肉じゃがじゃが


「ビラブドのこの肉じゃがってマジうまいよな」

 むぐむぐとジャガイモをほおばりながらギルベルトは呟いた。れっきとしたドイツ人である彼もさすがにコレはグシャグシャにしない――初めて食べた時に潰してビラブドにこっぴどく怒られたのだ。

「ふふふふふ、当然だろう! その肉じゃがの味付けは俺が初めて肉じゃがを作った六歳の時から丸九年! 研究に研究を重ねて生み出した肉じゃが専用の煮汁だぞ。この原料や隠し味の黄金比は墓の下まで持ってってやるぜ!」
「え、何だよお前コレの作り方教えてくんねえのかよ」

 む、とギルベルトに不機嫌そうに眉を寄せられてビラブドはちょっと考え込んだ。自覚はないがビラブドはギルベルトに甘い。そもそも弁当を毎日作ってきてやってる時点で甘い。――その代わりビラブドの弁当の半分はギルベルト作。米はビラブドが二人分炊くが、おかずの分だけお互い作りっこだ。

「うーん……そうだな……そんなにこの肉じゃが気に入ったか?」
「おお! すっげえ美味いぜ」

 勢い込んで頷かれてビラブドは顔を綻ばせた。これだけ喜んでもらえれば作り手冥利に尽きる。前にアーサーに「俺が作ったほうが美味い」といわれた時には思わず椅子で殴りかかってしまったものだ。――いや、あれは相手がアーサーだったからであって、ロヴィーノやフランシスなら確かに物によっては負けてるし、アントーニョやローデリヒやそれこそギルベルトだって怒りはしなかったが……アーサーだし。理由は推して知るべし。

「よーし、じゃ、ギルが結婚する時にお前のお嫁さんに教えたげるよ。でもそれまでは秘密な? かわりに俺が幾らでも作ってやるから」
「マジでか、やったぜ!!」

 喜ぶギルベルトにも笑うビラブドにも深い意味などないのだが。

「そもそもよその女に毎回飯を作ってもらってウマイウマイ言った挙句にそいつから飯の作り方を習えって言われてまだそんな男の嫁になろうって女がいると思うか?」
「つーか、ビラブドちゃんが嫁になったら一番早いんちゃうん?」

 ――周りには勿論、勘繰られるのであった。

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仲良しこよしー。
学生ギルはそこまで料理上手でも特に下手でもないイメージ。
2008/10/30
(2010/01/02モバイル公開)

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あきゅろす。
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