小説4
1
共同シャワー室の個室で、蛇口を捻り疲れ切った身体全身にお湯を浴びていた。
サラサラとした銀髪がお湯に濡れて肌に張りつく。筋肉が付いた引き締まったなめらかな身体をお湯が幾つもの雫を作り流れていった。
ふうっと重く息をつく。
今日は…物凄く疲れた。
ナイフ戦のテストが終わり、汗でべたついた身体をお湯で流していくと少しづつ疲れが取れていく。すっかりリラックスしていたイザークだったが…
「イザーク、シャンプー貸して」
「!!??」
突然、ぬっと背後から現われた腕にぎょっとして、後ろを振り向く。
すると、そんな驚愕するイザークとは対照的に何食わぬ顔で後ろに立っていたのは、アスラン・ザラだった。
「なっ…」
「ちょうど切らしちゃってね…よかったら貸してくれないか?」
「…!!」
きっ、切らしただと!?ならわざわざ個室に入ってこなくとも、外から声を掛ければいいだろうが…!!
「出ていけっ…」
そう唸るも、アスランはごめんとも出ていく素振りも見せず…マジマジとイザークの身体を眺めている。
するとある一点で視線が止まり、含み笑いをしつつ口を開いた。
「…あれ?イザーク…ココ、ちょっと反応してるよ」
あいつが言っている事の意味が分かり、慌ててそこを隠そうとするが只でさえ狭いシャワー室の個室では逃げ場はない。あっという間にアスランの長い指に絡めとられ、急所を取られたせいか身動きが取れなくなってしまった。
…こっ、この状況は明らかにまずい!!
「はっ、離せ…!」
真っ白になっていた頭がなんとか回復し、必死に抵抗をするも弱々しく全く払い除けることは出来なかった。
「今日はナイフ戦のテストだったもんね。…みんなの前で俺に押し倒されて興奮した?」
ふふっと耳元で囁く声に、カッと顔が熱くなる。
そう一対一のテストをするナイフ戦では成績ごとに組み合わせが決まっていた。つまり、イザークの相手はアスランであり今日はテストである。
全力をかけて勝負をし、良いところまで行ったのだが、逆に一瞬の隙を付かれてしまい形勢が逆転し、アスランに馬乗りをされ激しく揉み合ったあげくやっと決着が付いたのだ。その際にどさくさ紛れにそこに膝を押しつけられ明らかに意図的に刺激を与えられたのだ。その時、にやりと不適に笑ったコイツの顔がしっかりと目に焼き付いている。
こんのっばかにしやがってーー!!
それでナイフ戦が終わり、アスランを締めあげてやろうと思ったが、それより自分の気を静めるのが先決だと慌てて此処に入ったのだ。
「俺は認めんからな!!あんな…」
「認めてないのは勝ち負けのこと?それとも自分が興奮してたってこと?」
「どっちも認めるかぁっ!!」
はぁはぁと怒鳴りすぎて呼吸が激しくなる。他の奴らには幸い気付かれていなかったみたいだが、あんなことを人前でされるなど人生最大の屈辱だった。
目の前のアスランをギリギリと睨み付けると、「そんなに睨むなよ」と返され誰が怒らせていると思ってるんだと更なる怒りが込み上げてくる。
「貴様、シャンプー貸すからさっさと出ていけ!!」
アスランにシャンプーを押しつけようとした。こいつが視界に入るだけでも、むかむかしてきやがる。
「…あぁ、でも」
視線をずらし、またもやイザークの下半身を見つめる。
「……?」
「これの処理……手伝おうか?」
言い終わった途端、持っていたシャンプーのボトルをアスラン目がけてぶん投げた。顔面を狙って投げられたそれはアスランに命中する。はずであったが……しかしサッと間合いを取ったアスランは余裕でそれをキャッチしてしまった。
「シャンプーありがとう、イザーク。もし手伝ってほしかったら遠慮なく言ってよ」
イザークに向けてにっこりと微笑むと向こうのシャワー室に消えていった。
くう…っ、あいつ、いつか殺してやる…っ!
わなわなと怒りで震え、そう誓ったのであった。
200805 END
【あとがき】
●なんだかんだで、アスランが悪戯して放置プレイ。イザークは、この後自分でこっそり処理しました。イザークってからかいがいあるよな…と事あるごとに構っていきますが、肝心なとこでお預けするアスランです。ひどい。
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