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あいつに全てを奪われた!

!一発オリキャラいます!





「初めまして、サウジャロです。宜しくお願い致します」


柔らかい笑顔、柔らかいオーラ、柔らかい物腰。
新しく入団した男は、海賊というよりそこらへんいる優男だった。
年齢はエースより年上で、イゾウと同じぐらいだと言う。
彼が入団したその日も勿論甲板、白ひげの前で宴会が始まり、笑い声が絶えることがなかった。


「マルコさん。俺もサウジャロさんとお話したいです」


宴会の途中、ジュース片手にマルコにおねだりをする名前に、マルコは眉をしかめた。
新入りが入るたびいい思い出がない。だから今回も挨拶すらさせないでいた。
だけど好奇心旺盛な名前は新入りが気になって仕方ない様子。
キラキラした目に「やだよい」なんて言えるはずもなく、一度目を反らして「少しだけな」と腰をあげて新入りの元へと一緒に向かった。


「おい」


新入りのサウジャロは宴会の中心でお酒を飲んでいた。
見た目に反して酒豪らしく、サウジャロの周りには酒に潰された仲間達が横たわっていた。


「はい?……えっと、一番隊長のマルコさんでしょうか?」
「おう」
「と、こちらのお嬢さんは?」
「俺のこと女だって解るんですか!?」
「こんな素敵な女性を男と間違えるほうがおかしいでしょう?」


ニコリと微笑むサウジャロに、周囲の空気は凍りついた。
せっかく楽しく飲んでいたというのに、今の発言でマルコを少しだけ怒らせてしまったのだ。
それなのに元凶であるサウジャロは名前の手をとり、「初めまして」と紳士的に挨拶をしている。
最初、名前は驚いていたが、サウジャロの纏う柔らかいオーラにすぐに心を許し、慌てて頭を下げて挨拶をした。


「名前さんですね。覚えておきます」
「はい!俺も覚えました!」
「名前、挨拶はすんだんだ。行くよい」


花を飛ばして笑い合う二人の間に割って入るのは心の狭い保護者。
強制的に名前を連れて帰り、できるだけサウジャロから離れた場所でまた腰を下ろす。


「いいか、あんまあいつに近づくなよい」
「何でですか?」
「新入りは覚えることがあるから邪魔するなってことだい」
「解りました!」


そう元気よく返事をしたというのに、


「おはようございます、サウジャロさん!」
「おはようございます、名前さん」


名前はすっかりサウジャロに懐いてしまった。
最近ではマルコ達よりサウジャロと一緒にいることが増えてしまった。
それと同時に、マルコ達の額に青筋も増えていっている。
ピリピリと緊迫した空気が甲板に流れ、最近いい雰囲気じゃないモビー・ディック号。
そこへ本を持った名前がやって来た。本を持っているということは「マルコさん、本読んで下さい!」と言われるに違いない。
しかし名前はマルコの元へは向かわず、サウジャロの元へと駆け寄って行った。


「サウジャロさん!本読んで下さいっ」
「構いませんよ」


二人の会話に、また甲板の温度が何度も下がったのだった。


「おいイゾウ、あの新入りどうにかしろよい」
「テメェがしろよ。今の俺ァ手加減できねェぞ…」
「俺も無理だい。サッチ、殺ってこい」
「おい落ちつけよお前ら…。ほら、エースも止めろって」
「サッチ、人間ってどれぐらいの温度で焼けば跡形もなくなるんだろうな」
「遠い目で恐ろしいこと言うなよ!」
「でも寂しいよなァ…」


このままだと名前の中にある自分達のポジションが取られてしまうので、どうしようかと作戦を立てる。
サウジャロを殺す。という案が真っ先に出たが、「名前に嫌われるぞ」というサッチの発言に、マルコ、エース、イゾウの三人は静かに口を閉じた。


「とりあえずよォ、名前はサウジャロのことが好きなのか気になるよなァ…」


ハルタの言葉に保護者二人の動きが止まった。
サウジャロが名前を好きというなら、全力で邪魔する。そして戦意(?)を喪失させて、二度と近づけないようしてやる。
しかし、名前がサウジャロのことを好きというなら話は変わってくる。
可愛い妹の初めての恋…。応援してあげたい気もするが、見届けたくない…!
拳を握り、静かに何かと葛藤するマルコとイゾウ。
反対にエースとハルタは「兄ちゃんは許さねェぞー!」「そうだそうだー!」とうるさい。
(最近)常識人なサッチは苦笑しながら四人それぞれの反応を見て楽しんでいたが、名前がサウジャロとくっついてほしいとは微塵も思っていなかった。
チラリと名前とサウジャロを見ると、マルコが名前に新聞を読ませている恰好(ラッコ抱き)で本を読んであげていた。
時々名前が振り返って、何かを質問している。サウジャロはそれに笑顔で答え、頭を撫でてあげる姿がなんとも幸せそう。


「とんだロリコンを入団させちまったよい…!」
「テメェが言うか」


それを見ていたマルコの言葉に、冷静に突っ込みをいれるサッチ。


「マジあいつ許せねェ!行くぞハルタ!」
「おー!」


特攻隊長であるエースとハルタが腰をあげ、二人の元へと向かう。
名前の腕を掴み、乱暴に引き離すエース。
名前は怒っていたが、ハルタに連れられマルコ達の元に置かれ、ハルタはエースの隣に戻って行った。
意味の解らない二人の行動に、名前もサウジャロも最初は戸惑っていたが、サウジャロはすぐに笑顔で「すみません」と謝罪。
しかし名前は気に食わない様子で二人の文句を言っていた。


「もうっ、せっかくいいところだったのに…!二人とも酷いです」
「ねえ名前ちゃん」
「はい?」
「最近サウジャロと仲がいいみたいだけど…。なんか聞きたいことがあるの?」


イゾウが遠まわしに探(さぐ)りをいれようと質問すると、怒りを一旦忘れ、腕を組んで小さく唸る。


「俺でよかったら答えるけど?」
「えーっと、聞きたいことはありません」
「じゃあ何であいつにベッタリなんだ?正直見てらんねェんだよ」


過保護者二人を。と付け加えるよう二人を見るサッチ。
すると名前は今まで見せたことのないような笑顔を浮かべ、身体をもじもじさせる。


「サウジャロさんといると心が温かくなるんです」


なんの!俺といたら身も温まるよい!(但し不死鳥に変身中に限る)
と発言しそうだったマルコの頭をイゾウが叩いた。
しかし、名前の発言にいい気はしないイゾウ。


「そう」


素っ気なく答え、それ以上は喋らなかった。
疑問を抱く名前に、サッチは笑いながら名前に話しかけた。


「それってマルコとは違うのか?」
「マルコさんと?うーん…。なんて言ったらいいのか…。ともかく、サウジャロさんと一緒にいると幸せな気分になるんです。勿論マルコさんもイゾウさんも、サッチさんも好きですけど、サウジャロさんの隣は温かいです!」


ニッコリと真っ白な笑顔を向けられ、言葉を失ってしまった父親と母親。もう砂になるしかないようだ。


「(惨(むご)いことを…)それはサウジャロが好きってことでいいのか?」
「好きですよ?」
「あー、そうだったな。その好きじゃなくて、男としてってことだ」
「え!?あ、…その、男性としてでしたか…!それは…、ちょっと…。よく解りませんけど、それとは違う感じがします」


頬をほんのり赤く染め、サウジャロ達を見る。
エースがまだ怒っていたが、さすが大人の男。適当に流していた。ハルタはそろそろ飽きていて、欠伸をしている。


「多分……」
「多分?」
「サウジャロさん、お父さんに似てるからだと思います」


顔がそっくりなんです。と呟く名前に、ようやく意識を取り戻したマルコとイゾウ。


「全部じゃないんですけど、雰囲気とかもそっくりで…。だからついつい」


笑う名前の目じりには小さく光る涙。
こぼれ落ちそうな瞬間、顔を背けて立ち上がる。向かう先はサウジャロ。


「あー…これじゃあ何にも言えねェな」


サッチの言葉に「仕方ない」と言ったオーラが漂うが、名前がサウジャロに抱きつくシーンを見て、また最初に戻るのだった。







おまけ。



「ま、恋じゃなかったんだから安心しろよ!」
「でも気に食わねェ!」
「俺も気に食わねー!」
「ハッ、ガキだなテメェら」
「全くだよい」
「そういうマルコだって内心怒ってるくせに!」
「そうだぞォ!それに、サウジャロが名前の父親に似てんなら、マルコもういらねェじゃーん!」
「……父親ポジションとられた!?」
「もういいよ、それは。それとイゾウ、笑ってるけどお前にも当てはまってんぞ。いい加減卒業しようぜ、過保護」


マルコとイゾウの受難はまだ続く。…のか?




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