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腹の中組現パロ
悪魔の巣窟 1

「はい着いた!」
「…ここっテ」

すっかり上機嫌なエンヴィーにつれられ、俺達三人は中華街の入り口付近の裏通りにいた。賑わっている大通りから一本脇道に入っただけで、人の密度はぐんと減る。いかがわしい店なんかも連なっていて、まだ昼間だと言うのに客引きが騒がしい。多少慣れている俺はともかく、リンはとにかくエンヴィーの背を見失わないよう早足で足を運んでいるようだ。
ふいにエンヴィーが立ち止まり示したのは、地下に降りる階段。ビルとビルの間の路地から入るそこは更に暗い。薄暗い階段の先にはうっすらと『居酒屋DEVIL′S NEST』と殴り書きのような字で書かれた看板が一つ。とりあえずこれを見てわかるのは、此処が高校生がくるような場所ではないということだ。

「ほんとにここなノ?」
「うん」
「居酒屋じゃン」
「うん」

ぽかんとするリンをよそに、エンヴィーはたたっと軽快に階段を降りていく。渋々ながらついていくが、リンは目を丸くしたままだ。
遅れてリンもついてきたようだが、俺と彼は入り口扉の前で立ち止まっていた。扉に、『CLOSE』の札がかかっているのだ。隣にあるメニューやら店の紹介が描いてあるボードにも布が被せてある。
が、エンヴィーはそんなの気にしないとばかりに平気でドアノブに手をかけていた。

「えっちょっト!」
「いいからリンも来なよ」
「だって閉まってるシ…」
「平気」

エンヴィーはがちゃっとドアノブを回した。
鍵がかかっていなかったのか、拍子抜けするほどにあっさりと開いたドア。薄暗く、BGMに微かにジャズがかかる店内には、テーブルを囲むソファータイプの席がいくつかと、奥にカウンターも見える。居酒屋というよりは一見おしゃれなバーのようだ。きょろきょろとリンが辺りを見回している間に、エンヴィーは奥のカウンター席の方に駆けていっていた。
ふと三人の誰でもない声が聞こえた。見てみれば、カウンターの奥、厨房のようなところからでてきた人物がエンヴィーに話し掛けているのが見える。
ああ怒られル、と呟き頭をかきながらリンはそちらに駆け寄っていた。

「ねえ今アイツいないの?」
「グリードさんならさっきコンビニ行った」
「どこ?…どしたの、リン。すっごいアホ面」

携帯を取り出した所で、エンヴィーは口をぽかんと開け自分を見ているリンに気が付いたようだ。

「エ、いヤ、あノ、知り合いなノ?エドもなんか落ち着いてるシ」
「何回かつれてこられてんだ、慣れた」
「知り合いっつーか…だってここのオーナー」

そこでエンヴィーが次の言葉を紡ぐ前に、バンと勢い良く扉が開いた。全員の視線が集中する中、扉を開けた人物はカツンカツンと足音をたてながらこちらに足を踏み出す。

「おいてめえら扉開きっぱなしになって…ああ?エンヴィーまた来てたのかとっとと帰れ」
「やだよご飯食べに来たんだから」
「字読めねえのか?営業時間確認しに外いってこい、あ、戻ってくんなよ」

エンヴィーはぎゃあぎゃあと来訪者と罵り合いを始める。容赦ない暴言が飛び交う二人の間にわって入ったのはカウンター内の男性だ。確かドルチェットと言ったか。

「グリードさん!意外に早くきましたね」
「おう。おらドルチェット、ジャーキーやるよお前好きだったろ」

買ってきた袋をがさがさとあさりながら、何か話している二人。会話から外れたエンヴィーは放ったままだ。
そしてエンヴィーはぶすっとした顔でカウンターの中に入り勝手に瓶を取り出した。薄暗い照明がガラス瓶にあたりきらきらと光を放っていた。



【2011,12,8】
書き直し【2013,2,5】



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