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全てがゲームとなる

「ハルタさんの隊とジョズさんの隊とビスタさんの隊と俺が鬼で、他の隊が豆を撒くんですね」
「おーし、全力で逃げるぞォ!」
「名前、危ないから投げる側にいったほうがよくないか?」
「大丈夫ですよ、ビスタさん!俺だって逃げるの上手なんですよ」
「逃げる特訓だと思えばいいだろー?いいから始めようぜェ!」


今日はセツブンという日らしいです。
イゾウさんの国ではこの日に豆を撒くんだって。
詳しく説明してくれたけど、俺とハルタさんとエースさんには難しく、とにかく「鬼は外、福は内」と言いながら撒くとのこと。
ただ撒くだけでは楽しくないので、鬼役を決めることになった。
隊長十六人がじゃんけんをし、負けた三人、ハルタさんとジョズさんとビスタさんが鬼役。
隊長が鬼役ということで、隊員も鬼役となって投げる豆から逃げることになった。


「名前、危ないからこっちにしろい」
「でも鬼役がたくさんいたほうが楽しくないですか?それに俺、皆に向かって豆投げれませんし…」


マルコさんが心配してくれるのは嬉しいけど、別に大したことじゃない気がする。
だって豆投げられるだけなんでしょ?
痛くないし、逃げ回るのって結構面白いと思う。
準備運動をするハルタさんもワクワクした様子で、ジョズさんとビスタさんも気合いをいれていた。
ビスタさんに限っては剣まで準備していた。


「……剣?」


あれ、豆まきに剣って必要なの?


「よーし、やるぞ!」


エースさんの掛け声とともに、モビー・ディック号の上で豆まきが始まった。
一斉に投げてくる豆は思った以上に大量で、驚いた。まるで雨だ…!


「うわわ!」
「名前ー、早く逃げろよー!」
「痛い!え、何で!?」


それに豆の上を歩くのってなんか変な感じ。
うまく走れない私を狙って容赦なく、満面の笑みで豆を投げ付けてくるエースさんとサッチさん。
ひいい、あの二人はいつでも本気だよ!


「テメェエース!名前ちゃんに向かって投げてんじゃねェよ!」
「何言ってんだよイゾウ!豆まきなんだから鬼に投げねェと意味ねェだろ!」
「それでもテメェとサッチだけは許さねェ!」
「いてて!ちょ、イゾウさん!?俺らの隊は鬼じゃねェぞ!?」
「問題無用!」


追いかけてくるエースさんとサッチさんから逃げていると、イゾウさんが助けにきてくれた。
鬼じゃない二人に向かって凶器と化した豆を投げ付けるイゾウさん…。さ、さすがだ。


「あ、鬼見つけた!」
「バレた!」


仲間達から逃げ回り、疲れたときはお酒を飲みながら遊んでいる皆を見守っているオヤジ殿の後ろに避難する。
オヤジ殿は参加しないらしい。見てるだけで十分楽しいんだって。
お姉ちゃん達は普通に貰った豆を食べていた。健康食らしいです。


「名前、鬼がいつまでもここにいたらダメだ。行ってこい」
「で、でも皆容赦なくて…。それに痛い…」
「ガキは走りまわれ。この時期にしかできねェことだぞ」
「……解りました、頑張ってきます!」


そうだよね。今日しかこんなことできないもんね…!
オヤジ殿から離れ、ほぼ戦場と化した甲板に戻ると、やっぱり皆に追いかけ回される。
皆楽しいそうだ。楽しそうだけど力こめて投げるのは止めて!結構痛いんだよ!


「うわ!」


必死になって逃げていたら、マルコさんとぶつかった。
マルコさんの手にはまだ豆が残っていて、私を見るなりホッとした顔を見せる。


「探してたよい。ほら、鬼役は止めて投げな」
「それはダメです。…な、投げたいけど鬼役になりたいって言ったの俺だし…」


豆まきだって舐めていたら痛い目に合ってしまった。
だけど途中で止めるのはダメな気がする。
豆を渡してくるマルコさんに丁寧に断ると、「そうかい」と手を引っ込めた。


「マルコさんは投げないんですか?」
「投げて喜ぶ歳でもねェよい」
「でも投げないとダメなんですよ!ほら、投げて下さい!」
「名前にかい?」
「どんとこいです!」


さあ!と手を広げると、困ったように黙って頭をかいた。
でも私鬼だし。何度もしつこく言うと、豆を握って私に投げようとした。


「っ!」
「……。ほら」
「あれ?」


痛いと思ったから目を瞑ったのに、全く痛くなかった。
マルコさんは私の身体にポイッと軽く投げただけで、すぐに豆を手渡した。


「今度は名前が投げる役で、俺が鬼な」
「でも…」
「いいから。投げたいんだろい?今日しかできねェよい?」
「……」


そう言われると断れない。今日しかできないもんね!
私も何粒か豆を握り、マルコさんに投げつけようとする。
マルコさんも私がしたように手を広げ、「さあ投げてこい」といった感じで笑っている。
だけど投げれない。なんか…マルコさんには投げれないよ…!


「え、えっと…」
「投げないのかい?」
「痛くないですか?」
「強く投げられたら痛いよい」
「じゃあ…。えいっ」


マルコさんが私に投げたよう、ポイッとマルコさんのお腹に向かって投げる。


「それじゃあ豆まきになんねェだろい」
「マルコさんだって…」
「名前が怖がってたからな」
「ビ、ビックリしただけです。俺強いから怖くないもん!」
「そうかい。じゃあ本気で投げていいかい?」
「……痛いですか?」
「多分」
「…い、イヤです…」
「強いんじゃなかったのかい?」
「お、…う、…ッ!」
「ハハッ」


何も言え返せないでいると、笑って頭を撫でてくれた。
勝てないなァ、マルコさんには…。


「じゃあエースとサッチに投げつけてくるか」
「あ、エースさんとサッチさんにだったら投げられます!」
「日頃の恨みをぶつけてやれ。協力するよい」
「お願いします!」


その美は豆が粉々になるまで遊びました。
……あれ、セツブンって豆で遊ぶ日なのかな?ま、いっか!

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