「……か、可愛いっ…!」 目の前には青い鳥、不死鳥になったマルコさん。 だけどサイズは違った。手のひらに乗るぐらいの大きさで、「よいよい」と鳴いている。 マルコさんが子供になった!と最初は驚いていたけど、鳴きながら甘えてくる小さいマルコさんに私の心がキュンとなった。 「どうかしたんですか?」 「よい」 「あれ?言葉も喋れなくなったんですか?」 「よいよい」 「んー…」 手に乗せ、話しかけるも、マルコさんは一向に喋ってくれない。 ……鳥になっちゃった、とか? 「人間に戻れますか?」 「よい」 「よい?……返事としてとっていいのかな?」 「よい」 「…鳴き声、なんだ」 パタパタと小さな翼を羽ばたかせ、私に甘えてくるマルコさん。 違う、これマルコさんじゃない!これはただの青い鳥だ!可愛い、可愛すぎる! 潰さないよう抱きしめて、何度も「可愛い可愛い」と褒めると、青い鳥も嬉しそうに鳴いてくれた。 「よーい」 「…あれ?もう一匹いる…」 ベットの端からもう一つの鳴き声。 すると同じ姿、形をした青い鳥がいた!鳴き方は違うけど、姿が一緒で少し驚く。 「あ、こっちにもいる!うわっ、なんか落ちてきた!」 私の周りにはたくさんの青い鳥! 甘えてくる青い鳥、擦り寄ってくる青い鳥、頭の上で寝る青い鳥、部屋を飛び回ってる青い鳥、ケンカしている青い鳥…。 ともかくたくさんの青い鳥でベットはいっぱい! どうしよう、私すっごく幸せだ!マルコさんに囲まれて凄く幸せだ! ……もしかしてこれは夢なんじゃないかな? 「―――夢だった…!」 青い鳥に囲まれて幸せだったのに、目が覚めてしまった。 周囲を見ても青い鳥はもちろんおらず、ガックリと肩を落とす…。 「ヒナばっかで可愛かったのに…」 まだ夢を見ていたいから、急いでベットから飛び起き、甲板へ向かう。 そこには相変わらず朝早く起きているマルコさんと、不寝番だったエースさんと、珍しく早起きをしたサッチさんの三人がいた。 「おはようございます!」 私が声をかけると、三人は驚いた様子で私を振り返る。 何かを背中に隠していたけど、私は気にせずマルコさんに抱きつく。 「あ、名前何してんだよ!俺にも飛びついてこいよ!」 「エース、黙ってろい。どうした名前?怖い夢でも見たのかい?」 「甘えて下さい!」 「「「は?」」」 「甘えてくるマルコさんすっごい可愛かったです!だからチューしたら「よいよい」って喜んでくれて、何度も何度もしちゃいました!ギューってしたいけど、マルコさんまだ小さいから…。でもそんなマルコさんも可愛かったです!」 「……マルコ、お前…!とうとうロリコンになっちまったのか!」 「名前!お前いつからマルコとそんなことしたんだよ!」 「マルコさんいっぱいで俺嬉しかったです!もっとマルコさんが欲しい!」 「名前がマルコによって汚されてしまった…!もっと欲しいなんて台詞、名前ちゃんの口から聞きたくなかった!」 「マルコォ!テメェどういうことだよ!マジ燃やすぞ!」 「名前、俺はお前と寝た覚えはねェよい…?」 「違うんです。起きたらいっぱいで…。えっと、もふもふだったんです!」 「頼むからちゃんと喋ってくれ」 「甘えるマルコさん可愛いです!」 「俺は甘えるより甘えてもらうほうが好きだ」 「名前、そのおっさんから離れろ!危険だ!」 エースさんによって引き離され、背中に隠されてしまった。 ああ、もう一度でいいからマルコさんに囲まれて、もふもふしたいなー…。変身してくれないかなー…。 「名前、お前マルコと寝たのか?」 「起きたらいたんで驚きました」 「あンのクソジジィ…!」 「「よいよい」しか言わないマルコさん可愛いですよねー!」 「それ酔ったときのマルコの台詞じゃねェか!酔っぱらったまま名前を夜這いしたのか!見損なったぞマルコ!」 「昨日はテメェが寝ないよう一緒に不寝番しただろい」 「……あ、そっか」 「なァ名前。ちょっと落ちつけ。お前何を話してんだ?」 サッチさんが眉をしかめて聞いてきたので、丁寧に最初から説明しました。 思いだしただけでも口元が緩んでしまう! 「名前、それって夢か?」 「あ、はい。夢です」 サッチさんの言葉に頷くと、エースさんにこめかみをグリグリされ、怒られました。何で!? 「毎度毎度紛らわしいんだよテメェは!」 「だって小さいマルコさんがいっぱいで…!ちょっとしたヒナ祭りだったんですよ!?嬉しいに決まってるじゃないですか!」 「名前ちゃん言い方!言い方の問題だから!」 エースさんの攻撃から逃げ、マルコさんの背中に逃げると、マルコさんはエースさんを睨んでいた。 「名前、そんな夢見なくても、俺に言えよい。いつでも変身してやるから」 「はい!でも小さいマルコさんも可愛かったんですよ!」 「それはもう解ったから…。あんま皆に言いまわるなよい」 「えー…」 「特にイゾウが聞いたら怒るだろうな!」 「たまにはイゾウに怒られればいいんだ」 「なんか言ったかい、エース」 「うわっ!覇気と一緒に睨んでくんなよ!」 逃げ出すエースさんをマルコさんが追いかける。 最初は必死になって逃げてたエースさんだけど、次第に笑顔になってその状況を楽しんでいた。 「名前、ちょっと時間いいか?」 「え?」 「お前の言うヒナ祭りとは違うが、今日はその雛祭りなんだ」 そう言ってニヤリと笑うサッチさん。 手を引かれ、そのまま食堂に連れて行かれるとたくさんの仲間が私を迎えてくれた。 イゾウさんに雛祭りの意味を教えてもらい、皆と一緒にその日は楽しく過ごしました。 女の子の日万歳! ▼ おまけ。 「雛祭りなんだから、雛人形は必要だ。だからってマジで買うなよ!」 「何言ってんだい、サッチ。雛人形は名前の身代わりとなり、事故や病気から守ってくれるんだよい」 「百歩譲ってそれは許す!だけどいい加減おさめようぜ!」 「知ってるかい、サッチ」 「ああ!?」 「雛人形の片付けが遅れると、嫁に行くのが遅くなる。らしい」 「お前…」 「当分の間飾っとくから触んなよい」 「お前ッ…!」 「それに、名前が嬉しそうに眺めてんだからいいだろい。ほら、さっさと仕事に戻れよい」 「このロリコン保護者が!」 [*前へ][次へ#] |