籠の中の恋人(ホルマジオ)
この可愛い恋人を、
スタンド能力で小さくして、
鳥籠にでも押し込めて連れ歩きたい、なんて。
(……言ったら、引かれるんだろうなァ)
同じベッドの中、自分の腕枕で健やかに眠っているフィーネを見つめながら、ホルマジオはぼんやりとそんなことを考えていた。
ベッドサイドに置かれた時計は、4時を少し回っている。閉められたカーテンの向こうがうっすらと明るくなりはじめる時間。ホルマジオはそろそろこの居心地のよいベッドを抜け出さなければならない。
下らないことを考えてしまうのは、このまままた暫くフィーネと疎遠になってしまう可能性が高いからだろう、と自己分析してみる。
少しの時間でも会いたくて、こうしているのは自分が望んだことだが、なまじ触れ合ってしまうとやはり名残惜しくなる。しかしこの後に待つ任務に遅れる訳にはいかない。ホルマジオはそっとフィーネの頭の下から腕を抜こうとしたが、その瞬間、フィーネの瞼が開かれ鳶色の瞳があらわになった。
「……ホルマジオ?」
「悪い、起こしたか」
「ううん。知らない間に出て行かれるよりは、全然マシ」
ふぁ、と欠伸を漏らして、フィーネが身を起こす。シーツを手繰り寄せて一糸纏わぬ裸体を隠しながら、ベッドから出るホルマジオをぼんやりとした目で見上げた。
床に散らばった衣服を手早く身につけたホルマジオは、軽く腰を曲げてそんなフィーネのこめかみにキスをした。
「拗ねるなよ。……また今度な。愛してるぜ、フィーネ」
「愛してるわ、ホルマジオ」
頬にキスを返される。最後に唇を啄むような接吻をして、そっと離れた。と思うと、フィーネに袖を引かれる。
「何だ?」
「ん。……今ね、ホルマジオがお人形みたいに小さくなってね、瓶詰にして大事に飼ってあげる夢を見ていたの」
ホルマジオが驚き目を丸くするのを見て、フィーネは満足そうに笑った。
「悪くない夢だったわ」
「……そうかよ」
ホルマジオは苦笑いを浮かべ、ただそれだけ呟いた。
(しょうがねぇなぁ。似たようなこと考えてるんじゃねえか)
より一層、愛しくなる。
巡らせた妄想を実行しないように自制するのは一苦労だった。
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