人間堕落兵器

 ベール君が融けてる。もとい、ベール君がおこたで恍惚としてうとうとしている。
 さすがは日本が誇る人間を堕落させる最終兵器だ。あ、メガネずれてる。

「ベール君ー? 風邪引いちゃうよー?」
「……ん゛んー……ん」

 ちょっと肩をゆすってみるとベール君は軽く唸り……もとい、呻き声をあげてまた目を閉じちゃった。
 見ているこっちが幸せになっちゃうぐらい微笑ましいけど、でもちょっと妬けちゃう。
 ベール君の恋人は私であって、おこたじゃないんだから。

「はい、失礼」
「ん……あ゛?」

 ベール君の肩を押して、おこたとベール君の間に強引に入り込む。
 ちょっと目が覚めたらしいベール君がめちゃくっちゃ凶悪な目付きだけど気にしない。元が強面のベール君は寝起きはいつでもそうだ。
 ストン、とお尻の下に固いベール君の太ももが当たる。まだキョトンとしてるベール君を振り向いてにっこり笑って宣言した。

「ベール君は、私の!」

 ベール君はちょっと面食らった様子だったけど、やがてぷすりと吹き出した。

「めんげぇない」

 ぎゅうっとベール君の太い腕がお腹に回る。ちゅうっとほっぺに吸い付かれた。

「めんげぇ」

 ベール君の関心を独り占めできたのに満足して前に向き直る。優しい唇は耳の後ろや首筋に触れていたけど、段々その頻度が落ちてくる。甘い、声がした。

「ビラブド」
「うん」

 ベール君の続く行動を期待する私は、ちょっと長い時間待たされた。

「……すー……」
「……うん?」

 後ろを向いて確認すると、ベール君は寝てた……。なにこれ、すごく空しい。目が覚めたら覚えてろ。たっぷり甘やかされてやるんだから!
 あー、でももう私も寝ちゃおうか。あったかいし。ベール君の腕の中、あんしん、する、し……

 夢うつつの中、どこかでぷすりぷすりとベール君が笑った気がした。

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寝てるの起こされた仕返しにちょっと寝た振りしてじらしてみた、そんなお茶目なスーさんでした。
2011/02/11

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