冷えた足

 冬は毛布に包まるに限る。ソファを独占しながらうつらうつら思った。本当ならベッドでお布団にーといきたいとこだけど残念ながらそうはいかない。何故なら愛しの彼氏君が遊びに来てるから。今も相当アレだけど、気にしないで。
 ああ、なんかいい匂いがするなーと思ったら、ベール君が声をかけてきた。

「……ビラブド」
「んー?」
「ココア飲むが?」
「ん」
「ん、ほれ」
「ありがとー」

 マグカップを受け取るとちょっと目が覚めた気がする。深く甘い味と香りにうっとりした。

「おいしい。本当、ありがとうねベール君」
「……ん」

 ほう、と溜息を吐く。あっという間に空になったカップをテーブルに置いた。

「ぬぐくなっだ?」
「うん! でも足すっかり冷えちゃってて布に包まってても全然あったかくなんないの」
「……」

 ベール君はいきなり私の両脚を引っ張り出した。

「きゃっ!? ちょっとベール君!」

 毛布の外の、空気が肌寒い。膝を付いてソファの側に座ったベール君は靴下を脱がせてきゅうっと足を手で包み込む。あ、あったかい……。
 私の表情が緩んでいくのと反対にベール君の眉間はどんどん皺になっていった。

「冷やっけえ」
「うん」

 このときベール君の頭の中で一体どんな思考回路が形成されてたのか私には一生わからない。ベール君は何を思ったか、自分の頬に私の足を押し当てた。――さすがにこれはびっくりした。
 上げようと抗議の声は、ベール君の真剣に考え込む様子に自然と消えていった。

「ちんまいない」
「――そうだね」
「ぬぐい?」
「うん、あったかい」

 さてところで、脚を曲げて胸にくっつける姿勢ってのは筋トレでもよく紹介されてるようなもので、つまり腹筋に多大な負担を与えられてるんだけど。ちらり、ベール君を見る。心配そうに眉を寄せてる姿が格好いいから、もうしばらくこのまま好きにさせてあげよう。足もあったかいし。
 ベール君がそっと目を瞑る。こういう風に大事にされる度に、ああ、この人の恋人でよかったなって私は思うのだった。
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他のキャラがやるとただの変態。しかしスーさんがやると男前。ふしぎ!
2011/02/11

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