身体測定
むうぅ、と唸りながらビラブドは手元の紙を凝視した。
「172cm……65kgか……」
あむあむとおやつがわりのカントリーポテト(メイド・バイ・ビラブド)をフォークで口に入れながらギルベルトは呟いた。
「なんていうかフツーの数値だな。バランスいいじゃねぇか」
「いや、身長の伸びがもう殆ど止まってる。去年と比べたら5mmしか変わらんし……あー、くそ。夢の180cmが遠ざかるー!」
「遠ざかってないだろ、近づけなくなっただけで」
「……冷静なコメントありがとう」
がっくりと机の上にうなだれたビラブドの肩から首へと、やけに親しげに腕が回る。
「いやぁ俺は今のビラブドくんの体型が素晴らしいと思うけどね」
「……フランシス。あんまり急に抱きつかれるとその内うっかり投げ飛ばしても知らないからな……今は椅子に座ってるからいいとして」
華やかに香るトワレにビラブドは顔をしかめる。香水は苦手なのだ。
「背の高い女の子もとっても魅力的だけど、男としては自分の方が高くありたいからなぁ」
「5cmヒール履いたら余裕で追い越すけどな」
「……じゃあお兄さんは3cmの厚底履いちゃう」
「じゃあ俺は頑張って8cmヒール履いてやる」
フフフフフ、と表面上はにこやかに笑い合いながら実に不毛な掛け合いをする二人に、ギルベルトは静かに突っ込んだ。心なしか不機嫌だ。
「つーかビラブドはヒール履かないだろ」
「例え話だろ? デートとかの。
もし彼氏が出来たんならそういう時くらいは女の子らしい恰好してみようかとは思うしな」
ビラブドの答えにギルベルトは何故か余計にむっすりとポテトをぐしゃぐしゃにしだしたのだが、何故だか気付かないビラブドは小首を傾げた。反対に色々気付いてるフランシスはニヨニヨと笑った。(またそれが余計にギルベルトの神経に障る)
とりあえず自分の、女子にしてはたくましい、男子にすればちょっと柔らかい腕に触りながらビラブドは呟いた。
「出来れば脂肪分はこのまま、筋肉だけ4kgぐらい増やしたいな」
ビラブドはしなやかに鍛えられた筋肉と十分な脂ののった、均整のとれた体をしている。人種的なハンディはあるものの、きっとあと十年したらハリウッドのアクション系女優にも負けない立派な雌豹スタイルになれるに違いない。
フランシスは去年の夏に見たビラブドの水着姿を思い出しながらしみじみとした口調で呟いた。
「お兄さんはビラブドくん今のままでも十分だと思うけどなぁ」
やけに慣れた手付きでビラブドのほっそりした手を握り締めたフランシスに、ポテト食べ食べギロリ、と鋭い一瞥を食らわせつつギルベルトはビラブドに頷いた。
「わかるぜ。俺ももっと筋肉つけたいしな」
「ギルはもうちょい脂肪もつけていいと思う」
「お兄さんの体は文句のつけようもないけどね!」
「フランシスには確かに文句はないけど、もうちょい腹筋の割れ目がくっきり出た方が俺の好みかな。
あと、これ以上ベタベタ触るとそろそろ殴るからな」
ビラブドはやると言ったらやる人間だ。この一年嫌というほど体で思い知らさされたフランシスパッと手を離した。
「つれないなぁ……」
「問答無用でぶん殴っていいと思うぞビラブド。
あとこれマジでうまかった。今度また食べてやるから作ってくれ」
いつの間にやらすっかり空っぽになった弁当箱を受け取って、ビラブドは何気なく言った。言い切った。
「まぁ、理想のなりたい体型はやっぱりルートヴィヒみたいなガチムキなんだけどな!」
ぱっと男二人の頭にうっかり浮かんだのはビラブドの顔・オン・ザ・ムッキリムッキ。
「それは嫌だ!!!」
二人の大合唱が教室に響きわたるなか、キンコンカンコンと予鈴が鳴り出した。
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そんなビラブドくんでしたまる
2009/05/03
(2010/01/02モバイル公開)
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