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もはやただのバカです

「マルコさん、お願いがあります!」


これでもか!ってぐらい目をキラキラさせ、身長の高いマルコを見上げるのは白ひげ海賊団の末っ子、名前。
もちろん名前バカで超過保護なマルコが名前の願いを聞かないわけがなく、視線を合わせるよう屈み、名前だけに向ける優しい笑顔を浮かべ「どうした?」と聞いてあげた。


「あのね、青い鳥さんになってほしいんです!」
「…またどうしていきなり」
「俺ね、あの青い鳥さん好きなんです!綺麗だし、大きいし、マルコさんだし!」


最後の「マルコさんだし」の語尾にはとびっきりの笑顔をつける。
それだけで「名前は嫁にやらん」と決意が一層強まる親バカマルコ。
無言で名前の頭を撫でつつ、背中から青い鳥、不死鳥へと変化すると、名前はさらに目を輝かせた。


「久しぶりに見ました!綺麗!可愛い!」


名前の目の前には大きな青い鳥。
青い炎をまとっているものの、熱くはない。
顔は絶対に可愛いとは言えない。寧ろふてぶてしい顔なのだが、名前にとったら可愛い生き物らしい。
すぐに抱きつき楽しそうに頬を擦りよせると、マルコの周りにも花が咲いた。


「可愛い!マルコさん可愛い!」
「それは……複雑だよい…」


いくら不死鳥になったからとは言え、いい歳した自分に「可愛い」と言われるのは複雑な心境らしい。
それでも名前が喜んでくれるなら、とマルコは動くことなく名前の好きなようにさせていた。


「お前ら何してんだァ?」
「名前ちゃん、そんな不細工な鳥に抱きついても楽しくないでしょ?」


そこへやって来たのはマルコと同じ過保護者のイゾウといいお兄ちゃんハルタ。
マルコに抱きついていた名前をイゾウが引き離すと、マルコは人間へと戻って軽くイゾウを睨みつける。
名前は背中を向け、イゾウを見ていたので気づいていなかったが、ハルタが気まずそうな声をもらし、その場から逃げようとする。
しかし、名前がいるから逃げだそうにも逃げ出せれない。なんたって彼は名前のいいお兄ちゃんなのだから。


「イゾウさん!マルコさん可愛いんですよ!」
「不細工だよ」
「お、おいイゾー…。あんまりそういうことは「イゾウがどう思おうが関係ねェが、邪魔はすんじゃねェよい」
「邪魔?ああ、動物を愛でたんだよね、ごめんね名前ちゃん。それよりワ菓子を作ったんだけど一緒に食べない?勿論、人間同士でね」


一触即発の空気が流れ、それを肌で読みとったハルタは正直離れたい気持ちでいっぱい。
しかし、名前だけは気づいていない。なんたって隊長二人がその殺気を名前に当てないよう気をつけているから。
いくらケンカしようが、名前のことになると意見は合致するらしい。


「名前、一緒に昼寝でもしねェかい?」
「マルコさんとですか!?もちろんですっ、したいです!」
「今日だけは特別だよい」


そう言ってまた不死鳥へと変身し、青い翼を広げて名前を自分の元へと誘(いざな)う。
マルコに甘えることができるし、モフモフすることもできるし、とにかく幸せな気分の名前はマルコにベッタリ。
一度名前を見て、そのあとイゾウに視線を持っていき、「勝った」と言わんばかりに笑う、性格の悪いマルコ。
イラッ!どころではなく、殺意を抱いたイゾウは銃を構えるも、名前がいるので撃つことはできない。


「マルコさん気持ちいー!」
「そりゃあよかったよい。名前が望むならいつでもなってやるから」
「ほんとですか?じゃ、じゃあ明日も一緒にお昼寝して下さい?!」
「ああ、勿論だよい」


イチャイチャしながらイゾウとハルタから離れる二人。
残されたイゾウは怒りのあまり手が震え、この怒りをどう鎮めようかとひたすらマルコの背中を睨みつけていた。


「ハルタァ…」
「ど、どうしたァ…?言っとくが、仲間殺しはタブーだぞォ…?」
「あいつは死なねェから大丈夫だろ。だから……いいよな?」


ニコリと笑って銃を構える。
「あ、こいつガチだ」と悟ったハルタは、必死になってイゾウを止めるのだった。




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