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寝言は寝て言ってよね



並盛高校。大なく小なく並がいい。
そんなふざけたようでいてそれでいて至上最高の幸せを書いたような校歌を掲げるこの高校には、影で動く組織があった。

「今度ヒバリの前で群れたら……殺すぞ」
「……は……ハ…イ…」

今しがた返事をしたのは、目の前で地べたを這う男共。
そして彼らに制裁を加えたのが、この風紀委員達であった。
地面を舐めている男達はギリギリで命を保っていられたようだ。しかし彼らは今この場にあの男がいないことがどれだけ運がよかったことかをその身に刻みつけていることだろう。

命があってよかった、と。

そんな噂を聞いたのが、つい先程。

「ひぃぃ!そんなに怖い人なの!ヒバリさんって!」
「お前なら一発で天国行きだな、ツナ」
「リボーン!シャレになんねぇこと言うな!」

確かにあのトンファーで殴られれば、一気に嫌なことを忘れられるだろう。
……って!それってヤバイし!

「っていうか、ヒバリさんって一体いくつなの…」
「知らねーぞ」
「いや待って、聞かないほうがいいような気がする…」
「聞いちゃいねぇーな」

多分自分の一個上か同い年だと思うけれど…。
でも、そんな若いのにあんなすごいなんて。
人の上に立つ資質というか、立って当然というか。……あ、群れるの嫌いだっけ。
ということは、やはり皆が彼を慕って彼の下につくのだろう。
なんかそれって……

「カッコいいな…」
「何か言ったか」
「いや、ヒバリさんってカッコイイなーって」

「…………」
「チャオッス。ヒバリ」
「やぁ、赤ん坊。こんなところで何をしているんだい」

いきなりリボーンが自分を通り越して後ろに話しかけたかと思うと、思いも寄らない声が耳の後ろから聞こえてきたことに、ツナはカチコチに固まってしまった。

……ちょ、ちょ…っ、えええええーーー!?

あまりの衝撃に後ろを振り向くことが出来ない。
一体いつからいたのだろうか。ついさっき?
だったら、今オレが言った言葉は、…ひょっとして聞かれてたりするのー!?

だらだらと汗が頬を伝い、体温が徐々に上がっていく。
は、恥かしい…!素だったからこそ、余計に恥かしい。

「ヒバリ、ツナがな…」
「リリリリリボーン!!!黙れよ!」
「キミこそ五月蝿いよ」

ビシッと一蹴され、アハ…ハ…と乾いた笑いをするツナをチラリと横目で見るヒバリはやはり怖い何かがある。
それにしてもここは1年の校舎。2年…か3年のヒバリさんがなぜこんなところに?

「え、えーっと、…ヒバリさんはどうしてこんなところに?」
「…委員会」

そっけなく発せられた言葉だが、顔を見てはいけない。きっとものすごいサディストな顔をしているだろうから…!
オレはまだ死にたくない…!!!

「あ、あの!さっきの言葉は別に何でもないですから…!」
「………?」

先程の「カッコイイ」発言に対して何でも無い、悪口を言っていたんじゃないと言うツナ。
だって、殺されたら堪らない。いや、褒めているのだから殺される謂れは無いのだろうけれど、ヒバリの前に立っているとそれだけでも悪いような気がしてくるのだから。

「…何言ってるの。訳がわからないよ」
「…へ?」

聞こえていなかったのだろうか。渋い顔をするヒバリに、ツナは心底ホッとした。

「じゃあね」
「あ、はい!」

思わず答えてしまったが、その挨拶がリボーンに対するものだったと知り、またもや赤面。うおおおお、恥かしい…!とか思っているうちに、ヒバリの姿は遠くなっていった。



「はぁ…。こ、殺されなくてよかった…」

ヒバリが去った後、腰が抜けそうになるのを震える膝で何とかもたせていたその同時刻。廊下の角を曲がったところで、しかめっ面をしているヒバリが居た。

「…………寝言は寝て言ってよね」

その顔が、不快でも無く、今まで見たことも無いような複雑な顔だったことを知るものは誰もいない。





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