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イライラ発生中




地下での特訓。
相手はあの雲雀。それも10年後Ver。

額に炎を宿して次から次へと飛んでくるトンファーをすんでのところでよけていく。
調子に乗っているわけじゃないけれど、だんだん攻撃のパターン、軌道が読めてきた。

と思った矢先、アゴ下から強烈な一発。

「…グァッ!」

歯を食いしばるのがあと少し遅れていたら、二度とご飯を美味しく食べれないところだった。雲雀と特訓をするという時点でわかってはいたが、やっぱり命がけ…!

「ちょっと、真面目にしてよね」
「…ッ、雲雀さん…!」

ほんの少しの考え事も命取り。
それはわかっているのだけれど、先ほどから綱吉には気にかかることがあった。

だんだん攻撃の強さが上がってる?

もちろん一発一発はとっても重いのだけれど、先ほどから段々強さを増している。
だけど、その威力の上がった攻撃からは、どことなく不機嫌さがにじみ出ているようで。殺気を伴う攻撃ほど、避けやすいものはない。
それを雲雀も分かっているだろうに、段々とそれは隠すことなく表立ってきた。

「あのっ、雲雀さん…」
「…うるさいよ」

ドゴォォォ!
思いっきり鳩尾に痛恨の一打が入り、綱吉は吹っ飛ばされ、額の炎が小さくなった。
ゲホゲホ…どころではない、グェッホグェッホとなりながら、10年前は恋人と呼べる関係であった雲雀を綱吉は見上げた。

「ひ、雲雀さん…何か怒ってませんか?」
「…何が?」
「いや、ッゲホ、あの、さっきから何かオレのこと怒ってるみたいだから、その」
「何言ってるのかわからないんだけど」

完全に炎が消え、グローブもただの手袋となってしまった綱吉を見て雲雀はムス、と眉をしかめた。

綱吉からしてみれば、この二人きりという状況は舞い上がりこそすれ怒りに直結するようなことは何一つない。
10年前の雲雀とは、これでも恋人…同士だったと思うのだが。
それにだ。
10年後の自分は不本意とはいえ、死んでしまっている。なのに10年前の少年の姿であるとはいえ、会えたというのにちっとも嬉しくないのだろうか。
この目の前にいる素晴らしい成長を遂げた雲雀からは、ほんの1mgのラブい雰囲気というものが見受けられない。…いや、も、もともと無かったか?

そういえば、自分は10年後も彼と付き合っている感覚でいたのだが、実際どうなのかは聞かずじまいだった。
まさか、まさか別れている、とか?
だから同じ空間にいるのが耐えがたくて機嫌が悪くなっていっているのだろうか。
だって、その証拠に、彼の機嫌が一段階悪くなるキーワードが、「雲雀さん」だ。

呼ばれるに堪えない、ということなんだろうか。

「っ、あの!雲雀さん!何か言いたいことがあるんなら、い、言ってください。この時代のオレが何をしたのかはわからないですけど、あの…!」

必死に雲雀に訴えかける。もし10年後の自分が何かをしでかして雲雀の機嫌を損ねたというのなら土下座でも何でもする。その後でイチャイチャさせてくれるのなら何発かは本気で殴ってもいい。…死なない程度ならば。
意を決して聞いた質問に、雲雀は何も答えなかったが、やがてボソッと口を開いた。

「…全部」
「…?」
「全部、気に入らない」

………………別れてしまっている、に、一千万点ーーーー!!!!!

うおおおおお、何した10年後のオレ!

頭をかきむしりながら声にならぬ悲鳴を上げている綱吉。パニックになった綱吉は自問自答を繰り返し、人の話が耳に入らないという癖を知っている雲雀は盛大にため息をひとつ、くるりと踵を返した。





「言ってやりゃぁいいじゃねぇか」

部屋を出て右に曲がったところでリボーンが雲雀にそう言う。
待っていたのだろうか、いつも通りの感情の読めない顔で「今のあのツナに何もかもを求めるのは間違ってんぞ」と告げてくる。
この男はどこまでわかっているのだろうか。自分が不機嫌な理由を。

おそらく、この赤ん坊は何もかも見通している。やはり、侮れない。
だが、ここでこの赤ん坊の言う通りにあの男にこの要望を口にするのは絶対に嫌。
リボーンの言葉にはあえて答えずに脇を通り、その場を後にする。

「僕はもう眠いから。じゃあね、赤ん坊」
「しょーがねぇな。お前もツナも」

眉を顰めて大空と雲のアジトの境目に立つ雲雀。その背中にリボーンは声をかけた。

「明日もツナの特訓よろしくな、恭弥」
「……………その名前で呼ばないでくれる」
「ケチケチしすぎだぞ、恭弥。現にディーノだって呼んでんじゃねぇか」

ギロリ、とリボーンを睨むその眼は、どこまでも冷たい。
だが、ふっと口の端を上げ、その場を後にする。

その瞬間

「…2度は言わない。その名で呼んでいいのは、綱吉だけ、だよ」

小さな声が、廊下に残った。




■雲雀さんはどうやら綱吉に甘えたかったらしいです(笑)
ほら、今のツナってばいっぱいいっぱいだから。
ビクビクされるんじゃなくて、綱吉の声で、恭弥呼びして欲しい雲雀さん、でした。




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