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腹の中組現パロ
Sehr angenehm! 2

二三春休みの注意の話を続け、そして、ロイは教室中から視線を一身に受けている教卓上の書類に手を置いた。瞬間、教室はざわめきに満たされる。
そんな反応にロイはにやりと笑い、約束通りの言葉を告げようと口を開いた。

「では、これから成績表を配る!出席番号順に廊下に来るように」

ロイは山となった成績表を抱え、生徒達の(主に男子からの)ブーイングを背に受け颯爽と廊下に出ていった。







「うわっおチビさんオール5!?…じゃないね。美術3とか笑っていい?」
「うるせえ。お前のは!」
「ふっふーん驚くなよぉ?なんと!平均評定2ピッタ!留年は免れた!」
「まったく自慢できねえよなんで誇らしげなんだよ。つか1ついてる科目あんだから卒業できねーじゃん」
「そこはほら。金とコネで」
「最低だな!」







一喜一憂はあるものの。なんだかんだこれから春休みだ。生徒達は全体的に浮き足立っているようで。
ロイが最後の挨拶を告げるが早いが、教室からは蜘蛛の子を散らすように人が消えていった。
教室を出ようとしてエドワードは、中に一人残るエンヴィーに気付いた。エンヴィーは手持ちぶさた感を顕に教壇に腰掛け携帯をいじっている。

「帰んねーの?」
「増田が用があるから待ってろってさ」

増田というのは、担任の別名である。増田英雄29歳独身。主に男子が使う呼称だ。諸説あるが命名はエンヴィーだそうだ。
と、噂をすれば。開けっ放しのドアから増田…もとい、ロイが顔をのぞかせた。

「待たせたな…っと、まだいたのかエルリック」
「俺出てた方がいい?」
「いや、かまわん」
「で、用って何?昼ドラ見なきゃいけないからさっさと帰りたいんだけど」
「いけないのか、義務なのか」
「うちのおねーさまが内容速報メール送れってさ」

エンヴィーは口を尖らせエドワードはやはり的確にツッコみ。が、ロイはそれを華麗にスルーして自らが入ってきたドアの方に目を向けた。

「入りなさい」

ロイの声に合わせ二人の視線は同じ動き同じ速さでそちらに向いた。
カツカツと響く足音が、近づく。
節電だと、生徒の下校時刻が過ぎてすぐに廊下の電気は落とされていた。故に、暗い。
暗闇の中からようやくうっすらと見えたのはゆるめのスラックスから覗く真新しいスニーカー。まだわりと寒い3月だと言うのに、肘まで捲られた薄い緑のカラーシャツ。
そして。

「「…腹の音?」」

その人物のちゃんとした姿より先に、エドワード達が感じたのは、ぐううっと盛大に鳴り響いた、所謂、腹の虫の音だったのだ。
ロイでさえ、間の抜けた顔。エンヴィーなんて露骨にずるっとこける素振りをしてみせた。
ある意味一生忘れらない登場をかましてくれた彼は、そんな気の抜けた三人を見て、開口一番に言った。

「…腹減っタ」

再び、ずてっと体勢を崩す三人。
謎の男は、何食わぬ顔で空いていた席に腰掛けていた。


【2011,11,14】

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