11桁の魔法(グラハム)
彼女が携帯電話を買った。
ちなみに彼女とは私の恋人という意味ではない。残念ながら。いずれはそうなる予定ではあるけれど。輝かしい未来に向けて、私は着々と準備を進めているのだ。
……さて、話を戻そうか。彼女ことフィーネは現代人らしからぬひどい機械オンチで、そんなところも非常に可愛らしいのだが、緊急時に連絡が取れないと困ると職場の上司に泣きつかれて仕方なく購入を決めたらしい。
私は可愛らしいピンクの携帯を難儀そうにいじっているフィーネに近づいて、貴重で重要な情報を入手すべく口を開いた。
「やぁ、フィーネ。使い方には慣れたかな」
「とりあえず、電話帳くらいは……」
「それは良かった。では練習がてら、私とアドレス交換をしないか?」
「あ、ううん。グラハムのは別にいらない」
何と。
予想外の一撃を食らって不覚にも私が硬直していると、小悪魔の角と尻尾が幻視できそうなフィーネは携帯を手遊びながらにっこりと微笑んだ。
「だって、暗記してるから」
前言撤回。
「やはり君は私の天使だ」
(その背中に白い羽根が見えるよ、ハニー)
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