王子様のときめき
「ヴェ! エリザさん危ない!!」
「え?」
よく知った相手の、滅多に出さない真剣な声につられてエリザベータが振り返ると、勢いよく回転するサッカーボールがすぐ側にまで迫っていた。
「――!!」
反射的に身を縮こまらせて衝撃に耐える。
刹那、バチン! と痛々しい音がしたが、一向に覚悟していた痛みは訪れない。
恐る恐る目を開けると、目の前に一人の少年――いや、少女が立っていた。
「君?」
「怪我は無い?」
「ええ、ありがとう」
例を言うエリザに、ビラブドはにっこりと微笑んだ。
「いいよ別に。エリザは女の子なんだから」
ピクリ、エリザベータの肩が動いた。
「……ビラブド君?」
「うん?」
「ダメじゃない! そんなの!!」
「え?」
突然叫んだエリザベータに、ビラブドは目を白黒させた。
エリザベータはそんなビラブドの様子など構いもせず彼女をぐいぐいと引っ張っていく。
「え、ちょっとエリザ?」
「保健室行くわよ! 怪我なんかしてたらただじゃ置かないから」
「いや、俺は別に大丈夫」
その言葉に、エリザベータは眉を吊り上げた。
「ビラブド君だって、女の子なんだから!」
「…………ありが、と」
翌日。
「エリザエリザ」
「あら、ビラブド君?」
ニコニコと笑いながらビラブドは背中に隠していたものをばっとエリザベータに突き出した。
それはトルコ桔梗やスイートピーなど、柔らかな色合いの花を束ねた可愛らしいブーケだった。
「わあ、綺麗ね」
「あげる」
「え?」
とろけるような笑顔で、ビラブドはエリザベータの手にブーケをそっと握らせた。
「エリザに似合うと思って、作ったやつだから」
「ビラブドちゃん男前やなぁ」
「……そうですね」
「ロドリーゴ、お前うかうかしてたら盗られるんちゃう?」
「…………」
その日はアントーニョの軽口に反応しなかったように見えたローデリヒが、翌日から負けじと彼も花攻勢に加わったり、何故かノリノリのフランシスまでエリザベータに薔薇を送るようになり、はたまた誰かにけしかけられたギルベルトが毎日毎日花を持ってきては結局渡せずじまいで肩を落としながら下校したりする様子が見られるようになるのだが、それはまた、別の話。
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これはなんと言う王子様振り。
ちなみにビラブド君は女の子扱いされると割とコロッと落ちます。
2008/11/01
(2010/01/02モバイル公開)
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