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お子様二人によるビックリ大作戦!(中編)

モビー・ディック号はまた新しい島へと到着した。
前回言われた通り、二番隊と四番隊は買い出しへと向かい、名前の遊び相手はいなくなる。
いつもうるさい二人に邪魔され、ゆっくり名前と街で過ごしたことのない一番隊隊長、マルコは上機嫌な様子だった。
毎度島につくと嬉しそうに船を降りる名前を梯子(はしご)近くで待っていると、ハルタと一緒にやって来た。
別に珍しい光景ではないが、いい気はしない心の狭い(大人気ないとも言う)マルコ。


「名前、一緒に「マルコさん、遊びに行ってきまーす!」
「マルコォ、俺ら当分帰ってこねェからー」
「……ハァ!?お、おいハルタ、名前。どういうことだい。つーかハルタ、お前は船番だろい!」
「行っくぞォ、名前ー!」
「はーい!」


マルコが二人を止める前に、ハルタが名前を抱え船から飛び降りた。
追いかけて問い詰めることができたにも関わらず、帰ってこない。と言うハルタの言葉にマルコの思考は停止して、当分の間動けなかった。

船を抜け出したハルタと名前は、周囲を気にしながら人混みに紛れて行く。
たくさんの人で何度かはぐれそうになったが、ハルタは絶対に名前との手を離さなかった。
名前もしっかりと握りしめ、何度も「ハルタさん」と名前を呼んでそこにいることを確認する。


「ここまで来れば大丈夫だろー」
「誰もつけて来てませんよね?」
「んー…。そうだなァ、誰もいないぞー」
「よかった…。じゃあ、行きましょうか!」


ニカッ!と笑いあう二人はとあるお店を探しながら街中を進み続ける。
途中、見知った仲間達と遭遇しそうになったが、バレることなくお目当ての店を見つけることができた。


「そう言えば名前、ちゃんとお金持ってきたかー?」
「はい。この間仕事して貰いました!ばっちりです」
「よーし!」


また周囲を気にし、二人はお店の中へ入って行った。


「―――見たか?」
「見た…」


その様子を見ていたのが、買い出し組のエースとサッチ。
周囲を気にしている二人に悟られないよう気配を消し、物陰からこっそり覗いていたのだ。


「ハルタと二人で出るなんて珍しいよな…。つーかあの口うるせェおっさんはどうしたんだ?」
「一番隊は自由行動だから絶対名前と遊びに来ると思ったんだけどな」
「まー、マルコはいい。問題はハルタだ」


二人がお店から出てくるまで、サッチとエースは物陰に身を潜めながら会議を始める。

ハルタと名前は基本的に仲がいい。
歳が近いのもあるが、マルコ達みたいに過保護すぎでなければ、サッチみたいに厳しくもない。
普通に優しい兄で、名前はハルタに懐いている。
しかし、ハルタと名前が二人っきりで街に出ることは絶対にない。
ハルタは基本的に単独行動を好むし、自由に動きたい。
名前は強制的にエースやサッチに連れ回されるか、マルコやイゾウ達と一緒に買い出しに出かけたりする。
その二人が初めて街へ遊びに来た。気になって仕方のないエースとサッチは買い出しを中断し、二人のあとを追いかけることにしたのだった。


「サッチ、二人とも出て来たぞ!」
「よし、つけるぞ!」


今日の遊び道具を見つけた二人は目を光らせる。
名前は大きな紙袋を持っていて、ハルタは周囲を気にしている。
すぐに気配を消し、バレないよう姿を消す。


「ところであの二人なんの店に入ってたんだ?」
「こっからじゃ見えねェ…。あ!」


エースがなんのお店か見ようとすると、ハルタが鋭い視線をこちらに向けた。
彼だって若くして隊長をしているわけではない。
すぐに名前を担ぎ、その場から離れた。


「ッチ!行くぞ、エース!」
「おうよ!」


せっかく遊び道具を見つけたのに、ここで逃がしてなるものか!
意気揚々と駆けだす二人だったが、空を飛ぶように走るハルタには追い付くことができず、その日は二人の姿を見つけることができなかった。


「あの気配はきっとエースとサッチだなー」
「ば、バレましたかね…?」
「ん〜…。バレてねェと思うぞォ」
「バレたら意味がありませんもんね…」


二人を撒くことに成功したハルタは、お店の屋根の上で名前を降ろした。
突然のことに驚いた名前だったが、今はこっちのほうが大事。
紙袋を握りしめ、「よかった…」と呟いてハルタと笑いあう。


「よし、船に帰るぞー!」
「え、帰るんですか?でもマルコさんには…」
「マルコのことだ、ああ言ったら街を探すに決まってるだろー?」
「……その裏をついてハルタさんの部屋で作業するんですね!」
「そう言うことー!」
「でもご飯は?」
「しっかり蓄えてるぞー!」
「さすがハルタさんです!」


また名前を担いで、モビー・ディック号へと戻る。
船番をしている隊員達にバレないよう忍び込み、ハルタの部屋へと向かう。
ハルタの部屋は少々汚れているものの、エースやサッチほどではなかった。


「よし、頑張るぞ!」
「名前ー、ケガしねェようにな〜」
「ハルタさんも気をつけて下さいね」
「おーう!」


誰にもバレないように、準備を始めたお子様二人なのでした。

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