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海馬君ラブ!
電撃のお菓子な契約 2



着いた先は海馬CP。城之内は行ったこともない社長室に通され、広々としたソファーに座らされた。
ここに来る途中まで城之内の両側はがっしりと黒ずくめの男に押さえられ、社長室に入った途端両腕を後ろ手に縛られた。
「…っざけんなよー!」
もちろん暴れても解ける様子はない。

前には緊張した顔のモクバと、がさごそと菓子を漁っている海馬の姿が。
「って食ってるし…」
海馬はうまい棒明太子味をたった二口で完食。その次のきなこ棒は五本一気食い。しかも口に入れてから五秒と経ってない。
間髪入れずに次の菓子が放り込まれていく。まさにブラックホール。


「じょ、城之内っ」
ついにモクバが沈黙を破った。
「き、今日見たことは忘れてっ」
「…ハァ?」
今日見たこととはもしかしなくても、目の前にいる海馬のことだろう。だが何故。
「兄サマが菓子大魔王なの知ってんのは、屋敷の中でも一握りなんだ。当然ライバル会社は知らない」
「コイツが菓子好きってのがそんなに知られちゃまずいことなのか?」
たかが菓子。別に事業に関わることじゃ無い気がするのだが。
そう思った城之内だったが、モクバはその言葉を予期していたかのように苦笑いした。
「だって…、城之内だって兄サマのこの食い気は異常だと思うだろ?」
チラリと横へ視線をずらしてみれば、あんなにあった一箱分が既に空だ。
「…ッ…嘘だろ…」
空になった段ボールはぺいと後ろへ捨てられ、磯野が代わりにまた沢山の菓子が入った段ボールを差し出した。
よく見ると全ての袋が五センチほど開けられてある。なんという気遣い…!

確かにここまで凄いとある意味ひく。
「こんだけ食べてるのがばれたら色々と面倒なんだぜぃ。海馬CPの社長は直に塩分過多で死ぬとか、そういう噂が流れてこの会社を乗っ取ろうとして来る奴もいるはずだし…」
実際に悪質な企業から嫌がらせされたこともあったんだぜぃと話すモクバの隣で兄サマまた一箱完食。

会社間での攻防というのがどんなものかは想像もつかないが、確かにこれは黙っておくに越したことはないのかもしれない。
「べ、別に黙っておくのはいいんだけどよ、ホントに海馬の体は大丈夫なのか?」
この食いっプリは既に成人病にかかっていてもおかしくない。海馬は太く短く生きそうだって思っていたが、これでは明日死んでも別に不思議はない。
「医者の話だと、血液検査も異常なし。至って健康なんだって。オレも不思議なんだぜぃ」
「つーことは何か、食った分ソッコー消費してるってことか?」
なんと恐ろしい燃費のよさ。いや悪いのか?
「あれだな、ぜってぇ彼女にはしたくないタイプだよな。デート代だけですっからかんになっちまう」
「兄サマは女じゃないぜぃ!」
「いや…、分かってるって。言葉のアヤだ、アヤ」


結局、モクバと誰にもこのことは口外しないという約束をした。
さすが副社長と言うべきか、この年にしては考えもつかないであろう「契約書」にまでサインさせられた。
「でもなぁ、城之内ってば口軽そうだぜぃ。大丈夫なのか?」
「なっ、オレだってなぁ、絶対に言っちゃダメなことといいことの区別ぐらい付くぜ!」
失礼なヤツだなーなんてこめかみをぐりぐりと電気ハンマーしてると、今まで菓子を食うのに忙しかったらしい海馬が口を開いた。
「心配するなモクバ。そいつは口外せん」
「「…え」」
海馬の思わぬ言葉にびっくりした二人はそのままの格好でフリーズ。
「ど、どうしたの兄サマ」
城之内と海馬は水と油。先ほど駄菓子屋で見た二人は多少仲よさげに見えた気がしなくもないが、それでも今までの経緯が経緯なだけに、兄の方からそんな言葉が出てくるとは思いもしなかったのだろう。それは城之内も同じだった。

二人から不思議そうな目を向けられ、海馬はゆっくりと視線を城之内に合わせると、城之内が驚くような言葉を発した。
「凡骨はオレが菓子好きなのを前から知っている」
………!
まさか、まさか。
「おま、どして…」
図星だった。
偶然だったとはいえ、城之内は海馬の菓子好きなことを知っている。そして、それは誰にも言わずに心のうちに秘めている。
「貴様、体育の授業の時にオレのケースを見ただろう。その中に菓子が入っているのも見ているはずだ」
「……!な、なななな!」
ばれている。あまりの驚きに言葉を発することが出来ない城之内をモクバが見上げた。
「ほ、ホントなの城之内ィ」
「貴様が菓子を見た後、遊戯たちに言った気配も無かった。貴様はオレを見て何か言いたそうに笑ってはいたがな」
「………」

「何故誰にも言わなかった」
貴様の性格上面白がっていただろう、と言われ城之内はバツが悪そうな顔をしてそっぽを向いた。
「…オレだってなぁ、まぁ、その…なんだ。何でもかんでもぺちゃくちゃ喋るようなヤローじゃねぇってことだよ!」
「答えになっとらん」
「答えじゃねぇかよ!」
鋭いツッコミをされ、ムキになる城之内。
でも実際、自分でも分からないのだ。今までの自分なら、あの時きっと嫌がらせのようにケースを開けたままにして海馬を笑いものにしていただろう。

…仲間意識、だろうか。自分も菓子が好きだから。

「と、とにかくそういうことだ!別にこれからも誰にも言わねぇよ!」
大声を張り上げることで、無理矢理自分を納得させる。
多分、菓子好きだからという理由だけではないことに、薄々気付いてはいたが、それは無視することにする。


「フン、まぁいいだろう。だが貴様に借りを作ったままにしておくのは気分が悪い。何が欲しい、言え」
「そ、そうだぜぃ!この機会に何か欲しいもの言えばいいぜぃ!」
確かに、契約というものは双方に利益があってこそ成り立つもの。
急に欲しいものは無いかと言われ、そういや炊飯器壊れかけなんだよなーとかエアコン欲しいなぁとか頭に浮かんだが、目の前にいる海馬の年齢を思い出して、口から出そうになった言葉を無理矢理飲み込んだ。
「っつーか、同い年のお前に物恵んでもらうほど落ちぶれちゃいねぇよ」
「今揺れただろう」
「うっせ!」
後ろ髪をぐいぐい引っ張られるがそれも無視!
だがそれでは今度は海馬が納得いかないらしい。
「貴様に借りを作ったままなど、オレが耐えれん!」
「お前に物強請るなんてぜってぇ嫌だ!」

両者、どちらも譲らず。

「あーー、じゃぁ考えとくわ。でも、高価なもん強請ったりはしねぇからな!」
出した答えはあくまで「保留」。
「フン、後で泣きを見ても知らんぞ」

やっとのことで解放された城之内は社長室を出る。
まったく、散々な一日だった。
「まだ聞きたいことがある」
エレベーターに乗ろうとした城之内を海馬が引きとめた。
扉の開くを押したまま海馬のほうを向き直る。
「あの後貴様は何が言いたかったのだ。今言え」
ああ、『貴様はオレを見て何か言いたそうに笑ってはいたがな』ってヤツか。
「たいしたことじゃねぇよ」
「言え」
エレベーターのボタンを離す。ゆっくりと扉が閉まり始めた。


「キノコの山よかたけのこの里の方がうまいぜ!」







■あれ、なんかシリーズ化しそうな?(笑)


おのれぇぇ!

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