな」
「おう!金くれ」
「それしか言えねェのかお前ェは。―――マルコ」
「大事に使えよい」
「当たり前だ!って、これだけかよ!」
「十分だろい?」


ニヤッと笑うパイナップル。
俺の手に握らされたお金は、百万ベリー…!
確かになんぼやる。って言われたわけじゃねェ…。だけどこれじゃあ何日経っても船が買えねェよ…!


「オヤジィ!」
「欲しけりゃぁもっと海賊を潰せ。海軍でもいいぞ」
「くっそォ!いいか!敵船が見えたら俺を呼べ!海軍もだ!全部俺が潰してやるからな!」

「グララ、この調子であのバカにどんどんやらせろ」
「オヤジもずりィな。普通に命令すりゃあいいだけだろ?」
「アイツが素直に聞くわけねェ。それに見てて楽しいだろうが」
「可哀想に…」
「こりゃあいい!当分楽ができるな!よっしゃ、久しぶりに新しい料理でも考えるか!」
「久しぶりにゆっくり新聞が読めるよい」
「俺昼寝しよ〜」
「銃の手入れしとくか」
「俺は剣の手入れだな」
「……名前、可哀想な奴だな」
「なんか言ったか、エース」
「いや、頑張れよ」
「おう!ところでいくらぐらいした?」
「忘れた。五千万あれば上等だろ」
「マジでか!」


金が貯まるのはいつになることやら。

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