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腹の中組現パロ
Sehr angenehm! 3

「…あ、ああ、ごほん。彼は来年度からうちに転入してくる…」

気を取り直して。とばかりにロイは咳払いをして、改めて真面目な顔を作った。
これだけ言って言葉の続きを促すように転入生に視線を送る。ロイの意図を汲み取ったらしく転入生は緩く頷いた。

「リン・ヤオだヨー。よろしク」

へらっとした軽い自己紹介。エドワードとエンヴィーはぽかんと口を開いた。
が、伸ばされているリンの手に気付いて、二人は顔を見合せその手を握った。

「エドワード・エルリックだ」
「エンヴィーだよ」
「エドワードに、エンヴィー…おっけーよろしク!」

ぶんぶんと手を振られる。
三人で顔を合わせた瞬間、エンヴィーは不思議な感覚に襲われた。いや、きっとリンを見たときから。というよりきっと、エドワードと、リンと、こうして自分が一緒に立ってから。懐かしいような切ないような、くすぐったい胸の奥が揺れる感覚。
エンヴィーだけではなかったようで、エドワードも他二人を凝視し、リンはずっとニコニコとしていたのを潜め目を細く開いている。
言葉では、うまく言えない。
でも、ぼんやりと感じた。きっと、出会うべくして僕らは出会った。何か大きな力に導かれて。
一瞬張り詰めた空気をぶち壊すように、再びリンの腹が鳴った。

「ってオイ!締まんねーやつだなー」
「だあってお腹空いたんだもン。エドなんか持ってないノ」
「ねえよ」
「あ、僕ねり梅持ってるよ」
「女子かお前は」
「…それお腹たまんなそウ」

ぎゃあぎゃあとじゃれあう三人。
すっかり驚いたのはロイの方だ。出会って1分と経たないというのに自分の存在を忘れる程に、彼らは三人の空気を作り出していた。長年つるんできたといわれてもきっと納得しただろう。
エドワードとエンヴィーはわりと日頃から仲がよかったが、リンという少年が加わり、足りなかったピースがはまったような気がした。この三人は、三人で、いるべきなのだ。
柄にもなくそんな詩人めいた事を思っていたロイは、遠くで聞こえた人の声に、ふっと意識を現実に戻した。

「打ち解けたとこすまん、要件をすまそう」
「あ、そうそうそれだよ何?何でわざわざ来年の転入生を先に紹介したの?…ってうわあばかリン!全部食べんなよ!」
「無理、足んなイ。ああああこの机サイズの肉まんが食べたイ!」
「最早肉まんじゃねえ。で、先生、何でなんだ?」

エドワードがいなければ延々とリンとエンヴィーのくだらない掛け合いが続いていただろう。こういうとき的確に中心で話を進められる力がエドワードにはある。
ロイは時間を確認するため壁の時計を見てから、口を開いた。

「ヤオは中国からこちらに来たばかりだ。まだ不慣れな部分もあるだろうし、家が近いエンヴィーに面倒見てもらおうと思ってな」
「近いの?家どこ」
「そこの中華街」
「あ、近い。僕それの先の商店街の方なんだよね」

中華街は、学校から歩いて5分のところにあった。よく帰りによっていく生徒がいたり、エンヴィーなんてそこを通って通学もできる。この学校の生徒にとってわりと身近な所だ。


【2011,11,14】

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あきゅろす。
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