突然ですが、名前が手のひらサイズになりました。 「いいか名前。小さくなっちまったんだから大人しくするんだぞ?」 「了解です、マルコさん!」 名前がマルコの手のひらサイズになってしまい、マルコは驚きながらもまずは注意を促した。 小さくなったことを楽しんでいる名前は笑顔で返事をし、大人しくマルコの手のひらに収まる。 「ともかくエースやサッチに見つからないようにしないとな…」 「え、何でですか?」 「遊ばれるに決まってる…」 きっとバカ兄二人のことだ。小さくなった名前に興奮し、そして遊ぶだろう。 小さくなったからいつもより繊細に扱わないといけないのに、彼はきっと雑に扱う。 想像しただけで身体が震える。 「じゃあどこにいればいいんですか?」 「…そうだな…」 「おーい、マルコー」 「あ、エースさんとサッチさんだ!」 「やべェ!隠れろ!」 「隠れるところなんてありませんよ?」 慌てるマルコとは対象に、名前は落ち着いた様子で首を傾げる。 どこにも隠れる場所などなく、とりあえず背中に隠した。何かを隠しているのがバレバレである。 エースは気づいていないが、サッチが目ざとくそれを見つけ、ニヤァ…と楽しそうに笑みを浮かべた。 「何だよマルコ。何隠してんだ?」 「何でもねェよい」 「え?飯か?」 「バカ野郎!あの焦り方はどうみてもエロ本だろうが!俺にも貸して下さい!」 「黙れよい!」 「あれ、名前だ」 「あ!」 「は?」 サッチとの会話に気を取られ、エースが後ろを覗く。 そこには小さくなった名前。 「お前…そう言う趣味があったのかよ…。エロ本のほうがなんぼかマシだろ…」 「ちげェよい!名前が小さくなっちまったんだ!」 「「小さくなった?」」 大声で否定して、すぐに後悔するマルコ。 二人は声を揃え、そして同じタイミングで目を見開いた。 見つかってしまってはもう遅い。 仕方ないと溜息をはいて、事情を説明すると二人は簡単にその不思議な出来事を受け入れた。 「ま、名前が小せェのは変わんねェしな!」 「酷いですエースさん!俺ちょっとは大きくなったんですよっ」 「今は小人サイズになってるがな」 「これは、その、……マルコさん、どうやったら元に戻れるんですかね?」 「そうだなァ…。とりあえずナースに相談するしかねェよな」 もしかしたら変なものを食べたのかもしれない。 そう思ってナースがいる部屋へ向かおうとしたが、その前に名前が「あ!」と大きな(とは言っても小人だから大きくない)声をあげた。 「どうした?」 「元に戻る前にやりたいことがあります!」 ニコニコとマルコを見上げ、そしてサッチに視線をうつす。 「サッチさん、ケーキ作って下さい!」 「ケーキ?」 「はい。ケーキにダイブして、お腹いっぱい食べてみたいです!」 幸せそうな顔をしてお願いをする名前に、サッチは笑いながらそれを承諾する。 隣にいたエースは「俺も!俺も!」と興奮気味に手をあげ、サッチとマルコは大きな子供に苦笑いを浮かべた。 ナースの部屋に向かう前に食堂へ向かい、サッチがケーキを作り始める。 その間小さい名前をつついて遊ぶエースに、マルコが本気で怒ったり。 テーブルの上で一人で遊びだす名前にマルコが勝手にハラハラしたり。 いつも以上に名前の世話に疲れたマルコだった。 「よっしゃ、できたぞ!」 「やったァ!凄い、おっきい!」 「どうせエースもいるんだし、ちょっと大きめに作ってやった。感謝しやがれ!」 「ありがとうございます、サッチさん!」 「ありがとな、サッチ!」 二段もある大きなケーキに興奮するお子様二人。 エースはフォークを握りしめ、名前はケーキにダイブする気満々。 だけどマナーを許さない厳しいマルコとサッチが、「先に言うことがあるだろい?」と声をかけると、二人は声を揃えて「頂きます!」と手を合わせた。 「やーっ!」 「うめェ!マジでうめェ!さすがサッチ!」 それと同時に名前は大きなケーキに飛び込み、エースは凄い勢いで反対側からケーキを食べていく。 「マルコも食うか?」 「いや、見てるだけで胸焼けしそうだよい。コーヒー頼む」 「はいはい」 バクバクと進んでいき、名前サイズの小さな穴がケーキに一つできあがる。 反対側のエースまではもう少しみたいで、エースが「まだかー?」と声をかけた。 どうやらケーキでトンネルを作っているみたいだった。 サッチに淹れてもらったコーヒーを飲みながら、「ガキだねェ」としみじみ思うマルコ。 「食べ物で遊ぶな」と珍しく真面目なサッチ。 「名前、お前俺の声聞こえてるか?」 「おいおい、大丈夫かい?」 「どうしたんだ?中で死んだか?」 サッチが冗談を言うと、ベシャ!とケーキが崩れ落ちた。 ケーキでトンネルは砂で作るより難しいみたいだ。 「名前ー!?」 「落ちつけマルコ。逆に危ねェから!」 ケーキに埋まった名前を助けようと、掘り出そうとするマルコをサッチが止める。 冷静さをなくした者に救助なんてできるわけがない。(たかがケーキ、されどケーキである) しかし突如崩れたケーキがモコモコと動き出す。 顔を見合わせる三人だが、誰も触っていない。 「名前!?」 「おーい、大丈夫か?」 「名前ッ、一人占めはずりィぞ!」 「エースはちょっと黙ってろ。マルコに怒られるぞ」 ケーキは次第に盛り上がり、そして何かが出てくる。 呆気に取られる三人。 ケーキの中から現れたのは、元の大きさに戻った名前だった。 髪や身体がケーキまみれで、名前本人も何が何だか解らない表情をしている。 「戻った…?」 「元に戻ったな…」 「名前、ケーキの上に座るんじゃねェ」 「だからエースは黙ってろって」 「よかった、死んだのかと思ったよい…!」 「ケーキに殺されたくはないです」 マルコの言葉に笑う名前。 「とりあえずテーブルの上から降りろ」とサッチに言われ、素直にテーブルの上から降りた名前は、ケーキまみれの自分の身体を舐める。 それを見たエースも楽しそうに名前の身体についたケーキや生クリームを指ですくい、舐める。 「いやー、いい体験しちゃいました」 「羨ましい…。お前なんで小さくなったんだよ。俺もなりてェ!」 「変なもの食べた覚えないんですけどね…」 「おい、ここついてるぞ」 「え?どこですか?」 「だからここだって。反対反対」 「取れました?」 「下手くそ」 そう言ってエースは名前の両肩に手を添え、ペロリと名前の頬についたクリームを舐める。 驚く名前と、満足そうな顔のエース。 その横にいたサッチは首を傾げ、ある言葉が浮かんだ。 「生クリームプレイ?」 その言葉にエースの行動を見て固まっていた(「あいつ何してんだアァン?」的な意味で)マルコは意識を取り戻し、サッチを殴る。 次にエースを一発殴って、名前を脇に抱えてお風呂へと向かって走り出す。 「ちゃんと洗うまで出てくんじゃねェよい!」 「わ、解りました…」 マルコの覇気に驚きながら、素直に返事をする名前。 このことがあってから、当分の間名前のおやつにケーキが出ることがなかったという。 「俺思うんだけど、マルコって俺よりエロくないか?ムッツリだ」 「サッチ、そう言うのはマルコのいないところで言ったほうがいいぞ?」 「え?」 「サッチ、お前はほんと学習しねェ奴だな…。元はと言えばテメェが変なこと言うからだい!」 「だってこの間見たエロ本であったからつい…」 「それ以上変なこと言うんじゃねェよい!」 「ギャアアアア!」 「……二人とも何してるんですか?」 「サッチの変わった性癖にマルコが怒ってんだよ」 「せいへき?」 「好きなタイプとかそんなん」 「へー…。あ、俺また生クリームプレイしたいです!」 「はァ!?おまっ、何言ってんの!?」 「そ、そうですよね…。そんな簡単に小さくなれませんよね…」 「………紛らわしい言い方すんな!」 「いたっ!」 [*前へ][次へ#] |