エピソード01《不吉なメール》 「…ナ…スナ…アスナ…起きて、アスナ…」 「起きてください、アスナさん…!」 微かな意識の中、近衛木乃香(出席番号13番)と桜咲刹那(出席番号15番)の声が聞こえてくる。 「う、うーん…」 神楽坂明日菜(出席番号8番)は二人の声に応えて目を覚ました。 「こ…ここは…?」 明日菜はそのまま起き上がってそして周りを見渡した。 一面、森、森、森…明日菜たち三人は広い森の中にポツンと立っていた。 外は微かに明るい…。 明日菜はいち早く、気を失ってから既に数時間経っていること、そして今自分がいるのは麻帆良学園ではないことを悟った。 そして疑問に満ちた声で呟いた。 「ここ…何処?」 その言葉にこのかは 「それがウチらにもようわからんよ… ただ、気が付いたらここにいて…」 と深刻そうな顔をして答えた。 「私も…探知など、やれることはやってみたのですが…ダメでした…」 その言葉に続くように刹那も言う。 明日菜はため息をつき、少し間を置いた。 「そっか…」 そしてちょっと残念そうな顔をして静かな声で言った。 冷たい風が木の葉や草花をゆする。 その音が余計不安を初めとする負の感情を増幅させた。 「…」 三人はお互いの顔を見向きもせず、ただ黙ってうつむいていた。 沈黙の中、冷たい風の音と草花の揺れる音だけが早朝の森に響く。 ブルル! ある物の振動と共に急に沈黙が破れた。 「え?」 三人は急なバイブル音と振動に驚いて何があったのかと一瞬、お互いの顔を見合わせた。 しかしすぐにそれが携帯のものだとわかると二人はすぐに携帯をポケットから取り出し、携帯を開いた。 明日菜も携帯を取り出し開こうとしたが、携帯を取り出した途端、明日菜の中にある疑問点が浮かび上がってきた。 ━あれ?私、携帯持ってきてたっけ…?━ そう思った瞬間、明日菜は一度携帯を開くのをためらった。 (…いや、気のせいよね) しかしその感情を自分の思い違いだと決め、感情を無理やり押さえつけ、首を横に振り急いで携帯を開いた。 すると、三人の携帯にも新着メールが一件入っていた。 メアドの欄は空欄…。 しかも驚いたことにタイトル欄が三人とも同じなのだ。 もちろん三人は驚いてお互いの顔を見合わせた。 そして覚悟を決めてメールを開くことにし、半ばドキドキしながらそのメールを開いた。 するとメールにはカタカナで不気味にこう書かれていた。 『シマノホクトウニアルハイキョニアツマレ』 「…!」 三人はメールを見た途端、何を感じたのか変な寒気を感じた。 「な、何なん?これ…」 変な寒気に不吉な何かを感じたのかこのかが目を見開いて顔の左右に汗をかきながら不安そうに言った。 「わかりませんが…何か…嫌な予感がします」 刹那が静かに口が開いた。 「私も…一体何なんだろう…」 ピリリッ! 「!」 また携帯がなった。 (……) 三人は強烈な不安を感じながらもおそるおそる携帯を開く。 そして開いた携帯の画面には…また新着メールが一件あった。 「今度は一体…何?」 三人はメールを開いた。 『ロクジニナルマエニハイキョニコイ』 そう書いてあった。 さらにメールをよく見てみるとその下に空白が続いていた。 (…?) 気になった三人はそのまま下キーを押してメールを進めた。 そして空白を進むこと一分…遂にメールの一番下に着いた。 「…何これ…冗談よね…?」 「せっちゃん…」 「………」 三人の目先には今までのと同じくカタカナで文字が書いてあった。しかし三人はそこに書いてあった言葉にぞっとした。 それは今までとは何か違う異色感が漂っていたからだ。 『ナオ、ロクジマデニマニアワナカッタモノハ、シヌ』 一番下には赤い文字でそう書かれていた。 この言葉が果たして冗談か…冗談じゃないか…。 全てが謎だった。 しかしそんなの主催者側以外誰も知らない。 知るハズがないのだ。 しかし一つだけわかることがある。 それは…必ずに何かあるということ。 三人は真剣な顔でその場にたたずんでいた。 そしてしばらく沈黙が続いた。 しかしやがて明日菜が真面目な表情でその沈黙を打ち破った。 「…どうする?」 その声は静かで、低く、言葉は重く、沈んでいた。 そのあまりの重りに二人は一瞬戸惑ったが、やがて小さく深呼吸をして落ち着くと、今度はこのかが口を開いた。 「どうするって言われてもな〜…せっちゃんはどう思う?」 「私は…本当は別にどちらでもいいのですが…しかし…」 そう言って刹那は口ごもった。 「せっちゃん…?どうかしたん…?」 刹那の暗い表情にこのかは心配そうに声を掛けた。 「え?あ…すみません…ちょっと変な感じがしたもので…」 「変な感じ?」 このかはその言葉に半ば唖然とし、半ば疑心を抱いて、首を傾げて聞いた。 「はい…何か…この命令に従わなければいけない…無視してはいけないような気がして… 無視したら…メールの内容通り、何か不吉なことが起こるんじゃないかと…」 この時、三人はお互いに「そんなことない、こんなのイタズラだ」と言いたかった。 でも言えなかった、言えないのだ。 全員、同じことを感じていたから…。 「…今何分?」 明日菜の言葉に対しこのかがとっさに携帯を開き、時間を確かめる。 「…5時40分…間に合うかな…?」 「えーと…今我々がいる場所は…」 そう呟きながら刹那はおもむろにポケットから島が描かれた地図を取り出し、現在地を確かめ始めた。 「どう?」 「はい、今、我々がいる地点は丘や海への距離、地形から考えて…ここですね」 そうして刹那は赤ペンを取り出して指差したところに印をつけた。 「あと20分…走れば間に合いそうね」 「はい…」 こうして三人は北東に位置する廃墟へと走り始めた。 これから一体何が起こるかわからずに…ただ、今は廃墟に向かうしか手段はなかった…。 【残り32人】 [*前へ][次へ#] |