[携帯モード] [URL送信]

腹の中組現パロ
Sehr angenehm! 1

毎日毎日いつも変わらない風景。ビルや雑多な店が立ち並ぶショッピングモールを我が物顔で歩く男子高校生が一人。黒い長い髪を背に流して、見慣れた風景に視線を泳がせることもなく一点を見て歩みを進めている。
手元で音楽プレーヤーをいじりながら身についた習慣に合わせ無意識に歩みを運んでいるのだ。彼はこの道を使ってもうすぐ1年になる。

「(うわ最低、iPod電源切れたし)」

ちっと舌打ちをして、乱暴に鞄に音楽プレーヤーを突っ込む。
普段は自分と同じ制服の学生で賑わう道だが、今はがらんとしている。
次いで取り出した携帯のディスプレイには、《AM11:30》の表示。もちろん大遅刻だ。
信号を待つ間、ふと視線を携帯から反らした。道路の向こうにはマンションのような建物と、申し訳程度にある僅かな校庭的なもの。それが彼の学び舎だった。





「おっさん今日も競馬チェック?」
「おっさん言うな用務員のヨキ様だ!…ったくさっさと一発当ててこんな仕事止めてやる…」
「うんいやどうでもいいんだけど。いれてくんない?」

やる気なさげな用務員は、新聞から目を離さないまま顎で中を差した。
もう終業式も終わり各クラスのホームルームの時間だろう。ざわざわと聞こえる人の声のわりには廊下に人の姿はなかった。
自分のクラスの前。中に人がいることを確認し一呼吸。
もちろん、ためらうことなく前の扉からクラスに足を踏み入れた。

「おはよー」
「やあぁっときやがったなエンヴィー!てんめえ終業式まで遅れるとかケンカうってんのか!」
「何おチビさん機嫌悪い?さては成績下がった?」

教室に入りそのまま目の前にいたエドワードの机に腰掛け、鞄を床に置く。彼の手元には年度末の学級誌だの来年度の予定だののプリントだけだ。
いつも通り赤いパーカースタイルなエドワードは、ふとエンヴィーの後ろに視線をずらした。
それにつられ、エンヴィーも口を閉じる。背後から、ごほんと咳払いが一つ。

「安心しろ。成績を配るのはこれからだ」

エンヴィーはうえっと舌を出した。
そこにいたのは、我らが担任、ロイ・マスタング。理科教師だからいつもは白衣なんだが今日は終業式のせいか見慣れないスーツ姿だ。なにが良いのか分からないが、よく言えば甘いマスク悪く言えば童顔な彼は、女子生徒に非常にモテる。
そう言えば今日は3月14日だったか。律儀にお返しをしていたせいかロイは若干疲れ気味だ。加えて、エンヴィーによってホームルームを中断させられ。
笑顔だが、明らかにチクチクしたオーラを出している。

「エンヴィー。盛大に遅刻してきたわけだが。何か私に言うことはないのかね」
「えっと…ほら、あれだ。電車が遅延して「黙れ徒歩通学」

ツッコミを飛ばすのはエドワードの大事な仕事である。

「わーかってるって冗談冗談。ちゃんとした理由があるんだって」
「いいから言ってみろ」
「DVDレンタル安くなってたから借りてきて呪怨とリング見てたら寝らんなくなった」
「…もう喋らなくていいぞエンヴィー」

やけにロイの声に感情がこもっているような。エンヴィーは乾いた笑みを浮かべ頬を伝う冷や汗を拭った。
いつものやりとりに、クラスメイトは皆すでに各自おしゃべりやら睡眠やら読書やらに興じている。(勉強している姿が見えないのはデフォルトだ)
エンヴィーがエドワードの後ろである自分の席につき、ロイが前に戻ったのを機にざわめきは徐々に小さくなっていった。



【2011,11,14】

[*前へ][次へ#]

2/6ページ

[戻る]


あきゅろす。
無料HPエムペ!