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窮鼠、猫にキス(ソカロ)

 追いつめられる。身も心も。とうに逃げられないこと、解っているくせに。とことんまで囲い込んで逃げ道を塞いで思い知らせなければ気が済まない性質らしい、この人は。

「どうした、逃げないのか。喚いて暴れたら、もしかしたら気が変わるかもしれないぜ」

 嘘ばっかり。抵抗を許すつもりも、私を逃がすつもりもないくせに。
 反駁できるのは心の中でだけ。否、意識の表層の、プライドだとか反抗心だとか呼ばれる部分が、今にも陥落しそうな状態でぎりぎり頑張っているだけだ。

「黙りを決め込まれるとつまらん。貴様は人形か、そうじゃないなら何か答えろ」

 仮面の下は、さぞやサディスティックに笑っているんだろう。その低い声が、私の中の被虐心を呼び覚ます。


「どうされたいのか言ってみろよ、フィーネ」


 そして私の理性は陥落する。
 許された自由の限りを尽くして貴方に近づき、その硬く冷たい仮面にキス。


「───…… 愛して。ソカロ」


 人でなしの罰当たりは満足そうな笑い声を立てた。










(貴方の咢門に進んで首を差し出す私は、愚かな愛の奴隷)


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