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海馬君ラブ!
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「うひゃひゃひゃ!」
「ワハハハハー!」
 地べたに寝転がって…もといダウンした遊戯をみて二人は笑いさらに酒を煽る。つまみはとっくの昔に尽きており、だがしかし誰も頼むということはしなかった。そこまで頭が働いていないのだ。
 撃沈した遊戯は口から泡を吐いており虫の息。一瞬後に千年パズルがキィンと輝いたかと思うと地を這うような声が聞こえてきた。
「かーいーばー…」
「ムッ、復活したか」
 人格交代したもう一人の遊戯が海馬を睨みつけゆらりと立ち上がる。
「復活したか、じゃない。オレの相棒に何をするんだ!」
「ほざけ、何が貴様の遊戯だ。そもそも奴に押し付けたのは貴様だろう!」
 そうだそうだーと横で応援(?)する城之内が飲んでいるシャンパンは特注品。グラスに入れるなんてもう面倒くさいと思ったのか、ラッパ飲み。
「相棒の恨みはオレが晴らして見せるぜ!」
「よかろう、かかって来い!」

「「デュエル!!」」

 デュエリストたる者、いつ何時デュエルを申し込まれるか分からない。よって、皆カバンの中にマイデッキをいつも肌身離さず所有しているのだ。
 空気の通り道など無い部屋に風の嵐が巻き起こる!
「あ、オレもオレもー」
 ガサガサとカバンを漁って城之内もデッキスタンバイ!
 デュエルディスクは海馬が貸してくれた。互いにデッキをシャッフル!いざ、尋常に勝負!…といったところに、不敵な笑いが聞こえてくる。
「そうだ、どうせなら脱衣デュエルにしねぇ?」
「何ィ!凡骨にしてはいい案だな!」
 このまま普通に戦ってもいつもの光景があるだけ。…というか、今の状況で真面目にデュエルできるとは思えないが。
「へん、素っ裸にされても文句は言うなよ海馬ァ!」
「そのことばそっくりそのまま返してくれるわ凡骨ゥ!」
 二人とも、言うことはデカイが足元が既におぼつかない。傍にある何かに二人とも縋りたくてしょうがないのだが、それはしたらしたでプライドの問題と言うか何と言うか。
 普段の海馬なら脱衣デュエルなどと言うくだらん遊びに付き合っている暇は無いなどとのたまってこのばを切り抜けるだろうが、今は何度も言うが、酔っ払いなのだ。
 ゴゴゴゴ…と盛り上がりを見せる二人に、遊戯は待ったをかける。
「城之内くんそれはいただけないぜ!」
「なんだよーなにが不満なんだよ」
「海馬の肌を見せるなんてそんなもったいないことできるわけないだろう!?見るのはオレだけで十分だぜ!」
「き、ききき貴様ー!」
 遊戯の突然のカミングアウトに真っ赤になった海馬がカードを投げてくるがシュッと華麗に避けてしまう。
「何でー?」
 こくっと小首をかしげる城之内には意味が理解できていないらしい。それもそうだろう。遊戯が毎日海馬邸に通っていたのが海馬を手に入れるためだなんて、誰が想像しようというのか。
「それはだな城之内くん!」
「やめろ貴様ー!」
 海馬は足元にあったビンを掴み投げつける。それさえも華麗に避けられてしまう。

「とにかく!脱衣デュエルは無し!」
 そう言い張る遊戯に面白くない顔をしたのは城之内。せっかくいい案だったのになーなどと呟いている。
 だが遊戯とてここは譲れない。つい最近手に入れた大事な大事な恋人の肌をよそ様の前で曝け出させるなど言語道断…
「だってさー遊戯だって見たくね?海馬がマッパでデュエルディスクつけて泣きながらカードドローしてるとこ!」
「じょ、城之内くん…!」
「おのれおのれおのれぇ…なんて言いながら、でもマッパなんだぜ!すげー笑えねぇ?」
 純粋に城之内は楽しそうだと思っているのだが、どうやら遊戯は違う嬉しさらしい。普段とのギャップが凄すぎる妄想をしているのだろう、鼻血が。
どうやら遊戯の心…もとい下半身にはヒットしたようだ。
「す、素敵だぜ城之内くん!」
「だろー!?」
「き、貴様ァー!」

 結局脱衣デュエル続行。

「フン、持ち直したようだが遊戯、貴様がオレに勝てるとでも思っているのではあるまいな」
「未だに一度も勝ててないくせに」
「だ、黙れ!」
 デュエルディスクセット!最初の五枚をドロー!デュエル、開始!!
「オレの先攻、ドロー!……えっと……うへぇ、字が見えねぇ」
 城之内が飲んだ酒は合計で……とにかく凄い量。目に来てもおかしくない。しばし悩んだらしい城之内はこれだァ!なんて叫びながらカードを一枚リバースでセットする。
「ターンエンド!」
 高らかにエンド宣言をした瞬間遊戯がドロー!
「フン、凡骨はどこまで行っても凡骨か。貴様、モンスターが手元に無いと見える」
 城之内の場にはカードがリバースで一枚のみ。これでは身を守るものが無い。城之内は「あっ!」などと声を上げ、己のカードを目の前にまで近づけて内容をよく読んだ。
「わり、モンスターいたいた。たんまー。遊戯」
「タイムは認めん!己の失態は己で何とかするんだな!」
 城之内の異議は呆気なく却下され結局城之内の場を守るモンスターはいないまま。1ターン目は誰も攻撃が出来ないが、後手に回ってしまったのは事実。
 いつもの城之内ならば相当悔しがっただろうに、何度も何度も言うが、ココにいる皆は酔っ払い、だ。
「ま、しゃーねぇ!」
 そうケラケラ笑ってばかりの城之内はどうやら笑い上戸らしい。

「オレのターン!城之内くん、オレは酔っ払っていたってそんなミスはしないぜ!」
「ひでぇ」
 遊戯は高らかに宣言しながらクイーンズナイトを召喚。もちろん攻撃表示。さらに手元には聖なるバリアミラーフォースが。これをこの場にセットしておけば城之内くんがたとえモンスターを攻撃してきたとしてもその攻撃を跳ね返し、唯一のモンスターを破壊することが出来る。よし、完璧だ。
「オレはさらに聖なるバリアミラーフォースをセット!」
「うっひゃひゃ、遊戯ばらしてどうすんだよー」
「馬鹿だとは思っていたがそこまでとはなぁ、遊戯!」
 しまった、と思っても遅い。セットしてしまった物を取り消すことは出来ない。そのまま海馬のターンへ。
「オレのターン、ドロー!フッフッフ、愚民共、たとえ酔っていたとしても決闘者たるものそんな生半可な気持ちで世を渡っていけると思っているのか!オレは!ブルーアイズホワイトドラゴンを攻撃表示でしょうかーん!」
 高らかな笑いと共にぺシィ!とデュエルディスクにたたきつけられたカードは紛れも無くブルーアイズそのもの。だが、もちろんソリッドビジョン化はされるはずもない。
「な、何故だ!何故ブルーアイズが召喚されんのだ!」
 地団太を踏む海馬も、何度も何度も何度も言うが、酔っ払い、なのだ。
「ばっかじゃねぇの海馬ー!」
「ワンターン目からそんな高位モンスターを呼べるわけないだろ」
 二人に笑われ、海馬もハッと我に返る。わなわなと震えるところを見ると本気で間違えてたらしい。
「ええい五月蝿い黙れ!オレはブラッドヴォルスを攻撃表示で召喚!ターンエンドだ!」


おのれぇぇ!驀進!

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