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もしも突然シリーズ5

突然ですが、名前が手のひらサイズになりました。





「いいか名前。小さくなっちまったんだから大人しくするんだぞ?」
「了解です、マルコさん!」


名前がマルコの手のひらサイズになってしまい、マルコは驚きながらもまずは注意を促した。
小さくなったことを楽しんでいる名前は笑顔で返事をし、大人しくマルコの手のひらに収まる。


「ともかくエースやサッチに見つからないようにしないとな…」
「え、何でですか?」
「遊ばれるに決まってる…」


きっとバカ兄二人のことだ。小さくなった名前に興奮し、そして遊ぶだろう。
小さくなったからいつもより繊細に扱わないといけないのに、彼はきっと雑に扱う。
想像しただけで身体が震える。


「じゃあどこにいればいいんですか?」
「…そうだな…」
「おーい、マルコー」
「あ、エースさんとサッチさんだ!」
「やべェ!隠れろ!」
「隠れるところなんてありませんよ?」


慌てるマルコとは対象に、名前は落ち着いた様子で首を傾げる。
どこにも隠れる場所などなく、とりあえず背中に隠した。何かを隠しているのがバレバレである。
エースは気づいていないが、サッチが目ざとくそれを見つけ、ニヤァ…と楽しそうに笑みを浮かべた。


「何だよマルコ。何隠してんだ?」
「何でもねェよい」
「え?飯か?」
「バカ野郎!あの焦り方はどうみてもエロ本だろうが!俺にも貸して下さい!」
「黙れよい!」
「あれ、名前だ」
「あ!」
「は?」


サッチとの会話に気を取られ、エースが後ろを覗く。
そこには小さくなった名前。


「お前…そう言う趣味があったのかよ…。エロ本のほうがなんぼかマシだろ…」
「ちげェよい!名前が小さくなっちまったんだ!」
「「小さくなった?」」


大声で否定して、すぐに後悔するマルコ。
二人は声を揃え、そして同じタイミングで目を見開いた。
見つかってしまってはもう遅い。
仕方ないと溜息をはいて、事情を説明すると二人は簡単にその不思議な出来事を受け入れた。


「ま、名前が小せェのは変わんねェしな!」
「酷いですエースさん!俺ちょっとは大きくなったんですよっ」
「今は小人サイズになってるがな」
「これは、その、……マルコさん、どうやったら元に戻れるんですかね?」
「そうだなァ…。とりあえずナースに相談するしかねェよな」


もしかしたら変なものを食べたのかもしれない。
そう思ってナースがいる部屋へ向かおうとしたが、その前に名前が「あ!」と大きな(とは言っても小人だから大きくない)声をあげた。


「どうした?」
「元に戻る前にやりたいことがあります!」


ニコニコとマルコを見上げ、そしてサッチに視線をうつす。


「サッチさん、ケーキ作って下さい!」
「ケーキ?」
「はい。ケーキにダイブして、お腹いっぱい食べてみたいです!」


幸せそうな顔をしてお願いをする名前に、サッチは笑いながらそれを承諾する。
隣にいたエースは「俺も!俺も!」と興奮気味に手をあげ、サッチとマルコは大きな子供に苦笑いを浮かべた。
ナースの部屋に向かう前に食堂へ向かい、サッチがケーキを作り始める。
その間小さい名前をつついて遊ぶエースに、マルコが本気で怒ったり。
テーブルの上で一人で遊びだす名前にマルコが勝手にハラハラしたり。
いつも以上に名前の世話に疲れたマルコだった。


「よっしゃ、できたぞ!」
「やったァ!凄い、おっきい!」
「どうせエースもいるんだし、ちょっと大きめに作ってやった。感謝しやがれ!」
「ありがとうございます、サッチさん!」
「ありがとな、サッチ!」


二段もある大きなケーキに興奮するお子様二人。
エースはフォークを握りしめ、名前はケーキにダイブする気満々。
だけどマナーを許さない厳しいマルコとサッチが、「先に言うことがあるだろい?」と声をかけると、二人は声を揃えて「頂きます!」と手を合わせた。


「やーっ!」
「うめェ!マジでうめェ!さすがサッチ!」


それと同時に名前は大きなケーキに飛び込み、エースは凄い勢いで反対側からケーキを食べていく。


「マルコも食うか?」
「いや、見てるだけで胸焼けしそうだよい。コーヒー頼む」
「はいはい」


バクバクと進んでいき、名前サイズの小さな穴がケーキに一つできあがる。
反対側のエースまではもう少しみたいで、エースが「まだかー?」と声をかけた。
どうやらケーキでトンネルを作っているみたいだった。
サッチに淹れてもらったコーヒーを飲みながら、「ガキだねェ」としみじみ思うマルコ。
「食べ物で遊ぶな」と珍しく真面目なサッチ。


「名前、お前俺の声聞こえてるか?」
「おいおい、大丈夫かい?」
「どうしたんだ?中で死んだか?」


サッチが冗談を言うと、ベシャ!とケーキが崩れ落ちた。
ケーキでトンネルは砂で作るより難しいみたいだ。


「名前ー!?」
「落ちつけマルコ。逆に危ねェから!」


ケーキに埋まった名前を助けようと、掘り出そうとするマルコをサッチが止める。
冷静さをなくした者に救助なんてできるわけがない。(たかがケーキ、されどケーキである)
しかし突如崩れたケーキがモコモコと動き出す。
顔を見合わせる三人だが、誰も触っていない。


「名前!?」
「おーい、大丈夫か?」
「名前ッ、一人占めはずりィぞ!」
「エースはちょっと黙ってろ。マルコに怒られるぞ」


ケーキは次第に盛り上がり、そして何かが出てくる。
呆気に取られる三人。
ケーキの中から現れたのは、元の大きさに戻った名前だった。
髪や身体がケーキまみれで、名前本人も何が何だか解らない表情をしている。


「戻った…?」
「元に戻ったな…」
「名前、ケーキの上に座るんじゃねェ」
「だからエースは黙ってろって」
「よかった、死んだのかと思ったよい…!」
「ケーキに殺されたくはないです」


マルコの言葉に笑う名前。
「とりあえずテーブルの上から降りろ」とサッチに言われ、素直にテーブルの上から降りた名前は、ケーキまみれの自分の身体を舐める。
それを見たエースも楽しそうに名前の身体についたケーキや生クリームを指ですくい、舐める。


「いやー、いい体験しちゃいました」
「羨ましい…。お前なんで小さくなったんだよ。俺もなりてェ!」
「変なもの食べた覚えないんですけどね…」
「おい、ここついてるぞ」
「え?どこですか?」
「だからここだって。反対反対」
「取れました?」
「下手くそ」


そう言ってエースは名前の両肩に手を添え、ペロリと名前の頬についたクリームを舐める。
驚く名前と、満足そうな顔のエース。
その横にいたサッチは首を傾げ、ある言葉が浮かんだ。


「生クリームプレイ?」


その言葉にエースの行動を見て固まっていた(「あいつ何してんだアァン?」的な意味で)マルコは意識を取り戻し、サッチを殴る。
次にエースを一発殴って、名前を脇に抱えてお風呂へと向かって走り出す。


「ちゃんと洗うまで出てくんじゃねェよい!」
「わ、解りました…」


マルコの覇気に驚きながら、素直に返事をする名前。
このことがあってから、当分の間名前のおやつにケーキが出ることがなかったという。


「俺思うんだけど、マルコって俺よりエロくないか?ムッツリだ」
「サッチ、そう言うのはマルコのいないところで言ったほうがいいぞ?」
「え?」
「サッチ、お前はほんと学習しねェ奴だな…。元はと言えばテメェが変なこと言うからだい!」
「だってこの間見たエロ本であったからつい…」
「それ以上変なこと言うんじゃねェよい!」
「ギャアアアア!」

「……二人とも何してるんですか?」
「サッチの変わった性癖にマルコが怒ってんだよ」
「せいへき?」
「好きなタイプとかそんなん」
「へー…。あ、俺また生クリームプレイしたいです!」
「はァ!?おまっ、何言ってんの!?」
「そ、そうですよね…。そんな簡単に小さくなれませんよね…」
「………紛らわしい言い方すんな!」
「いたっ!」


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