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どっちが親バカ?それとも?

「名前ちゃん好きだよ」
「俺もイゾウさん大好きです!」
「相思相愛だね。嬉しいな」
「はい、俺も嬉しいです!」
「名前ちゃん、愛してるよ」
「俺も愛してますよー!」
「いい加減にしろい!」


今日は水と間違えてお酒を飲んでしまった名前。
途中で吐き出したため、完全に酔っぱらっていないが、頬は紅潮し、いつも以上に隊長達に甘えている。
本日ベッタリなのはイゾウさん。
胡坐(あぐら)をかいた上に腰を下ろし、ジュースを持ったままニコニコと笑っている名前に、イゾウは本気なのか本気じゃないのか解らない口調で名前を口説いていた。
勿論名前バカであるマルコがそれを許すはずもなく、何もしないよう鋭い目で見張っていたのだが、先ほどからラブラブオーラが半端なく、限界を迎えたマルコが二人を引き離した。


「おい何しやがるパイナップル。俺と名前ちゃんの時間を邪魔すんじゃねェ」
「頭痛いです…。うえっ、気持ち悪い…」
「あんなもん見せられたら酒が不味くなるって言ってんだい!名前、大丈夫かい?」
「嫉妬か?心の狭ェオッサンは嫌われるぜ?」
「気持ち悪い、のに…頭痛い…」
「テメェに嫉妬するほど名前に飢えちゃいねェよい。今日だって一緒に昼寝したんだい!名前、気持ち悪いから頭痛いんだよい。部屋帰るかい?」
「たかが昼寝じゃねェか。名前ちゃん、今日は俺の部屋で一緒に寝る?」
「寝るーっ!」
「名前!頭痛いんじゃなかったのかい!?」
「イゾウさん好きー!」


先ほどまで頭が痛いと静かにしていた名前だったが、イゾウの言葉に復活し、またイゾウに抱きついて甘える。
いきなりだったが倒れるなんて無様な真似はしないイゾウは名前を抱きしめ、マルコを見てニヤリと笑う。
「あんの男女が…!」と怒るマルコだが、名前が抱きついているから手出しができない。
正直名前をイゾウに取られて悔しいマルコ。
睨みつけるマルコと、余裕の笑みを浮かべる二人の間に火花が散った。


「俺思うんだけどよ…」
「んー?」
「あいつらって名前の何になりたいのかわかんね」


黙って見ていたサッチが、隣にいたエースに呟く。
エースも参加することなく傍観していたが、サッチの言葉に笑って答える。


「じゃあさ、サッチは名前の何になりたいんだ?」
「は?」


エースの不意打ちの質問に持っていた酒入りグラスを落としそうになった。


「名前の何って…。そりゃあいい女に育ってくれたら嬉しいな」
「サッチはそればっかだな」
「まァな!可愛いけどガキには興味ねェよ。逆に聞くが、エースはどうなんだ?」
「俺か?俺は…別に……」
「おやァ?エースくん、若干頬が赤くなってませんか?」
「うるせェな!酔ってんだよ!」
「どうだか。ほら言えよ。今なら保護者も聞いてねェし」
「……」


コップに口をつけ、チビチビと飲みながら名前をジッと見つめる。
好きか嫌いかと言えば名前は好きで、これからもずっと一緒にいたいと素直に思う。
だけど胸の奥で何かが引っかかる。それが何なのか解らず、黙っていると、サッチが笑いながら背中を叩いてきた。


「何すんだよ」
「お前もガキだってことだ!」
「アァ!?なんだよそれ!」
「いいからいいから。とりあえず明日から名前を虐めるの止めてやれよな」
「……あいつの困った顔面白ェんだもん」
「根っからのSか」


その一方で保護者による名前の争奪戦が始まっていた。
酷い罵りから、はたまた相手の性癖まで。
名前に聞かせてはいけないことまで大声で言い争っているが、当人達は熱くなっていて気づいていない。
運がいいことに名前はイゾウの膝の上で寝ている。


「仕方ねェ…。名前ちゃんにどっちが好きか聞くしかねェな…」
「自分を選ばなかったからと言って怒るなよい」
「それはこっちの台詞だ。名前ちゃん―――って、寝ちゃってる」
「酒に弱ェからな…」
「寝顔も可愛いな」
「ああ、可愛い」


名前のことになると意見が一致する親バカ二人組。
すぐにデレ顔になったが、どっちがどっちの部屋に連れていくかまた口論が始まった。


「名前って罪な女だよな。将来どんな風になんのか楽しみだ」
「確実に嫁にいけねェな」
「確かに」


夜遅くまで続いた口論の結果、甲板の上で名前を挟んで寝てしまったのだった。


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あきゅろす。
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