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のんびりポカポカ

ぽかぽかと気持ちのいい日差しと、時折吹く心地のいい風に、名前の首は船を漕いでいた。
背中を船に預け、だらしなく開いてしまう口。
今さっきまで読んでいた本は手から甲板に落ち、風によってページがパラパラとめくられる。


「風邪引くよい」
「ん〜…」


その横にいたマルコが、優しく頭を突きながら声をかけると、生返事をもらし、また船を漕ぐ。
いくつか船を漕いだあと、ガクンと首が垂れ、確実に寝てしまったのだと物語る。
パタンと自分も本を閉じ、「名前」と名前を呼んでも返事が返ってこない。

最近なんだかお疲れの様子の名前。
またエースやサッチに振り回されてるのかと思ったが、そうではないらしい。
じゃあ何で疲れているのか。何で寝不足なのか。
それを聞いても名前は「何でもないです」としか答えない。

静かに眠る名前を抱き上げ、部屋に連れて行こうとしたが、名前が自分に寄りかかってきた。
ピタリと動きが止まってしまい、どうしようかと悩むマルコ。
気候は温暖だし、風邪を引くことは多分ない。だからこのまま寝かせても大丈夫だと思うが、少し心配。
今日もマルコの過保護ぶりは絶好調で、数分間色々考えた。


「日差しが隠れたら帰るか」


まだお昼。夕方までに起きなかったら連れて行こう。
自分も船に背中を預け、腕に寄りかかる名前をジッと見つめる。

また少し身長が伸びた。前はもっと小さかった気がする。
顔も次第に大人っぽくなってきたし、髪の毛もさらに伸びた。
本人は邪魔がっていたが、女はやっぱり伸ばすべきだろ!とサッチに言われ、文句を言いながら素直に伸ばし続けている。


「あむ〜…」


何気なしに頬をつつくと、口をモゴモゴさせ、腕に擦り寄った。
だけどやっぱり子供さが残る。
そんな名前にマルコは笑い、自分もゆっくり目を閉じた。
腕を組み、足を伸ばしてリラックスできる体勢を取る。
寝るつもりはないが、名前がいるから動けない。本も既に読み終わっている。
目を閉じると自然と眠たくなるが、完全に寝落ちすることはなかった。


「……ん、…」


そんな動いたつもりはないが、名前は起きてしまった。
名前が起きたことには気がついたマルコだったが、重たい瞼が起きることを許してくれない。
まァまた寝るだろ。と特に気にしてないマルコ。
しかし名前は寝ぼけ眼でマルコをジーッと見つめていた。


「マルコさん?」


声をかけられ、「何だよい」と返事をしようとしたが、口も喋ることを許してくれなかった。


「寝てますか?寝て、ますよね…?」


名前の言葉を疑問に思いながら、意識を手放した瞬間、柔らかいものが頬に当たる。
ビクリと心臓は飛び跳ねたが、態度には出していない。
今、何された?


「寝てるよね?起きてないよね…」


そう言って名前はまたマルコの頬にキスをした。

最近ナースから教えてもらった「親愛の人へキス」を試してみた名前。
日頃からマルコに感謝してるし、親愛している。
だけどキスというスキンシップが恥ずかしい年頃の名前は、マルコが寝ている今にチャレンジ。
起きてないことを確認して、二回だけした。たった二回なのに凄く恥ずかしく、顔が若干赤く染まる。
そのせいですっかり目が覚めてしまったマルコ。だけど寝たふりを続ける。


「いつもありがとうございます」


ペコリと頭を下げ、満足気に笑ってまた居眠りをしようとした。
が、名前にある考えが浮かんで、またニンマリと笑顔を浮かべた。


「うんしょ…」


寝ているマルコをいいことに、マルコの足を少しだけ広げ、人一人座れるスペースを作る。
作ったそのスペースに名前が座り、組んでいたマルコの腕を解き、自分を抱きしめるように絡ませた。


「えへへ」


背中をマルコに預け、今度こそ満足気に笑う。
そしてそのまままた眠りについた。


「…ッ」


寝たふりのマルコは、この萌えをどうしたらいいのか解らず、ただ黙ってその思いを噛みしめていたのだった。





「サッチ、何だあれ」
「いい歳したおっさんが萌えというものを取得したらしい。どうしたらいいか解らずずっとあのまんまだ」
「気持ちわるっ!」
「どんだけ悶えてんだろうな…。ほんと気持ち悪いぜ…」

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あきゅろす。
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