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AST(00中編)
さくら
ヒラヒラ、ヒラリ
舞い落ちる薄ピンクの花びらをニールは見上げた。



「桜って言うんだよ」
そう言ってアレルヤはニールの髪の毛についた花びらを取ってあげた。


アレルヤの勤務先のレストランの裏庭には立派な桜の木がある。
今日は定休日ということで、オーナーが開放してくれたのだ。
正に頬を桜色に染めて、ぼーっと上を見ているニールの横でアレルヤはピクニックシートを敷いた。
そして、テキパキと昼ご飯の支度をする。

「ニール、お弁当食べようか」
「…………」
ニールは頷いてシートの上にちょこんと座った。
アレルヤは持ってきたお弁当を広げて照れた様に言う。
「僕が作ったんだ」
「……」
いつもより豪華なお弁当にニールは目を丸くした。
「えっと、ハレルヤみたいに美味しくないと思うけど」
アレルヤはニールが食べやすいように皿に少しずつ盛り付けた。
「はい」
ニールはふにゃりと笑うとタコさんウィンナーをパクリと食べる。
「美味しい?」
コクコク
「良い子だね、ニールは」
アレルヤはニールの頭を撫でて微笑むと、自分も桜を眺めながら食べ始めた。



***




それから、すぐのことだった。


「……地味な花見弁当」
「彩りないな」


アレルヤは苦笑いを浮かべてから溜息を吐いた。
どこで聞き付けたのかハレルヤとライルがやってきたのだ。
突然現われた二人に、ニールはびっくりする。
「……………」
二人はアレルヤのお弁当を摘みながら、色々と好き勝手に言った。
「花見弁当なんだから、もっと考えろよ」
「んー甘すぎないか?これ」
ニールはオロオロとアレルヤを見る。
「いちお、味見はしたんだけど」
アレルヤは気にすることもなく返事を返した。


「…………っ」


そのやり取りを見ていたニールの目から大粒の涙がボロリと零れた。
三人はギョッとする。
「うわっ、ニールっ?」
「…………っ!」
ポロポロと泣くニールをアレルヤが抱き上げてあやす。
「ど、どうしたの?」
「…………っ!」
ニールはぶんぶんと首を横に振る。
それを見てハレルヤが笑った。
「悪かった、ニール」
「泣くなよ」
ライルはニールの頭をポンポンと叩いて、アレルヤに言った。
「アレルヤがけなされて悲しくなったみたいだよ」
「え?」
「美味いってさ、アレルヤの弁当」
その言葉にアレルヤは胸が熱くなる。
「ニール………」
泣きながらしっかりと抱き着いているニールを、アレルヤは笑顔で抱き締めた。

「ほらよ」
「?」
「詫びだ」
ライルは持っていた紙袋をアレルヤに押し付ける。
アレルヤはニールを降ろすと、中を覗いた。


「………お団子?」


中には大小の団子が数個綺麗に並べて入っていた。
しかも小さいほうには可愛いクマの焼印が押してある。
それを見てニールの目がキラキラ輝いた。
「花見と言ったらこれだろ」
「有り難う」
「良く噛んで飲み込めよ、チビ」
コクコク、と頷いてから……ニールは恐る恐るハレルヤとライルの服を掴んだ。
「ん?」
「なんだよ?」
「……………」
ニールはライルを見て、モゴモゴと口を動かした。
ライルは苦笑する。
「ごめんなさい、だって」
「ばーか」
ハレルヤはグリグリとニールの頭を撫でた。


「じゃあな」
「え?帰るの?」
ハレルヤはニヤリと笑う。
「結構食えたぜ、お前の弁当」
「えっ!」
ヒラヒラ手を振って帰っていくハレルヤとライルに、アレルヤは感謝していた。
ハレルヤは嘘を言わない。
(少しだけ………近付けたのかな)
シェフとして活躍している弟に。




アレルヤはニールと並んでライルの団子を食べた。
「美味しいね」
コクコク
「桜、綺麗だね」
コクコクコクコク



「また、来年も来ようね」




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からかうのが大好きなハレライ(笑)



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