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AST(00中編)
ハンデ
例に漏れず、ハレルヤからもタッパーに煮込みハンバーグをたくさん貰ったので。


「今日の賄いはハンバーグです」


アレルヤは出来るだけ綺麗に盛り付けて、昼の賄いにニール作(ハンバーグの形成のみ)のそれを出した。
足元ではニールが頬を赤く染めてそわそわしている。
それが可愛くて、アレルヤは肝心なことを説明するのが少し遅れた。


「……………」


皆の視線がハンバーグに注がれる。
大小様々なハンバーグはどれも歪だ。
「アレルヤ」
「はい?」
ニコニコ微笑んでいるアレルヤに、店長もにっこりと微笑むと一言。


「クビ」


そう言って親指で首を切る動作をした。
「えええっ!?」
「こんなバラけた煮込みハンバーグ食えるかっ!」
その言葉にアレルヤは、はっと気付いて慌てて説明する。
「ち、違いますよ!これはニールが形を作ったんですっ!」
「はあっ?」
皆でニールを見ると、ニールは眉をへの字にして涙を浮かべていた。
「………っ」
それはまるで『美味しくない?食べてくれないの?』と訴えているようで。
アレルヤの足の間からチラチラとこちらの様子を見ているその愛らしい姿に、大人達は全員覚悟を決めた。


「う……っ」


皆で席に着き、目の前のボコボコのハンバーグを見つめる。
クッキーと違って、見た目がかなり厳しい。
「………ベースは?」
「ハレルヤです」
その答えに一同はほっとした。
それでも多少の不安は拭えない。
「美味しいよね」
アレルヤの言葉にニールはコクコクと頷いた。
それから恥ずかしそうにモジモジしているニールの熱い視線を感じながら、全員(アレルヤとグラハムを除く)恐る恐るハンバーグを口にした。


「お?」
「これは中々」


アレルヤは苦笑いして言った。
「ベースというか、形成以外は全てハレルヤなので」
「道理で」
「しかし、良く上手く丸めることが出来たなあ」
小さい手で一生懸命に作ったのだろう。
「美味しいよ、姫」
グラハムはちゃっかりとニールを膝に乗せて、食べさせてもらっている。


「ほら、ご褒美だ」


店長はニールの前にイチゴのアイスクリームを置いた。
今日はオフのアリーから『デザートに』と頼まれていたものだ。
「ハンバーグ、ご馳走さま」
さっきはアレルヤに散々言ってしまったが、ニールが作ったとなると話は別だ。
「美味かったぞ」
いいこいいこと頭を撫でると、嬉しそうにニールは笑った。




「で、足りないと思ってこっちは僕のです」


「どれ」
「…………」
店長とグラハムはアレルヤ作のハンバーグを食べて……眉をしかめた。


「…………ニールの勝ちだな」
「………やっぱり」


がっくりと肩を落とすアレルヤを、ニールはあわあわしながら頭を撫で撫でして慰めた。
それを見て皆微笑む。


(ハレルヤにはまだまだ追いつけないみたいだ)


困った顔をしているニールの頬を撫でながら、アレルヤは苦笑いした。








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ハンバーグ後日談★




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