「もっとうまいつまみが食いてェなァ…」 オヤジ殿のその言葉に、私とサッチさんは立ち上がりました。 大好きなオヤジ殿のため、なんとかして美味しいおつまみを作りたい! 二人で手を合わせ、停泊していた島に降り立つ。 早歩きでお店が賑わう通りに向かい、色々な食材を手にとって頭を捻る。 「サッチさん、お酒に合うつまみってどんなのですか?」 「俺はチーズとか好きだしなァ…。オヤジは何でも食うぞ」 「じゃあチョコは?」 「お前じゃああるまいねェよ」 「いたっ」 チョップを食らい、また探す。 お酒飲んだことないから解んないや…。あ、何度かあるか。美味しくはないよね…。舌が痛かった。 「悩みますね…」 「ま、オヤジのことだ。うまいつまみより、うまい酒をよこせって言うだろ!」 笑いながら手に取ったのは、野菜や果物などの身体の健康を考えた食材ばかり。 サッチさんもオヤジ殿こと好きだもんね。もちろん俺もオヤジ殿好き! たくさんの食材を買って、二人で半分にして持つ。 重たいけど、文句は言わない。サッチさんのほうがたくさん持ってくれてるからね! 「はー…。こうやって隣を歩いてくれるのがお前じゃなきゃなァ…」 「えー!何ですかそれ!俺のこと嫌いなんですか?」 「嫌いじゃねェよ。だけど俺は綺麗なお姉さんと一緒に歩きたい!」 人を避けながら港を戻る途中、サッチさんは私を見て溜息をはく。 また綺麗な女の人の話かー…。サッチさん二言目にはそれだよね。 「でもちょっと寂しいです、それ」 「お、出た名前の独占欲」 「なんなんですかもう!」 「アハハ!悪い悪い。怒んなって」 そこで一度会話が終わり、荷物を持ち直して「名前」と名前を呼ばれた。 ちょっと不貞腐れながらサッチさんを見ると、楽しそうに笑っている。 「俺は綺麗なお姉さんとしか歩かねェ」 「知ってますよ。俺が隣を歩いてすみませんでした!」 「お前さ、もっと言葉を汲み取れよ」 「え?」 「俺は名前が将来綺麗な女になると思ってる。だから特別に俺の隣を歩かせてやってる。解るか?」 「……」 サッチさんの言葉を理解すると同時に、頭から煙があがった気がした。 頬が熱く、手で熱を冷ましたいのに、両手が塞がってるから無理! 「…っ歩かせてやってるって言い方イヤです!」 「(お、女らしい顔になりやがった)ワガママだなー…」 「ワガママじゃないもん!」 ち、違う…。こんなことを言いたいんじゃなくて。でも、なんて言ったらいいか解らないからこんな言葉しか言えない…! 「じゃあ名前約束しよう」 「約束…?」 「将来、名前がもっといい女になったら俺とデートしよう。そのときは俺に付き合ってくれ」 珍しく真面目なサッチさん。 だけど恥ずかしくなってすぐに顔を反らす。 心臓もうるさい。顔も熱い。恥ずかしい! 「さ、サッチさんのそういう顔ずるいです!」 「そりゃあいい女を落とす為にゃあずる賢くもなるでしょ」 「あー!もう喋らないで下さい!何も聞きたくない!」 「この照れ屋め」 「サッチさんのバーカ!マルコさんに蹴られちゃえ!」 「ちょ、お前そういうこと言うなよ!大体その通りになっちゃうんだから!」 真っ赤になって船に戻るとマルコさんが迎えてくれたので、恥ずかしい台詞や場面は言わずに今さっきのことを報告すると、笑顔でサッチさんを部屋へと連れて行きました。 「(でも…。嫌い、じゃなかったな…)」 しばらくの間、サッチさんの顔をまともに見られませんでした。 [*前へ][次へ#] |